寛容的な時代
昨今では随分とLGBTに対する周囲の目も優しくなったと聞くが、まさか目の前にいる人がその類の人だったとは。これまで一度だって思い至ったことはなかった。
まあそんなことはともかくとして、正直驚きの告白だった。
まさか藤平さんの想い人が俺ではなくエミだったとは。
いや、それだとなんて俺が自惚れ屋みたいに聞こえるな。間違ってないか。間違ってないな。
一先ず俺が自惚れ屋であることはわかったが、それを答えとしてこの場はなんとか収めることは出来ないだろうか?
……。
「何見てるんですか」
無理かー。
藤平さんの涙交じりの鋭い視線を見て、俺はそれを察した。
「いや……まさかなあ。まさかまさかなあ」
「語彙力なくなってますよ」
「そうかなあ。そうかなあ……」
誰のせいやねん……。
一先ず、泣いたままの彼女を放っておくのは気が引けたのでハンカチを渡そうと近寄った。
「近寄らないでください! このスケコマシ!」
怒られた。何故。
「わからないんですか。愛しのエミ先輩を奪ったあなたは……あたしにとって恋敵なんです。そんな人に優しくされるだなんて耐えられない!」
「いやだったら、最初から俺を助けようなんてするなよ」
ぷんぷんと怒る藤平さんに呆れながら言った。そもそも藤平さん、この前まで俺と藤平さんの関係を修復するよう手をこまねていたんだぞ。何を今更言っているんだ。
「あれは……エミ先輩、辛そうな顔していたから。あんなエミ先輩、放っておけません」
それはなんというか、エミラブが激しすぎるな。
「じゃあ、俺をパセラに誘うとしたのは?」
「先輩を誘えば、エミ先輩も必然的に一緒に誘えると思ったんですよ」
「思ったんですか……」
思ってしまったのでは仕方ない。
……まあ今更だけど、確かにそうだなあ。
藤平さんにエミとのいざこざを告げたその日、生徒会室で頭を抱える俺を藤平さんはまるでゴミでも見つけたかのように冷たい瞳で覗いていた。あれが意味することは、つまりはそういうことだったのだろう。
それ以外にも、度々俺が彼女に相談を持ち掛けた際、やけに俺の不安解消を自分の手柄であるように協調してきたのは、俺に恩を与えることでエミとの交友を円滑に築いていくため。
そんなところだろうか?
「なんというか、まどろっこしいことするね、藤平さん」
「悪かったですね」
藤平さんの睨みに、俺は苦笑していた。




