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涙の理由。

作者: アスファルトさん

初めての作品ですね。男の場合でも処女作なんです?童貞なんです?どっちなんです?

 俺は1度恋をして裏切られた。裏切られたときのことは覚えていない。ショックのあまり相手の顔も名前も何もかも忘れてしまった。


 今日、転校生が来るらしい、友達とその人について話していると。


 先生が教室にやって来て、周りが静かになり席に戻っていく。彼女の顔を見た瞬間頭痛がする。


「入ってきなさい」


「失礼しまーす

えーと桜木 葉月といいます。

3年で来たので思いでとかあまりないけど1年間で作っていきたいと思いますのでよろしくお願いします」


 綺麗なサラサラとした黒髪、クリッとした大きく開いた目、プルッとして瑞々しい唇、化粧なんて知らない白い肌。なるほど、これが大和撫子か。


「どっか席空いてたよなー

佐々木の横が空いてるな、桜木、あそこに座れ」


「はい」


 うん、俺の横に来るわけないよね。そんなラブコメ起きるんなら1度だって裏切られるはずないもんね。俺窓側、桜木さん廊下側。...横どころか真反対だね。


 そのあとすぐに授業が始まり、休み時間になる、桜木さんは女子たちに囲まれ話しかけることなんてできないし、そんな勇気もない。


 その後も何もなくただただ時間が過ぎていき、下校時間になる。俺は部活なんてやってないからすぐに帰る準備をして教室を去る。俺の友達も部活があるから帰りは1人だ。


 あれは桜木さんかな?それと別のクラスのやつ。告白かな?


「桜木さん!僕と付き合ってください!」


「気持ちは嬉しいんだけどごめんね?私好きな人がいるから」


「そっか、ありがと、急に呼び出してごめんねじゃあまた明日」


 そうか、好きな人いるんだな。桜が風に散る。俺の1番好きで大嫌いな季節の花。綺麗な薄いピンクですぐに散る、人の心を表しているような...


─────────────


 桜木さんが転校してきて1週間が過ぎた。桜はほとんど地に落ち踏まれていく、桜木さんに告白する人はまだいるようでよく呼び出されている、そんなにモテるのなら女子に嫉妬されると思っていたのだが、彼女の性格なのか女子とも仲が良い、俺は友達と喋っているときもチラ見をしてしまう、そして友達がニヤついていじってくる。楽しいから良いんだが。


 しかし俺と彼女に何かあるはずもなく時が過ぎ桜の花が無くなり葉桜になる。何故か桜を見るたびに頭痛がするがすぐに痛みはなくなる。


 おかしな夢を見た、たしか俺を裏切った彼女はどこか遠くに引っ越したはずだ、そう母から聞いている、しかし彼女は俺の高校の制服を着て俺の目の前に立っている。顔の部分にノイズが走り会話をしているときも名前の部分にノイズが走る。


「ねぇ、

あの約束覚えてる?」


「あたりまえだろ?」


「そっか、待ってるからね?

私、ずっと、──くんが__」


 物凄い頭痛で目が覚める。覚めたところで頭痛は引いていく、あれはなんだったのだろう、母親に聞いてみたがわからない、放課後病院に行ってみよう。


 学校に行くと友達が話しかけてくる、するとまた頭痛がした、痛みがあまり引かなかったので、先生に言って早退させてもらった、親に連絡をしこのまま病院へ行く。


 中学の終わり頃、好きだった彼女に裏切られたあと、ご飯もろくに食べられず入院することになった。高校には入れたがランクダウンすることになったが、今の友達に会えたので良しとしよう。


 そのとき入院した病院に行く、頭痛がすると言い、最初に頭痛がした状況を教えると先生がどこかに連絡をすると今日は帰らされた。


 また変な夢を見た、いやこれは覚えている、俺が裏切られた場面だ、たしか彼女を誘って出掛けようとしたのだが用事があると断られた。1人なので歩いて本屋に向かうことにした。そして彼女が知らない男と親しげに話していて顔が近づいていった。そこで俺は倒れた。覚めると病院で寝ていた両親に事情を話した。何度か知らない人が部屋を間違えていた。彼女は1度もお見舞いには来てくれなかったが彼女がどんな人か、分からないだろう。そして退院の日、彼女が引っ越したと聞かされたが、彼女の顔も名前も何もかも、裏切られた日、起きてから倒れるまでの記憶しかなかった。


 悲しくはなかった、顔も名前も知らない親しかったという印象しかない彼女、裏切られたという想いのみが強く根付いている。彼女が目の前に来ても思い出すことはないのだろう。それほど俺は彼女を想っていたのだろう、しかしそれは一方通行だったようだ。


 この夢は俺の目線ではない?彼女の入っていた店員さんの目線かな?


「これ、──くん喜んでくれるかな

──はどう思う?」


 騒がしくなってきた、あれは俺か?そうかここで俺は倒れたのか。


 目が覚めてきた。最後の方彼女が慌ててたな。


 まだ目が覚めなかった、これは母目線か?どこだろう、病院なんだろうか、目の前には彼女とその両親、彼女と親しげに話していた彼がいる、内容がわからない。母は泣いているのか?頬になにかが伝ってきた。彼女がすごい勢いで泣いていた。わからない、どういうことなんだろう何故泣く?裏切ったんじゃないのか?まあ、何でも良いか、俺には関係のない話だ。母がすごく怒鳴っているようだ、父はここにはいない、俺の病室にでもいるのかな?と、ここで目が覚めるのか...『ごめんね...──くん...』


 最後だけ聞き取れた、彼女の掠れた声、しかしなにも感じない確かにあの後から感情の起伏が少なくなったとは思うが、何も感じないなんてことはなかった、楽しければ笑い悔しければ顔を顰め、悲しかったら泣いた。しかし、彼女のことは何も感じない彼女を思い浮かべても感情が無くなったように何も感じなかった。


 目を開けると窓から光が漏れ朝になっていたようだ、昼から寝たはずなのだが、ふと枕に目をやると染みが出来ていた。なんだろうと思いつつ顔を洗いに行くと涙の後がついていた。何故だろう、彼女のことを考えても何も感じない、感じない筈なのに涙が流れていた拭いても拭いても止まらない、わからない。彼女に裏切られたが悲しくなかった、彼女の横にいた彼を考えても嫉妬なんてせず、彼については彼女を幸せにして欲しいと思う。そう、幸せにして欲しいと思ったのだ。何故彼女のことを考えても涙が出るだけで何も感じない何も思わない、また会いたいとすら思わないなのに何故涙が止まらないのだろう。


 そこで母に声をかけられた、母に事情を話す。彼女を覚えていないことは母も知っている、なので話す。夢の話、何も感じないということ、何も思わないということ、会いたいとすら願わないこと、彼女のことを考えても何も思わない感じない、それでも涙が出てくることをすべて話す。...しばらくは、母も泣いていた。


 しばらく経って学校に向かう、母から連絡してくれているらしいから少しゆっくり行く、高校に着くと桜の木の下で桜木さんが立っていた。今は授業中じゃなかったか?まあいいか。誰か待っているのだろう、無視して行こうとする...が呼び止められた。


「放課後

またここに来て欲しいの」


 と言い残して走り去っていった。教室に行くか。友達に心配されてしまったがそれ以外は何でもないような日々を過ごす。


 そして放課後、教室に誰も居なくなってから呼ばれた場所に行くと桜木さんが立っていた。なんの用事だろうかと思っていると彼女が口を開く。


「私の事覚えてる?」


「え?

いやないよ残念だけど見覚えがないかな」


「そっか

変なこと聞いちゃってごめんね」


「いや

大丈夫、じゃあね桜木さん」


 俺はそう言うと校門に向かって歩き出す、『桜木さん…かぁ…』と泣いていくような悲しい乾いた声が聞こえてきた。何故だろう彼女のことを考えると..."何も感じなかった"。


 あのあとは特に何もなく夜が明けた。教室に入るとざわついていた教室が静かになり、みんなが俺の方を向いてくるどうしたのか友達に聞くと昨日の放課後に桜木さんが泣いているところと俺が去っている姿を見て、俺が桜木さんをフったのでは?と思われたらしいが質問されただけだしわからないのだが?と言うと信じてくれたらしい。


 そのあとは何事もなく放課後になり帰った。


────────────


 季節が変わり暑くなってきたあの後からは特に何もなく、ただ普通の日常があった。あの後から彼女の方から何度か話しかけられたけどやっぱり今年の春に初めて会ったから覚えがない、そしてやはり何も感じなかった。


 夢は見ていない、しばらくは頭痛がしてたけど今はそんなに気にならないし痛くなってもすぐに痛みは引いていく。


 夏になったからと言って何かが変わるわけでもなく体育祭も普通に終わった。結局負けて悔しかったがそれ以上に楽しかった最後の年だということで友達も一緒に勝ちに行かずに楽しんだ。


 そろそろ夏休みだが勉強ができない訳じゃないので課題なども苦ではない、ただ1日じゅう家にいるのでバイトにでも行ってみようと思って友達の親がやっている喫茶店で夏休み中だけ働かせてもらった。友達も一緒にいるのでお客さんがいないときや暇なときは喋っていた。ただけっこう人気があったのでそれなりに忙しかったがそれでも楽しかった。バイトがない場合は友達と遊びに行ったり家で本を読んでいたりなどしていて夏休みが終わった。


 何度か桜木さんがお店に来たが彼女と一緒に来ていた友達と話していたので普通に接客をした。


 夏休み明けのテストも終わり少し肌寒くなってきた頃、また頭痛が激しくなった。原因はわからない寒さが原因か?等とも考えたが夏にも頭痛はあったのだしそれは否定された。考えてもわからないし病院に行く程でもないので放っておいた。


 夢を見た。俺が彼女に告白をしていた。が、俺の目線ではない。上から眺めているような目線だ。OKをもらって彼女に抱きついた、そんなに嬉しかったのか?昔の俺は感情の起伏が激しいやんちゃ坊主だった、そんな俺がこんなに感情の起伏が少なくなるのだからそこまでショックだったのだろうか。


 目が覚める、やっぱり俺と彼女の夢を見ると俺は泣いてしまうようだ。涙の後が酷いので顔を洗いに行って学校に行く準備をする。


 学校も普通に終わり帰る。帰る支度をしていると桜木さんに紙を渡され、


「家についてから読んで」


 などと言われたので言われた通りに家で紙を開くとメールアドレスらしきものと、


『私のメールアドレスだから登録して、話したいことがあるの』


 と、書かれていたので書かれているメールアドレスを登録して自己紹介を送る、しばらく経って返信が来た。


『桜木葉月です

いきなりごめんね電話番号が書いてあるから電話してきてくれる?』


 と、書いていたなんだか怖い、でも掛ける。何コールかすると桜木さんが出た。


「もしもし櫛田です」


『もしもし櫛田君?

桜木です、いきなりごめんね

時間大丈夫?』


「大丈夫ですよ」


『えっと、

日曜日さ暇?』


「え?まあ暇ですね」


『そっかよかった

その日にさ一緒に出掛けない?』


「どうしてです?」


『電話じゃなくて、

面と向かって話したいからかな』


「分かりました」


『時間と場所は追って連絡するね』


「分かりましたお休みです」


『うん、

お休み…きーくん』


 最後の方に聞こえた『きーくん』という呼び方、誰に呼ばれてた呼び名だったのか思い出せない。しかし出掛けるとは?あと、大事な話とは?考えても仕方ないしいいか。


 あの日の後からは変な夢を見ることも激しい頭痛も無くなった頭痛はするけど気にならないくらいですぐに良くなる。そして変わらない日常を過ごす。


 日曜日になって指定された場所に向かう。桜木さんはすでについていた。


「すいません

待ちました?」


「ううん

大丈夫だよ来たばっかだから

それよりもちょっと移動しよっか」


 桜木さんの後をついて行ってしばらく夏休みにバイトをしていた喫茶店に着いた。


「ここ入ろっか」


「はい」


 確かにここは静かだし良いところだけど俺の友達いるんじゃない?と思っていたが、彼は今日部活だったことを思い出した。席についてコーヒーを頼んで運ばれてきて、店員さんが下がったところで桜木さんが話しかけてきた。


「櫛田君は優しいね」


「そうですか?」


「じゃなきゃ

行きなり呼び出されても普通、来ないよ」


「まあ大事な話があるって言っていたので」


「そっか、

大事な話ってのはね」


 そう言って話し始めた。昔好きだった人がいた、そしてその人に告白されて付き合うことになった、しかしその人の誕生日前にプレゼントを渡そうと思って兄と一緒に買い物に出掛けた、その場面をその人が目にしていた、その人は道の真ん中で倒れて救急車に運ばれていった、今でもその人の事を想っていると。泣きながら俺に話してきた、俺のような体験をした人がいるんだなと思った。そして最後に掠れた声で、


「私は貴方が好きです」


 そこまで聞いて俺は意識を失った。


────────────


 いわゆる幼馴染というやつで私は昔から彼の事が好きだった。勉強は苦手だったけど彼と一緒の学校に行きたかったので必死に勉強した。彼はやんちゃだったけど頭が良かったから頑張って追い付こうと思った。


 中学二年生になり受験勉強もしないといけなかったので頑張ろうと思ったら彼から告白されちゃった。彼は勉強はしっかりしないと私に置いていかれると思って頑張ったんだとそう言われたときは嬉しかった。


 三年生になって受験勉強が本格的になってきたので少し息抜き程度に彼の誕生日の祝いも兼ねて休みをとろうとしてプレゼントを買いに行こうと思って兄に一緒に来てくれないか頼んだ。兄は忙しいので前もって言っておかないとダメだから1週間くらい前に頼んだ。


 プレゼントを買いに行く日の朝に彼から電話が掛かってきて一緒に出掛けないかと言われて行こうと思ったが忙しい兄に頼んでいるのにドタキャンするのはどうかと思ったので断った。今度どこか行く約束をして断った。


 店の中でプレゼントを選んでいると外が騒ぎ出して様子を見に行ったら彼が倒れていた、回りの人が声をかけても返事をしない。誰かが救急車を呼んだのだろう。彼は救急車に乗せられて病院まで運ばれていった。


 その間なにもできずに隅で泣いていると兄がやって来た。


「あれ、

きー君だったよな

何かあったのか?」


「…朝に……」


 そこまで言って押し黙る。


「朝、

何があった?」


「朝にどこか行かないかって…」


「で?」


「用事があるから断って…」


 そこまで言うと静かに聞いていた兄が怒り出して


「お前は何をしてるんだ!

きー君からしてみれば自分とのデートを断って他の男とデートしているようなもんなんだぞ!僕はきー君と面識がないだろうが!」


 黙って聞いていた私はハッとなるそれはそうだ、兄がいるとは話したが顔を見てはいないのだから彼が兄の事を認識出来る筈がない兄と出かけると言っていれば勘違いなどせずに兄として紹介できたのにプレゼントがバレたくなかったので用事があるからと言ってしまった。


 しばらく経って彼のいる病院に向かった。彼の病室は一人用だったので静かに二人で話せると思っていたのだしかし彼は...


「すみません

部屋を間違えていませんか?」


「え…?」


 一瞬言われた意味がわからなかった。兄の事を怒ってからかっているのだと思ったので、


「ご…ごめんね?

兄の事黙っていて、

だからさそんなこと言わないでよ」


 自然と涙が止まらなかった。分かっていた。これは冗談なんかじゃなく彼は本心から言っていたことを。後悔した。彼にしっかり説明していればこんなことにはならなかったことを。


 倒れそうになるも、ゆっくりとした足取りで出口まで行って、


「す…すいません

お邪魔しました」


「大丈夫ですか?部屋まで案内しましょうか?」


「だ…大丈夫です

すぐ近くなので」


「そうですか?

ではお大事に」


 彼は優しかった。私の事なんてわからない筈なのに。昔から彼は私に優しくしてくれた。苛められていたときも。迷子になったときも。悲しくて泣いていたときも。今も。あの優しく微笑んだ顔で声をかけてくれた。ずっと彼の顔が。笑った顔が。怒った顔が。泣いた顔が。楽しそうな顔が。悔しそうな顔が。嬉しそうな顔が私の為に怒ってくれた横顔が。スポーツをしているときのキラキラした横顔が。私を探しだしてくれた埃の付いた笑顔が大好きだった。今でも大好きだ。


 彼の病室を出て、家に帰る。帰る前も、帰る途中も、帰った後もずっと泣いていた。溢れ出た。泣き止んだとしても、何度も何度も涙が溢れた。彼のくれた髪飾りを抱き締めて何度も何度も泣き続けた。兄に言われて何度か彼の病室に行っても思い出してはもらえない。あの私に向けてくれた優しい微笑みが私を苦しませる。彼の事を忘れようとしても忘れられない。彼のあの笑顔が頭から離れない。学校にも行けなくなっていた。彼の母親から少し離れてどちらも落ち着いてはどうかと、しばらく経つと思い出すかもしれないからと。


 そして私は祖父母の家に行って事情を話して祖父母の家に置いてもらい、そこから近くの高校に通った。しばらく経っても夜は毎晩泣いていた。貰った安物でどこにでもありそうな誰が見ても高価な値なんて付かない、私だけの大事な宝物。ずっと抱き締めて毎晩迷子の子どものように泣いた。高校に入って何度か告白されたのだが彼以外は絶対に嫌だった。何年かかっても思い出させてやると心に誓ったから。


 そして高校三年の春、彼のいる高校に転入した。同じクラスだった。でも彼は私の事は覚えていなかった。雰囲気も変わっていたが、彼は彼だった。はじめて声をかけたときあの優しい微笑みを浮かべて返事をしてくれた。


 彼のいる高校に入って友達がたくさん出来た。告白も何度かされたけど断った。


 桜の花がほとんど散った。彼の一番好きな、私の一番嫌いな花。私の心を表しているように、花が咲くには時間をかけて咲いたらすぐ散って、10年程掛けて恋人になったのに1年と少しで離ればなれになって...桜なんて大嫌いだ。


 ある日、彼を校門の近くで待っていた。まだ残っている少ない桜の花がひとつまたひとつと散っていく、チャイムが鳴った先生にはばれないように隠れて彼を待った一限目の終わりごろに急いでやって来たそして、


「放課後

またここに来て欲しいの」


 すごくドキドキした。でもしっかり言えた放課後まで心臓がバクバクで授業どころではなかった。放課後になって桜の木の前に立っていると彼が来た、そのとき最後の桜の花が落ちた。


「私の事覚えてる?」


「え?

いやないよ残念だけど見覚えがないかな」


「そっか

変なこと聞いちゃってごめんね」


「いや

大丈夫、じゃあね桜木さん」


 やっぱり、きーくんはきーくんなんだね。私が傷付かないようにしてるんだもんね。...でも私はきついなぁ、桜木さん...かぁ...。やっぱり辛いなぁ。


 帰る途中も涙が止まらなかった。辛かった。苦しかった。彼を忘れられたら楽になれるのかなとも思った。でも忘れられなかった忘れたくなかった。彼は忘れてしまったけど、彼に私を忘れさせてしまったのは私だ。だから私は忘れない。


 家に着いた。お母さんは泣いている私にどうしたのか聞いてきたので話した。彼のお母さんから聞いたでは完全に私を忘れたわけではなかったそうだ、今でも辛い思いをしているそうだ、なら頑張るしかない。


 しかし直ぐに何か出来る訳もなく夏休みになった。友達と一緒に課題をやることになって家でやるのもあれだからと言って喫茶店に連れていかれた、なんでも彼氏さんの家がここなんだそうでたまにお手伝いしているらしい、羨ましいな、などと思いつつ喫茶店に行くと彼がいた、内心テンションが上がりつつ平常心を保った。友達は友達で彼氏さんと話していることが多いので課題に集中した。彼は友達の彼氏さんと仲がいいのかお客さんが少ないときは笑いあっていた。


 夏休みが終わって少し経ったくらいに決心した。彼にしっかり話そう、と、紙にメールアドレスと


『私のメールアドレスだから登録して、話したいことがあるの』


 と書いた。...大丈夫かな、変じゃないよね?お母さんに相談しよう、分からないなんて返答は無しだと思う。兄に聞いてみた、...笑うなんて、彼女さんにえっちな本の隠し場所を教えたので復讐は済んだ、そして学校で


「家についてから読んで」


 あぁ~渡しちゃったメール来なかったらどうしよう、よく考えたら怖いよね大丈夫かな?お母さんに相談した。相談している途中でメールが来た。彼からのメールだ。お母さんに抱きついちゃった、よかった、やっぱりきーくんは優しいな。...返事どうしよ


「お母さん助けて!」


 お母さんまで笑うなんて...お父さんにお母さんのへそくりの場所を二つくらい教えてやる。


『櫛田です

このメールアドレスは桜木さんので良かったですか?』


 うん、好き。


 じゃなくて、返事だ返事。普通に友達に送るように


『桜木葉月です

いきなりごめんね電話番号が書いてあるから電話してきてくれる?』


 送ってからお母さんに見せると


「普通は電話番号なんて書かないでしょ」


 と言われた。そうだよね書き直そう!...送っちゃってた


「お、お、お、お母さんどうしよう!

ドラ◯もんどこかにいない!?

過去に行ってメール打ち直せない!?」


「あんたバカなの?

過去に行けるんならあの時に戻りなさいよ」


 うん、冷静になったそうだよね、ド◯えもんなんて存在しないよね...でんわ、きちゃったぁ


「きちゃっ、き、きちゃったどうしようまずはお風呂に入ってお化粧して服選んで歯磨いてお風呂から出てそれからそれから...あう!」


 怒られちゃったでも叩くことはないと思う、お父さんに教えるお母さんのへそくりの場所を三つに増やしてやる


「早く出てあげなさいよ」


「そうだよね」


 そうだよねきーくん待ってるよね


『もしもし櫛田です』


「もしもし櫛田君?

桜木です、いきなりごめんね

時間大丈夫?」


『大丈夫ですよ』


「えっと、

日曜日さ暇?」


『え?まあ暇ですね』


「そっかよかった

その日にさ一緒に出掛けない?」


『どうしてです?』


「電話じゃなくて、

面と向かって話したいからかな」


『分かりました』


「時間と場所は追って連絡するね」


『分かりましたお休みです』


「うん、

お休み…きーくん」


 言っちゃった言っちゃったどうしようどんな服着よう大丈夫かな変な顔されないかな拒絶されないかな、こういうときはお父さんに聞こう。ほかの二人に聞いても笑われるから。


 お父さんに聞いてみた...笑ったな?お父さんまで笑ったな?仕方ない


「新しく買ったゴルフクラブの寿命が無くなってもいいの?」


「さてデートだったな

人はあまりいないところで静かなところがいいんじゃないか?あと話が話だから化粧は軽い方がいい、あと服装も普通な感じがいいだろうな、だからゴルフクラブは勘弁して?お母さんまだ知らないからあとけっこう高かったから」


 なるほどさすがお父さん早口だけどしっかりアドバイスしてくれる1本だけで我慢しておこう。


 あの夏休みきーくんがバイトしていた喫茶店で話そうかなあの友達の彼氏さんは友達いわく部活らしいから知った顔が少ないだろうしあと試合なのか知らないけど私に愚痴るのはやめて欲しい。


 近所の人いわく、その日の夜男女3人の悲しい叫び声が桜木家から聞こえたそうだ。どうしたのだろう、まっいいか。


 日曜日になるまでドキドキバクバクしていたが彼は平然としていたのでなんだか悔しかった、友達にどうしたのか聞かれたのだが、


「来週には話すから待っていて欲しい」


 と言っておいた。納得してくれたのかな?


 日曜日になって集合場所に着いた。三時間前はないと思う。どうしようセリフを考えよう...あと十分くらいかな?きちゃった!どうしようきちゃった!考えたセリフ忘れたけど来てくれた!きーくんは優しいなぁ、


「すいません

待ちました?」


「ううん

大丈夫だよ来たばっかだから

それよりもちょっと移動しよっか」


 好き!きーくん好き!顔が緩んじゃう...でも好き!ラマーズ呼吸法だひっひっふーひっひっふー...


「大丈夫?」


「ピッ!?

だ、大丈夫

ちょっと緊張してるだけだから」


 好き!じゃなくて優しいなぁ、喫茶店に着いた、うん知らない店員さんだ。きーくんが挨拶している顔見知りかな?注文したコーヒーが届いて話始める


「櫛田君は優しいね」


「そうですか?」


「じゃなきゃ

行きなり呼び出されても普通、来ないよ」


「まあ大事な話があるって言っていたので」


「そっか、

大事な話ってのはね」


 今まで貯めてきた想いをすべてぶつける。


「私ね昔好きな人がいたんだ、ずっと前から物心つくずっと前から好きだったんだ、ずっと側に居てあげたいその人を支えてあげたい、その人と一緒になりたい、って、それでね中学生の頃にその人の方から告白されたんだものすごく嬉しかった、初めて手を繋いだ日も、ファーストキスを捧げた日も、もちろん告白された日も全部覚えてるんだカレンダーにも書いていないノートや手帳なんかにも書いてない私だけが覚えてる特別な日、多分その人は覚えてないだろうけどね、私の誕生日の日には綺麗な髪飾りをくれたその時に『いつか指輪を渡すから待っていて』って言われてすごく嬉しかった、その人の誕生日が近づいてきたから誕生日プレゼントを兄と買いに出掛けて、出掛けた先で兄と一緒にいるところを見られちゃって、その日の朝にどこかに出掛けないかって言われてたんだけど兄は忙しい人だから失礼かなって思って断って断るときに用事があるからって言って断ったんだ、兄に言われるまで気が付かなかったけど、その人は兄との面識がないからほかの人とデートしているように見えてるんだって気づいたときには遅くてその人は救急車に運ばれていった、ずっと悲しくて悲しくて辛くて辛くて苦しくて苦しくてそれでも大好きで忘れようと思っても忘れたくなくてずっとずっと大好きで...」


 そこまで言って彼の顔を見た、涙で滲んでいるから良くは分からないけど真剣に聞いてくれて...


「私は貴方が好きです」


 そこまで言うと彼が、きーくんが糸の切れた人形のように倒れたあまり音はたたなかったようで店員さんを呼んで、


「少し寝かせたいんですがいいですか?」


「いいですよ

櫛田さんは知らない顔じゃないですし今は常連さんしかいないのでみなさん彼の事を知っていますから」


 そのあと彼の母親を呼んで彼の父親と彼は帰っていった。そして彼の母親から話しを聞かれすべて話した、すると彼の母親は優しく頭を撫でてくれた。泣きそうになったが堪えて家に帰った。


 家について自分の部屋に入るとやっぱり涙が止まらなかった泣いて疲れたのかそのあと寝てしまって学校の準備をして学校に行こうとしてお母さんに休みと教えられてなぜそんなにテンパっているか聞かれてお母さんにも話した。お母さんも涙を流して頭を撫でてくれて、


「よく頑張ったね

あとはこれからだよ」


 と言われた。そこで電話が鳴った。


 ───────────


 また夢だろうか、これは幼稚園くらいだろう、


「はーちゃんはぼくのおよめさんだからね!ほかのひとにくだかれてもぼくだけのおよめさんだからね!」


「きーくん、くどかれてもだよ?それとわたしはきーくんだけのものだからだいじょうぶだよ、ずっときーくんだけのもの」


 うん、俺ってバカじゃないの?くだかれるってなんだよよく知らない言葉を使うんじゃありません!っと、場面が切り替わって~小学生かな?


「桜木のブース」

「ブースブース」

「しんじゃえ!」


 ひどっ、小学生ひどっ大人よりひどくない?


「おれのはーちゃんをいじめるな!」


「きーくん?」


「はーちゃんはブスなんかじゃない!それにはーちゃんがもしブスだったらおまえらはさるの赤いおしりだ!」


 おれのはーちゃんって恥ずかしいこと言うねやっぱりバカじゃないの?俺。次は?中一かな?


「はーちゃんどこ?」


「ここだ!

やっぱり!

見つけたよはーちゃん」


「!きーくん?

どうしたの?」


「はーちゃんを探してたんだよ」


「どうして?」


「心配したんだから!

はーちゃんのお母さんがはーちゃんが出ていったって言っててほんとに心配したんだから!ちょっとここで待ってて?」


「なに?

お母さん呼んでくるの?」


「ん?

違うよ?

寒いでしょ?

毛布と食べられるもの持ってくるから!

お母さんたちには言わないからさ待っててよ」


「うん、

待ってる」


 うっひゃーカックイイ、俺さっきまでバカ丸出しだったけど、


「ただいま~

毛布とお菓子とカップ麺!」


「お湯どうするの?」


「...毛布とお菓子持ってきたよ!」


「う、うん

ありがときーくん」


 ごめ、やっぱバカだわ、俺バカじゃん、そしてさりげなく一緒に毛布にはいるバカ。次は中二?


「はーちゃん誕生日おめでとう!

安物で悪いんだけど似合うかなって」


「ううん

スッゴくうれしい!」


「あのさ、

いつか指輪を渡すから待っていて」


「うん!

いつまでも待ってるから!

楽しみにしてるね!」


「任せて!」


 もう終わりかな?目が覚める、そんな感じがする。


「起きたか」


「父さん?ええっと桜木さんと出掛けて…はーちゃん?」


公斗きみと、思い出したか?」


「うん、思い出したみたいだね」


「そうか、よくやった」


「父さん、大事なことが聞きたい」


「おう、どうした」


「中一くらいまで俺バカすぎない?」


「それが大事な話か?もっとほかにないの?こうなんかさはーちゃんのこととかはーちゃんのお兄さんの話とかさ」


「大事な話だ、カップ麺持っていってお湯忘れるってなに?夢で見てたけどあれはないよ?」


「ブフッ、わ、悪い。ククッ」


「父さん、キャバクラの名刺母さんに渡すから」


「!?なぜお前が知っている!?」


「はーちゃんに電話したいから声出さないでね」


「お、おう、あとで話し合おうじっくりゆっくり」


 これを出されると父さんは黙るしかないだろう確か今は7枚くらいあったな5枚だけ出して2枚残しておこう、っとそうじゃないそうじゃないはーちゃんに電話。


「もしもし櫛田です」


『はっはい、桜木です』


「はーちゃんごめんね俺の勘違いのせいで辛い思いさせて、全部思い出したからさこれからはずっと一緒だよ」


 彼女は...はーちゃんは泣いているようだ、はーちゃんの全てが愛おしく感じる好きだ涙が溢れる。今日は休みだったはずだから会いに行こう、そうしよう。神様がダメって言っても行ってやる、そんな神様殴ってやる。今ははーちゃんに会いたいのだ。


「今からはーちゃんの家に行くね」


『ままって!寝起きだから今ダメだから!』


「行くからねー」


『ダメだっ──』


 うん、行くか。


「母さーん渡したいものがあるんだけどーあと出掛けてくるー」


「はーい」


「これが父さんのキャバクラの名刺でこれが父さんのへそくり」


「はい、ご苦労様。お父さんとお話してくるから遅れてもいいわよ」


「っと、父さん父さんこれ母さんのへそくり」


 よし、臨時報酬いただき、これではーちゃんのところに行ける!


「行ってきまーす」


「きみとーーーーー!!!!!」


 おっさんの叫び声が聞こえたが放置しよう、はーちゃん今行くよ!


 ───────────


「ででででんわきたどどどどうしよたたたたすけてお母さんへそくりちくったのあやまるからおねがいたすけて」


「はぁ、あんたバカでしょほんときー君に悪いわね」


「わかってるよ!バカでヘタレで阿呆だよ!でも好きなんだもん!わかるでしょ!」


「呆れ通り越して感心する開き直りの早さ」


「それよりどうしよははえもん!」


「早くでなさいよきー君待ってるわよ?」


「待たせちゃダメ!」


『もしもし櫛田です』


「はっはい、桜木です」


『はーちゃんごめんね俺の勘違いのせいで辛い思いさせて、全部思い出したからさこれからはずっと一緒だよ』


 はーちゃんって呼んでくれたやっと、頑張ったお陰できーくんにはーちゃんって呼んでもらえた。きーくんにしか呼ばせないきーくんだけが呼んでいい私の呼び名、きーくん以外が呼んだら口を焼いちゃうかもしれない。でもそんなことは今はどうでもいいやっとはーちゃんって、はーちゃんって呼んでくれた!これからはずっと一緒!


「今からはーちゃんの家に行くね」


『ままって!寝起きだから今ダメだから!』


「行くからねー」


『ダメだっ──』


 えっ...どうしよどうしよどうしよお風呂入ってないよとりあえず


「お風呂入ってくる!」


 急げ、急ぎながら身だしなみには気を付けて勝負下着で行こうかな...そうじゃない早く準備をしないと!


「お母さん!助けて!」


「それくらい自分で考えなさい」


「お父さんのへそくり教えるから!」


「仕方ないわねそこまで言うなら助けてあげるわ」


「!?!?」


「早く!できるだけ早く!きーくん来ちゃうから!」


 ふぃ~間に合ったかな?


『ピンポーン』


「ききききちゃった!いいいいってきままます」


「俺も挨拶しとかないとな」


「お母さん!お母さんのタンスの裏!」


「母さん、寝室の目覚まし時計の中」


「二人ともありがとね」


「裏切り者ーーーーー!!!!」


 きちゃった変じゃないよね?臭わないかな?大丈夫!お母さんに見てもらったしきっと大丈夫!じゃない!助けてドラえ◯ん!


「いらっしゃい」


 バカ兄ーーーーー!!!!彼女さんにほかのえっちな本の隠し場所教えてやる!!


「えっとお兄さんでしたっけ」


「うん、バカの兄です、ごめんね誤解させちゃって」


「いえ大丈夫です、もともとは俺のはやとちりですから」


「これから末永くこのバカをよろしくね」


「はいっ!」


 バカってひどくない?彼女さんにえっちなおもちゃの隠し場所教えてやる。...末永くって言ってくれた!脳みそ下半身の兄の癖にやるじゃない!おもちゃの隠し場所は教えないであげる!きーくんカッコいいなぁ、あとバカってところに反応してた、かわいいなぁ。


「じゃあはーちゃん借りていきますね」


「どうぞー、なんならお泊まりでもいいからねー今うちうるさいし僕このあと彼女のところに行くからさ」


「おおおお泊まりってままままだ学生なんだよ!ばばばばか兄!」


「そうですか、とりあえずお借りしますね、じゃあはーちゃん行こっか」


「う、うんどこ行くの?」


「とりあえずゆっくりできるところでお話かな、そのあと約束を果たしに行くよ」


 これが幸せなのかな


 悲しくて流す涙じゃない。嬉しくて、心から嬉しくて溢れて止まらない涙


 ────────────


 これが幸せなんだろうな


 苦しくて流す涙じゃない。嬉しくて、心の底から溢れ出る涙が


───────────────


 【そんな幸せな幸福の涙が止まらなかった】

 続きは書くかわかりません書いたとしてもすぐには書きません。


 あとは指摘などはしっかりしてくださいアスファルトさんは増長する癖がありますしっかり指摘してくださらないとバカな作品がさらにバカになります。ではでは

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