3本目 紅茶
図書室に入ると机に座るまばらな人たちを見渡す。日がよく当たる席に座って本を読んでいる茶色のふちのメガネをかけた美形の顔、背が高く、見つけるのは容易だった。近付き、小声で声をかける。
「先輩!これどうぞ!」
「ん?紅茶?ありがとう。どうしたの?」
「昨日の放課後に勉強を教えて貰ったお礼です!受け取ってください!」
「あぁ…あれはこっちが勝手に横から教えただけだからな…」
「でも、今日の小テスト先輩が教えてくれたからよく出来たんです!ありがとうございました!」
ぺこりとお辞儀する。先輩は笑顔で「そっか。よかった。」と言ってくれた。
「あの…それでなんですけど…」
「どうした?」
先輩の隣の席の椅子を引き、下にリュックを置き、中から教科書、ノート、筆箱を取り出し、机に置き、自分は引いた椅子に座った。「数学I」と書かれた教科書のページをめくり、わからない問題を指さす。
「これのやり方が分からなくて…」
「あぁ〜これか。これなら、ここをこうすれば…」
先輩は本を閉じ、胸ポケットに刺さっていたシャーペンを手に取ると、教科書の図に書き込み出した。私はそれを見ながらノートに授業の時に書いておいた問題を解く。
問題を簡単にとく方法や、求め方を聞いたりしているといつの間にか1時間ほどたっていた。外は真っ暗だ。
「あっもうこんな時間か…」
「えっ!?もうこんな時間!?すみません…こんな時間まで教えて貰っちゃって…」
「大丈夫だよ。そう言えば電車?自転車?」
「自転車です!」
「そっかそっか、暗いから気おつけて帰るんだよ。」
「はい!ありがとうございます!」
「また、聞きたくなったらおいで。図書室にいるから。」
「はい!ありがとうございます!」
帰り支度をして図書室を出る。先輩にさよならをし、自転車置き場まで足早に行く。マフラーで赤くなった顔を隠しながら自転車で暗くなった道を走った。