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ショートショート

表現者になろう

『表現者になろう』通称『なろう』はアートを専門としたSNSとして人気を集めていた。

 その噂を聞きつけた一人の画家が『なろう』への投稿を始めた途端、今まで見向きもされなかった作品たちが『なろう』では次々と評価され、初投稿から数ヶ月も経つ頃には『なろう』の中でも人気の作家となった。

 画家の活躍は各種メディアでも取り上げられるようになり、それに伴って『なろう』自体もかつてない注目を集めていた。

 そんなある日『なろう』の管理人がニュース番組でインタビューを受けた。その時の発言の一部が大きなバッシングを受けることになる。


「当サービスはアーティストやクリエイターの作品公開の場としてご愛顧いただいておりますが、そもそもの発端は私という芸術家のアートでもあります。『表現者になろう』というアート作品上に他の表現者たちの作品が集まることで完成する総合芸術なのです」


 これを受けて激怒したのは画家をはじめとした投稿者たちである。純粋に自分たちの作品を楽しんでもらおうと投稿していたはずが、いつの間にか管理人の作品の一部として利用されていた――――すでに『なろう』で一番人気となっていた画家は、反抗の旗手として名乗り出る。交流のあった作家やファンに協力を要請し、管理人への発言撤回の署名活動にいそしむようになった。

 一ヶ月かけて集めた署名はなんと数万。懇意にしていたメディアにも駆けつけてもらい、これをもって管理人へ発言撤回の直談判を行う。

 その様子はネットニュースで実況中継され、表現者たちの怒りの大きさを悟った管理人は発言撤回を容認、謝罪会見まで開く騒ぎとなった。

 見事勝利を獲得した画家は、反対勢力の代表としてインタビューを受けた。


――このたびは『表現者になろう』管理人が発言撤回を認める運びとなりましたが、そもそもなぜこの様な運動を始めようと思ったのでしょうか?


「まず、管理人の発言に対する怒りがありました。アートにおいて怒りとは重要な要素であり動機になります。ですので、この怒りを表現として昇華することを考えました。一連の運動は私主導によるパフォーマンスアートなのです」

数年前に書いたショートショートを発掘したので、せっかくと思い公開しました。

世の中自分勝手な人ばかりです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者名がシモネタっぽく、ヒヤヒヤしましたが、 テンポ良くストーリーが展開し、とっても読みやすいです。 アメリカのジョークのような皮肉めいたお話で、中毒性があります。 [一言] 面白かった…
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