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リア0to10   作者: ウイクエ
8/8

第七幕 秘密

「一体何が始まるんですの?」

「さあ、犯人グループからはここで待機しろと……なあ?」

「え?……あ、はいそうですね!」


 園美より質問された清蔵より、更に質問され。

 上尾は相槌を打つ。


 嘉館邸にて。

 園美、武、水城、明日葉、清蔵、上尾が立っている。


「……畜生、気まずくてかなわねえよ。こんな時に執事長もいねえし〜!」


 と、その時だ。


「……!? お、おっと!」


 突然、着信音が。

 上尾は電話を取る。


「犯人グループからか!何と言っている?」


 清蔵が尋ねる。


「そ、それが……今、この屋敷にいると。」

「何⁉︎」


 上尾の言葉に、清蔵は驚くが。


「さあさ、犯人グループ御一行のご到着ー!ってね。」

「!? な、お前ら!」


 果たして、先ほどの電話通りに。

 栗毛は手下3人と共に屋敷の中に入って来た。

 手下の1人は気絶している成人に肩を貸している。


「成人!」


 水城が叫ぶ。


「お前らどうやって屋敷に!」


 上尾が尋ねる。


「この坊っちゃまと一緒に捕らえた……まあ今は解放したあのポンコツ執事、夜な夜なお忍びでゲイバーなんて行っててえ、その抜け道を教えてもらったのさ!」

「なっ!?」


 その言葉に、皆耳を疑う。


「マジかよ!どうりで時折夜見つかんねえわけだわ!」


 上尾は驚きつつ、長年の疑問を解消する。


「ゲ、ゲイバー⁉︎」

「あなた!」

「……すいません。」


 武は何やら変な所に反応し、妻である園美に突っ込みを入れられてしまう。


「栗毛狂一郎、久しぶりだな!」

「え!会長ご存知なんですか?」


 上尾はまたも驚く。

 この男と清蔵が、知り合いとは。


「まあ!……昔の恋人、みたいなものかねー!」

「ええ⁉︎ 会長どんなご趣味を!」

「あなた!一々変な所に反応するんじゃありません!」

「……すいません。」


 またも武は、園美に怒られる。

 彼も中々、腐っているようだがさておき。


「……昔、私の周りをゴシップでもないかと嗅ぎ回っていた男です。やっと諦めたと思えば、こんな下卑た真似を……」

「下卑た真似、ねえ……それは会長、あんたもなんじゃないの?」

「何を……」


 嫌味を言う清蔵に、栗毛は鼻を鳴らしながら言う。


「とにかく成人を放して!」

「ああ、返すけど……会長が昔の下卑たこと話してくれなきゃなあ……」

「⁉︎……会長。」

「……」


 水城の叫びに、栗毛は清蔵を睨みつける。

 が、清蔵は目を伏せて黙ってしまった。


「さあ言えよジジイ!言わなきゃ孫がどうなるか知ってっか⁉︎」


 栗毛は、成人に銃を向ける。


「成人!」


 しかし、その時だった。


「やめろ!坊っちゃまの命は保証するんじゃないのか!」


 冴沼が、現れた。


「冴沼!無事か⁉︎」

「冴沼さん!」


 上尾と水城が、驚く。


「おやおや、ヒーローは遅れてくる……なんてな。ポンコツ執事!ただの死に損ないが今更何しに来やがる⁉︎」


 栗毛は冴沼を、笑い飛ばす。


「お前こそ!殺すつもりの奴が浮袋なんて巻き付けるか!」


 しかし冴沼も、臆せず返す。


「あああれは、ちょっと脅してみただけさ。」

「お前!」

「おっと近づくな!」


 栗毛は、冴沼に銃を向ける。

 しかし、次の瞬間だった。


「やめなさい栗毛! 今はあんな執事に構ってる場合じゃないでしょ?」

「おっと、そうだったな。」


 突然明日葉が、口を開いたのである。


「え……? 明日葉……」

「今、なんて……」

「お前、僕を解放する時、君澤さんをお嬢様って呼んだな!」


 皆が首を傾げる中。

 冴沼は叫ぶ。


「おっと、こっちもうっかりしてた。……なあ、お嬢様?」


 栗毛は、明日葉に言う。


「お嬢様、だと?」

「そう、うっかり紹介が遅れたが、彼女こそ今回の首謀者ってわけ!」

「首謀、者……⁉︎」


 明日葉は、栗毛の所へ行く。


「嘘でしょう、明日葉!」

「嘘ではありません、お嬢様。」


 水城の呼びかけに、明日葉は首を横に振る。


「おいおい、お嬢様が他人にお嬢様って言うなよ。」

「だから、お嬢様ってどういう意味だよ!」

「それは、会長が説明してくれるよなあ?」

「……」


 栗毛は清蔵を促すが。

 清蔵は相変わらず、黙ったままだ。


「……会長」

「黙ってねえで何とか言えよ!孫がどうなってもいいのかよ⁉︎」


 栗毛は、痺れを切らし。

 再び成人に銃を向ける。


「⁉︎ 止めろ! 坊っちゃまを撃つなーーーーー!」


 冴沼は、栗毛に駆け寄る。


「⁉︎」


 栗毛は驚き、思わず冴沼を撃つ。


「冴沼ーーー!」


 冴沼は倒れる。

 上尾は、冴沼に駆け寄る。


「冴沼さん!」


 水城も、心配の声を上げる。


「栗毛!」


 明日葉は、栗毛を咎める。


「う、うるせえ!そいつが向かってくるから悪いんだ!」

「……分かった、話す!もう、誰も傷つけるな……」


 しかし、この一連の流れにより。

 清蔵が、ようやく声を上げた。


「へえ、あのポンコツ執事もたまには役に立つな……おい、一応薬で眠らせてあるが、坊っちゃまに聞かせないように連れて行け。そこのポンコツ執事と近くの奴は医務室にでも連行しろ。」

「はっ!」


 手下たちは、栗毛の命令を受け。

 手下の1人は、成人を連れ、手下2人は冴沼と上尾を連れて部屋を後にする。


「……さて、話してもらおうか」


 栗毛は、清蔵をまた促す。


「ああ。……師合ご夫妻と御令嬢の執事、君澤明日葉君……本名は、嘉館樹乃。私の実の孫だ。」

「孫⁉︎ 明日葉が⁉︎」


 清蔵の話に、水城は耳を疑う。


「じゃあ、成人君は?」

「一応、血縁関係にはありますよ。ま、遠縁だけどね。そこのじいさんは、実の孫じゃなく、わざわざ遠縁から男の子を養子に、すなわち跡取りにしようとしたのさ!」


 武の疑問に、栗毛が答える。


「……なぜ、そんなことを……」

「理由はただ一つ、たった1人の実の孫が、男じゃなく女だったからさ!」

「まさか、女に家は継がせないと?」

「……ええ、私は当時そういった考えだった。」


 清蔵は申し訳なさげに、目を伏せる。


「それだけじゃない、それが不当な男女差別とも知っていて、世間からそのことを隠すために彼女を養女に出した! 最初から孫娘などいなかったようにするために!」


 栗毛は、侮蔑を含んだ声で煽る。


「……会長、私たちにも娘しかいませんが、あの子以外に師合の家を継ぐものはいないと思っています。あなたのその考え方は、理解しかねますわ。」

「お母様……」


 園美の言葉に、水城は涙ぐむ。


「ええ、私は最低な祖父です……ずっと、そのことを後悔していた」

「ふふ……よし。」


 清蔵が言い終えた所で。

 栗毛は、これまでのやりとりを録音していたICレコーダーを取り出す。


「はい結構! よく話してくれましたー!」

「……さあ、記事にでもするがいい。」

「記事? 嫌だなあ会長、俺の要求はまだ終わりじゃない……この録音をバラされたくなけりゃ、定期的に口止め料もらおうか!」

「何⁉︎」


 しかし、栗毛は話を違える。


「もう記事なんて書いて雀の涙程度の金もらう生活なんざうんざりだ!これからも頼むわ!」

「ライターの風上にも置けない男ね……」

「どうとでも言えばいいさ!俺は最初からそのつもりだったんだからなあ!」


 園美の誹りも、栗毛はどこ吹く風である。


「それは脅しにはならない!だっておじい様は、秘密にしなくていいっておっしゃってるじゃない!」


 水城は、栗毛に怒鳴るが。


「分かってねえな!確かに会長は自分の話がバレてもいいって思ってるんだろうけど、あの坊っちゃまはどうかな?自分の生まれを知ったら?」

「それは……」


 栗毛の言葉に、水城は口を噤む。


「それはダメだ!」

「なら交渉成立だ!あんたはずっと俺のカモだ!はっはっはっはーーー!」


 清蔵が叫び、栗毛は笑う。


「栗毛、ありがとう。あんたのおかげで、おじい様から本当の気持ちを聞くことができた。」

「そうだろ、はっはっはっはっはーーー!」

「ありがとうついでに……私たちの契約はここで終了。」


 しかし明日葉は栗毛からICレコーダーを奪い取る。


「何⁉︎ ふざけるな、まだ終わりじゃないだろう!」


 栗毛は驚く。


「少なくとも、私の中ではもう終わり。私はただ、おじい様から私の話を聞きたかっただけだもの。」

「あんたにまだ抜けられたら困るんだよ!」


 明日葉に銃を向けながら、栗毛は彼女に叫ぶ。

 しかし。


「なら、そんなもの向けたところであなたに私は撃てない。」


 明日葉は、素っ気ない応答だ。


「……交渉決裂か、ならせめてもの腹いせだ!」


 栗毛は、引き金に手をかける。

 が、その時だった。


「⁉︎一体何だ!」

「たあーーー!」


 手下が2人、吹っ飛びながら部屋に入って来る。

 遅れて上尾、冴沼も、入って来た。

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