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恋と自販機  作者: 江菓
6/10

6本目 オレンジジュース

放課後。右手に教材、左手に1本のオレンジジュース。オレンジジュースはさっき買ったばかりでとても冷えている。

息切れをしない程度に足早に生徒の待つ自習室に向かう。途中、部活に向かう生徒に止められ、少し話してしまい時間を食ったがなんとか自習室についた。扉を開けとにらめっこをしている男子生徒がいた。扉から入って1番前の席に座り、数学のワークとにらめっこしている男子生徒がいた。近付いてワークを覗くと問1の(3)で止まっていた。

「柑田くん。」

「あっ先生。ここってこれで合ってますか?」

「どれどれ…4+X=8をX=8-4に直して8-4を計算して…うん。合ってるよ!答えもX=4で合ってるよ!」

「よし!」

柑田くんは手でガッツポーズを作り、喜んでいる。

「柑田くん。いつも頑張ってるから差し入れ。」

「えっあ、ありがとうございます!」

「じゃあ、次行こうか。」

「はい!」

柑田くんは苦手な数学を克服するために放課後の1時間だけ私と数学の復習をしている。柑田くんは1対1で教えればわかる子でテストの度に点数があがっている。柑田くんの点が上がるたび私も嬉しくなる。

「先生。」

「ん?どこかわからない?」

「えっと…そうじゃないんですけど…」

「じゃあ、なに?悩みごと?」

「えっと…」

柑田くんは顔をワークから私の方に向いた。真剣な表情から察するにとても深刻な悩みなのかもしれない。

「先生。」

「はい。」

「次の数学のテストで100点を取ったら先生に告白します。」

「はい。・・・えっ?」

「なので、100点取れるように頑張ります!」

柑田くんの言った言葉が一瞬理解できなかった。頭の中が真っ白の私の顔を赤らめた柑田くんは「今日は少し早いけど帰ります!家で頑張ります!」と言って一礼し、荷物を持って、逃げるように自習室を出ていった。

柑田くんのいなくなった自習室は私1人で、窓から見える空は夕日のオレンジが夜の濃い紫に変わろうとしていた。

「柑田くん…私の事…好きだったの…?いやいやいや、きっと罰ゲームか何かでしょ!だって10歳差だよ!?ないない!・・・でも、罰ゲームでも好きな子に告白されるのは嬉しいな…」

椅子から立ち上がり、窓の近くへ行く。空を見ながらぽつりと呟いた。

「両思いってあるんだ。」

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