精霊とぼく
何を伝えたいのか、わけがわからん、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが...。
どうぞ。
世には、超能力と精霊の力、自らの魂を駆使し、それぞれの目的のために闘う者たちがいた。
彼等は戦人と呼ばれた。
精霊の詩
short story
風が吹き、木々の葉は躍るように揺れていた。そこは、ぼくの新舞台へと続く道の景色。まだ未知に包まれた新舞台に、ぼくは心を躍らせる。まるで隣の木のように。
季節は春。今日は入学式。見知らぬ学校に行くことに、最初はおどおどしていたけれど、今は希望でいっぱいだ。一体どんな人たちに会えるんだろう?友達はたくさんできるかな?
「きっといいお友だちができるわ」
「うん」
お母さんの言葉に、ぼくはわくわくしながら答えた。
―――塞北学園中等部
ぼくはクラス表を見てBクラスだということを知り、Bクラスの席についていた。この学校、このクラス、この席で、新しい生活が始まるんだ…!ワクワク感が止まらない。
一度、ぼくはクラスを見渡してみた。うん、そんな悪そうなヤツはいなさそうだし、結構仲良くなれそうだ。
ガラガラッ
ドアが開いた。生徒は全員席についている。ということは先生だ!
「えー、私がこのクラスを担当することになった倉石だ。一年間よろしくな」
へえー、この人が先生か。なんかちょっと怖そうだな。
「早速だが出席を取るぞ。相葉」
「はーい」
「秋倉」
「あい」
「石谷」
「はい」
「宇川」
「うぃーす」
おぉ…、どんどんぼくに近づいてくるぞ。
「火神」
「…はい」
「神立」
ぼくだ!!
「はい!」
あ、しまった!つい大声で…。
「おぉ、元気がいいな。…須澤」
「はいー」
…よかったー。特にみんな、なんも思ってないみたいだ。
「…以上だ。この32人で、この一年間頑張っていこう。…この次だが、入学式があと20分ほどで始まる。10分前には廊下に出席番号順で並ぶこと。それまでは好きにやってていいぞ」
10分かー。誰か話せそうな人はいないかな。…あ、前の席の人、ひとりだ。
「ねえ、名前なんていうの」
ぼくは後ろから声を掛けてみた。でも返事はない。窓をずっと眺めている。
「ねえ!」
「んあっ?俺か?」
はあ…、やっと振り向いてくれた。
「うん、キミ」
「火神だよ、出席で呼ばれてたろ」
…ああ、確かに。呼ばれてたかも。っていうか呼ばれてないわけないよね。
「おまえは…、神立、だったか?」
「あ、うん。よく覚えてたね」
「ん、ああ、まあ、なんとなくな」
すごいなあ…、ぼく誰も覚えてないよ。
「小学校はどこ行ってたの?」
「照嶺小、この近く」
「あ!結構ぼくの家に近いね。ぼくこころ川小学校行ってたんだ」
「へぇ、そうなのか」
「うん」
…。話題が尽きた。どうしよう、この気まずい空気。なんか言わなくっちゃ。
「何か、話題ないかな」
「話題?そうだな…。…超能力って、信じるか?」
「超能力?スプーン曲げとか、テレパシーみたいなやつ?」
「ん、まあ、他にもいろいろ」
超能力かあ。火神くんはそういうのに興味があるのかな。うーん…。
「…信じない、かな」
「そうか、だよな」
「火神くんは信じてるの?」
「んんー、まぁ、な」
そっかー、なんかおもしろそう。
「どういうのがあるの?」
「そりゃあいろいろだけどな、例えば霊視とか、瞬移、伝心とかだな」
「フィール?」
「ん、ああ霊を見るってこと」
「へぇー」
霊を見ることも超能力なんだ。知らなかった。超能力も結構おもしろいかも。
「じゃあ、霊とかも信じるんだね」
「ん、ああ、まあな」
へー、火神くんはこういうオカルト系なのが好きなんだ。おもしろいな。
「あ、そうだ。下の名前はなんていうの?」
「ん、ああ、尋だ」
「尋くんか。僕は一太。よろしくね尋くん」
「ああ、よろしくな」
「おーい、廊下並べっつったろ。並べー」
先生がドアからひょっこりと顔を出して言った。
「行かなくちゃ。じゃあ、後でかな?あ、そうそう。今日一緒に帰らない?」
「あぁ、別にいいけど」
「わかった!じゃあ後でね!」
ぼくは尋くんにそう言うと教室を飛び出した。
…とは言ったものの、尋くんはぼくのすぐ前なんだよね。後でじゃないし…。ま、いっか。
この北塞学園には体育館が3つある。一番大きくて古い体育館は第一体育館。柔道場や更衣室などがある、一番小さな体育館は第二体育館。そして、第一よりは少し小さいけれど、第二よりはかなり大きい一番新しい体育館は第三者体育館。今、ぼくたちがいるのは第一体育館。もちろん入学式が行われているからだ。
「皆さんは、自立の道を歩み始めたのです。もしもその途中でわからないことがあったら、頼れる先輩たちに聞いてみてください。きっと力になってくれるはずです」
自立の道かー。そうだよなー、あと五年後には大学進路も考えなくちゃいけないんだもんな。そんなときだった。
「熱っ」
急に首筋のところらへんが、火傷をしたみたいに熱くなった。すぐにそこを触ってみる。特に何もない。ヒリヒリもしない。でも、ほんの一瞬だったけれど、確かに感じた。…なんだったんだ?
入学式までで変わったことといえば、これくらいだった。
「世の万物には魂が宿る。それは理であり、すべてだった」
「理って?」
「ん、あー、当たり前の理由みたいなもんだな」
ここは上山公園。今は午後一時。もちろん学校は結構前に終わった。家が近かったから、帰宅後もこうして遊んでるのだ。
「…」
「あれ、その続きは?」
「…忘れた。っていうか読んでない」
ああ、そういうことか。…まぁ、尋くんってこんな感じの人だ。
「おまえは、なんか話題ないのか?」
いきなり?
「ぼく?んー、そうだなぁ…。ヒーローものとかって、尋くん見る?」
「見ない」
即答…!
「御面ライターズとか知らない?」
「知らない」
なっ…。それじゃあ話題を続けるにも続けられないじゃないか。
「…」
「…」
どうしよう。ぼくの得意分野といったらヒーローものくらいしか…!
そのとき、光る何かが尋くんの背後にちらついた。
「…えっ?」
…何かが、浮いてる?赤く、光ってる…。
「…おぉぉっ!?」
ぼくは腰を抜かしてしまった。ぺたんと尻を地面につけてしまう。
「ん?どうした?」
「ひっ、ひっ、ヒトダマだぁぁーっ!!」
赤いヒトダマがっ!尋くんの後ろに!!
「どこにあるんだよそんなの」
尋くんは少し笑いながら辺りを見回す。
「後ろだよ!!うし、あれ?」
「牛?」
「いや、違うけど…」
…あれれ?何もない。確かに、確かにあったのに!!
「人違いなんじゃないかぁ?」
「どんな人と間違えるっていうんだぁッ!!」
「…い、いきなり強気になったな…」
なんだったんだあれは?ホタル?いや、絶対にヒトダマだ!
「霊とかそういうの信じてるんだったらヒトダマくらい信じてよ」
「いや、霊っていうのはフツーの人には見え…」
「…どうしたの?」
「…いや、ちょっとな」
どうしたんだ?尋くん。
「まぁ、とにかくフツーの人には…、フツーの人?」
「何自問自答してんの?」
「……。やっぱなんでもない。気にすんな」
…と言われると、逆に気になる…。
「あ、じゃあ霊が見える人はと」
「俺ちょっとトイレ行ってくる、ちょっと待ってろ」
尋くんはぼくの言葉を遮ると、急いでトイレに走っていった。
…怪しい。
トイレに行きたそうな様子は特になかったのにトイレに駆け込むなんて…。何かを隠してるに違いない!
…となれば、やっぱりスパイしかないでしょ!尋くんはぼくに隠れて何をしてるのか、確かめてやる!!
そぉーっと、そぉーっと。
「おい」
誰?今、ぼくは忙しいんだから。
「…おい」
もう!だから誰!!
「はい、なんで…えっ」
振り向こうとしたとき、ぼくは空を飛んでいた。いや、飛んではないな。浮いていた?いや、違う。何かに吹っ飛ばされた…、そう!何かにぶっ飛ばされたんだ!!…多分蹴られて。
「…ぶはぁっ!!」
地面に大激突!なになになに!?何が起こってんのさ!?
すぐに振り返ってみる。
…え?誰も、いない…。でもおかしい。確かに蹴っ飛ばされてぼくは宙を舞った。でも、誰もいない…?
「ん?」
何か、もやもやしたものが近づいてくる。なんだあれ?黒っぽくて、煙みたいだ。いや、煙じゃない。何か形作ってる。
…人?人の、形?もしかして…、ぼくあいつに蹴られたの!?ち、近づいてくるってことは、また蹴られるってこと!?
「ひ、ひゃあぁぁぁ〜っ!!」
ぼくは恐怖のあまり叫び声をあげる。まるでムンクの叫びだ。
「んな変な声出してんのはどこのどいつだ?」
…え?赤い、炎…?ま、まさか!ひ、ヒトダマが…、ぼくの目の前に!!
「んー、多分ベンチの前で倒れてる神立一太くんだな」
尋くん?今の声は尋くんだ。じゃあ前に言ったのは…?
「ひっ、ヒトダ」
「マじゃあないんだな、それが」
「尋くん!」
「よく見てみろよ」
「よく…?」
どう見ても炎にしか…。ん?炎だけど…、中に何かが、ある?
「えっ…!?」
炎の中に、人がいる!?
「見えたか?」
「うん、多分…」
「人、に見えたか?」
「うん…」
でもあんな小さな炎の中に人がいるなんて…。
「あれは人じゃあない」
「え?…あっ!!」
「そう、霊。それも自然の力、炎を宿した精霊。俺たちはそれを炎霊って呼んでる」
「炎霊…」
ホントに、霊っていたんだ…。
「それでもって、あいつの名前はフィレだ。フィレ!」
「おう!」
炎―――フィレは、ぼくの前から消えると、ぼくの隣にいた尋くんの横に現れた。
「じゃああの黒いもやもやしたのも…?」
「いや、あいつは精霊じゃない。あいつは悪霊に取り憑かれた人間、デーモンだ」
「デーモン…、鬼?」
「ん、まぁ、そう呼ばれてるだけだけどな。あいつらはフツーの人間には見えない。精霊も同じだ」
普通の人には見えない…。じゃあぼくは普通じゃないってこと!?
「ま、別に見えても悪いことはない。それよりか周りより得するんじゃないか?」
「あ、そんなこと言ってる場合じゃないや、尋くん…」
「ん?あ、まぁ、そうだな」
尋くんは右手を前に突き出すと、その甲に黒い文字のようなものが浮かび上がった。
「フィレ!」
「待ってましたっ!!」
「いくぞ、同化!!」
フィレは黒い模様の中に吸い込まれ、すると尋くんの手は赤々と燃えだした!
「え!?大丈夫なの!?」
「気にすんなって」
炎は手から肩、首の方へ上っていき、右頬を伝って額まで行くと跡形もなく消えた。炎が通った場所には炎のような赤い模様が刻まれている。
「これが同化ってやつだ」
「アブゾーブ…」
「ソウルウェポン!」
再び尋くんの右手が燃え、尋くんは燃えている右手を左の方へ差し出した。そして右へすばやくスライドする。その跡は炎の棒のようになった。
「すごい…」
たまたま話しかけた人が、尋くんが、こんなことをできる人だったなんて…。
これは、運命としか思えなかった。
尋くんは炎の棒の左端を掴む。すると炎は弾け飛び、炎を模した装飾品を先端につけた赤い剣になった。尋くんはそれをデーモンに向ける。そして言った。
「チェックメイト、だな」
尋くんはデーモンに向かって駆け出し、剣は炎に包まれる。
「ハァァァッ!!」
炎の刃はデーモンを斬り裂き、男に取り憑いていた悪霊は、男を離れて消滅した。
「これが、戦士の力ってやつだ」
尋くんは元の姿に戻ると、ぼくに笑いかける。ぼくも笑う。
これから、新しい日々が始まる。そんな不思議な予感がした1日でした。
The End
初めまして、ホタルです!!上の名前はソウキュウと読みます、というか読ませています...。まだまだ未熟者で、何を伝えたいのかさっぱりわからないでしょう...。この小説は、”運命”といったものを伝えようと思い、書きました。元々は細かい設定も作った長編を書くつもりだったのですが、僕は長編を書こうと思うと失敗するので、ここではあえて作った設定を無視して書きました!自分でも凄くうまくいった作品とは思っていないので特に宣伝するつもりはありませんが、何か御意見をいただけたら、とても嬉しいです!!