実らなくて良かった恋と、新しい恋
新しい恋は、不入斗競技場の門の前で始まった。
ストレッチをしようと沙希ちゃんに誘われて、一緒にいたのが体格の良い彼。
うわぁ、なんだか男の中の男というか、ごつくて筋肉の話ばかりする感じの人かな。でも意外と優しかったりするのかな? 香川屋のカメさんだって筋骨隆々で見た目は怖いけど、気さくで面倒見が良くて生きものが好きでブラック企業並みの労働が好きで……。うーん、なんだかよくわからないや。
「えーと、つぐみちゃんと武道は初めての接触?」
「うん。タケミチくんっていうんだ。2年生?」
「あ、はい! 2年です! 合格の合の字に田んぼの田、武道と書いて合田武道と申します!」
あ、この人、緊張してる。人見知りなのかな? それとも私が女子だからかな?
「合田武道くん。同じく2年の小日向つぐみって言います。小さい日向に、ひらがなでつぐみです。よろしくね。えーと、合田くんでいいかな」
「はっ、はい! よろしくなっしゃす……!」
どうしてだろう、からだの大きな彼が、小さくて気弱な私にびくびくしている。
こういう男の子も、いるんだ。
きっと彼はそんなに賢いタイプではなくて、だけど純粋で真っ直ぐ。正直なところ見た目はタイプではない。けれど彼の醸し出す目に見えないものに、私は吸い寄せられるように惹かれたのだ。
心の一目惚れ。そんな言葉がピッタリだと思う。
前の恋は告白したら「お前とは友だちにもなる気はない」と酷いフラれかたをしたから、その反動でもっといい人が見付かったとも思える。
沙希ちゃんにもまどかちゃんにも内緒で秘かに告白して、人知れずフラれた。それから体調を崩して、翌日は学校を休みお医者さんから強めの胃薬を2種類処方された。あの恋は実らなくて正解だった。その男はいまでも私の近くにいるけど、あれから一切口を利いていない。
合田武道くん。力ではとても敵わないに決まってるけど、それ以外の色んなことで、私は彼を守りたいと思った。
この恋はきっと、神様が頑張っている私にくれたご褒美だ。




