3番目
綺麗なモノを壊したい。そう考えたのはいつからだろう。点滅する闇に呑まれながら考える。どこからか、私の声がした。
「昔からだ」
目を開けるとそこはさっきまで居た部屋のような場所だった。周りがぼんやりと光っている。
それより驚いたのは目の前に私そっくりの人が居たところだ。まるで鏡合わせのようなその人は邪悪な笑みを浮かべて私をみている。
「昔から?」
「ああ、俺が生まれたときにはもう小学校に通っていたがな」
目の前のその人は私と全く同じ声で話す。
「生まれた?」
私は首を傾げました。
「俺はお前の都合の悪いところを引き受けた人格だ。まぁ、お前が天使なら俺は悪魔だな」
今までの罪を思い出した。あれらの行動は私はやった覚えはない。じゃあ、この人が全部やったのか
「言っておくが、俺はお前でもある。お前らも望んだんだよ」
「私は違う」
反射的に首を横に振っていた。どうしても認められなかった。
「いいや、違わない。お前は俺に全てを押し付けた気でいるんだろうが、お前もあの壊れる瞬間は最高だっただろ?」
確かに最高だった。物は壊れる瞬間こそ美しく、その儚さを知ることが出来たのだとおもう。だってそうじゃないとおかしい。
ぐるぐると視界が回る。
「まあ、考えろ。思考は自由だからな」
再び意識が点滅する。再び目を開けた場所は屋上だった。
目の前には少女が手すりの向こうに居るという訳がわからない光景があった。
「えっ?」
これはどういうこと? 自殺するの?
私は少女に見覚えがあった。美しい涙を流したあの娘だ。どうして? そう疑問が湧く。それと同時に何かを期待している自分に気がついた。
「ごめんなさい」
考えに沈んでいた私は慌てて顔を上げた。目の前の少女と視線があった気がした。その瞬間に嫌な汗が背中を伝う。
私の後ろから歩いてくる足音が響いてくる。私は油の切れたブリキのおもちゃのように、後ろを振り向いた。
そこにはやっぱり自分がいた。歪んだ笑顔でまるで獲物を追い詰めたかのようにゆっくりと歩いてくる。少女の息を吸う鋭い音が響いた。
「なあ、泣いて?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。こないで」
少女は綺麗な顔をくちゃくちゃにして、あの綺麗な涙を流した。
どうしてこの少女は私に謝っているのだろう。何も悪いことはしていないはずだ。悪いとしたら私だろう。
「謝るなら、飛んで?」
「あっ」
少女は安心した顔で、後ろに足を踏み出した。そのまま少女の体は沈んでいく。まるでスローモーションをみているようだった。
「きれい……」
ぽつりと口からこぼれ落ちたそれはどす黒い色を纏ったコトバだった。認めよう。私もこれをみたかったのだ。




