4話
「あら? どちらさまかしら?」
「初めまして、旅の者です。あちらで畑仕事をしている麦わら帽子をかぶった男性からこちらのお手伝いをお願いされまして参りました」
「まぁ。どういうことかしら?」
いきなりこんなことを言われてもわかりませんよね。最初から説明すると、すぐに理解して受け入れてくれました。
「助かるわ。そういうことなら大歓迎よ!」
奥さまは微笑んで手を合わせてから、腰の後ろに隠れている幼女を前に出して、背負った子も一緒に紹介してくれます。
「私は小枝子と申します。長女の美夕と次女の朝花です」
聞き馴染みのない不思議なお名前ですね。これがワフー国の特色ならば、レッドの本名もこんな感じなのでしょう。きっと。
「家事で手が離せないけど目を離すのも怖くって……」
「不安になりますよね。わかります」
子どもはちょっと目を離すといつの間にかどこかへ行っていたりして、油断ならないものです。それが我が子ともなればなおさら。
男性からは雑用になると伺っていましたが、子守もその内に入りそうですね。
「早速で悪いのですが、この子たちの面倒をお願いできますか? 私はその間に家のことを済ませておきます」
「任せてください。こう見えても子どもは好きですので」
向こうがこちらを好いてくれるかは別問題として、わたしは子どもは普通に好きです。可愛い。
まだ赤子の次女を奥さまの背中からわたしの背中へ移し、様子を見ます。
「よかった、知らない人でも大丈夫そうですね」
不安そうにしていた奥さまでしたが、人慣れしているのか大人しくわたしの背中に体重を預けてくれました。これはもしかして、わたしは子どもに好かれやすいタイプなのかもしれません。グリーンという例もありますし。
それにしても赤子は軽いですね。ですが、この小さな体にわたしたちと同じように命が宿っているのだと思うと、感慨深いものがあります。
首だけで振り向いて赤子の表情を確認してみます。
「不思議そうな顔はしていますけど……安心しました。泣かれたりしなくて」
次にゆっくりと腰を落とし、長女と視線の高さを合わせます。くりくりとした大きな目がわたしのことをじっと見つめていました。
この瞳はわたしを見てなにを思っているのでしょう。
「こんにちは、初めまして。お姉ちゃんと一緒に遊びませんか?」
あ。奥さまの背後に隠れてしまいました。恥ずかしがり屋さんなのでしょうか。
ここは伝家の宝刀、子どもが好きそうなことで気を引く、を発動です。
「わんわん。わんちゃんです。どうです? 可愛いでしょう?」
指を絡めて犬の形を作ってみました。わたしの指は白くて細くて長くてきれいで完璧なので、それはそれは美しくて神々しい犬の誕生です。
そして長女はわたしの手を見て目を輝かせてくれました。
「……こう?」
「そうそう、そのまま、この指をこうです」
興味を持ってくれた長女はわたしの指をマネして見せてくれます。小さな指が作る犬は子犬のようでこれはこれで可愛らしいです。
「できた!」
「すごいです! 可愛く作れていますよ!」
これでこの子の心を開くことができそうです。
やっぱりわたしってば、子どもに好かれてしまうようですね。どや。