17話
お婆様がお亡くなりになってしまった途端、立て続けにおじさままで亡くなってしまいました。しかもこんなにも惨たらしい死にかたをしてしまうなんて。
発見した方にお話を伺ったところ、おじさまが水車小屋にいるのはなんらおかしなことではなく、いつものことだそうです。
なぜこのようなことに……。
真相が気になるところですが、悲しみに暮れている時間は残念ながらありません。悪魔とか言うはた迷惑な存在のせいで人間は誰かの死に対してゆっくりと悼むことができないのです。
「葬儀屋さんを急いで呼ばないと」
「けどこんな田舎まで来るのには時間がかかる。俺らでやったほうが──」
「それなんですが、わたしに任せてもらえませんか?」
そんなやりとりをする人々に対して、挙手をしながら提案します。
「旅人さんが? できるのかい?」
「できるもなにも、本職ですから。こう見えても」
どや。
「ホワイトとお呼びください。以後、お見知り置きを」
男性にしたように、自己紹介を軽くすると、驚いたような表情を浮かべながらも、どこか納得している風でもありました。
「ただもんじゃないとは思っていたけど、まさか葬儀屋さんだったとはなぁ。畑の親父は運が良かった、葬儀屋さんにしっかりと弔ってもらえるんだから」
この田舎村のように、近所に葬儀屋がない場合は感謝されますし、そのために旅をしているところもありますが、やはり複雑な気持ちではありました。
人の命が失われているところに遭遇しているわけですから。
「では、お婆様と一緒に弔いましょう。急ぎめに」
おじさまは頭部がないので魔人になるリスクは低いですが、お婆様はとても綺麗な状態です。早々に葬儀をあげるに越したことはありません。
「ここはしばらく立ち入り禁止とさせてください。それから葬儀をあげられそうな場所に心当たりはありませんか? わたしが火葬にて弔います」
そばにいた男性に伺ってみます。
「火葬してくれるのか、ありがたい。それなら下流のほうに手つかずの土地があったはずだ。そこならどうだい?」
「火が上がっても大丈夫な場所ならば問題ありません。大丈夫ですか?」
男性は頷きました。ならそこで決まりですね。
「ではわたしは一足先に向かって軽く準備をしてきます。できるだけすぐに葬儀をあげますので、関係者の方も準備のほうをよろしくお願いします」
わたしは言われた通り川を辿って下流にあるという土地へ向かいます。
「────っ」
その途中で、わたしの体は急に凍ったように動かなくなりました。
見てはいけないものが。
見えてはいけないものが。
視界に入ってきたからです。
心臓が一気に高鳴り、呼吸が早くなります。
見間違いであってくれと、そう願いながらゆっくりとソレを確認します。
川の滞留した部分に向けて、目を凝らしました。
「…………まさか、おばさま?」
おじさまとは別の第一村人であったおばさまの青白い水死体が、漂っていたのでした。




