3話
「わたしにもなにか手伝わせてくださいませんか? お仕事を」
ご好意に甘えてばかりでは流石に天罰が下ってしまいます。わたしはそう提案しました。
しかし男性は両手を振ります。
「いえ、お客様ですからのんびりしていただければ」
「働かざる者食うべからずと言います。ぜひ」
「お、旅人さん難しい言葉知ってんねぇ! 長老の面倒でいつも忙しそうにしてっしぃ、手伝ってもらえよ!」
「そうそう! あたしらは見ての通り年寄りだからさ、自分の仕事で手一杯だし、お願いしちゃいなさいな」
おじさまとおばさまも充分若くて元気に見えますが、全盛期と比べれば体力などは劣っていると言いたいのでしょう。
「それはそうですけど……ではお願いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。任せてください」
男性は申し訳なさそうにしていましたが、最後は折れてわたしにお仕事を任せてくれました。
「それで、わたしはなにをすればよろしいですか?」
「家内の家事の手伝いをお願いできるでしょうか? 主に雑用になると思いますが」
「わかりました、掃除や洗濯なら任せてください。わたし結構きれい好きなんですよ? こう見えても」
「ええ、そうだろうと思いました」
わたしの全身真っ白コーデを見て男性は苦笑を浮かべながら言いました。やっぱりバレていましたか。どうやらわたしのきれい好きなところが全身からにじみ出てしまっていたようです。どや。
「では早速お手伝いに向かいたいと思います。奥さんはどちらに?」
「そこの川をもう少し下ったところにある一本杉の生えた家です。この時間なら家内は洗濯でもしているかと。案内できればよかったのですが、こちらの仕事がまだ途中でして、終わったらすぐに向かいます」
「わかりました、お気になさらず。ではまたあとで」
「それじゃあ俺らもそろそろ休憩は終わりにして、お仕事の続きといきますかぁ!」
おじさまおばさまと男性は元気に立ち上がり、肩をグルグルと回してほぐしながら畑仕事へと戻っていきました。
わたしも言われた通り川を下っていくと、聞いていた通りの大きな針葉樹が庭に植えられたお宅がありました。その隣で女性が洗濯物をせっせと干しています。
背中には赤子を背負い、戯れてくる幼女が腰回りにまとわり付いて困った表情を浮かべておりました。
「あれですね。二人もお子さんがいたのですか」
見るからに大変そうです。幼い子供が二人もいて面倒を見ながら、家事までこなしているのですから。
これは、早速わたしの出番ですね。
「こんにちは。わたしにお手伝いをさせてくださいませんか?」
わたしは笑顔で声をかけたのでした。