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緊急時に研究所は外部から完全に閉鎖される。すべての区画がロックされ、データを保護しながら研究所内にいる人間を保護する。だから研究所だけじゃない。おそらく地上にも出られない。列車も動かない。ドームの入り口のドアもきっと開かない。……外部からの救助がくるまでこのまま、……ずっと閉じ込められたまま。
遥がいてくれるならそれでいい。むしろそのほうがいいくらいだ。ずっと遥と二人だけで過ごしたい。研究所の中で一生を終えるのもいい。悪くない。私はそれで幸せだ。この部屋の中に遥がいればそれでいい。ベットの中で遥がちゃんと眠っていてくれれば、それでよかった。私は遥と一緒に救助を待てばいい。もし仮に外の世界が終わっていたとして、そのせいで永遠に救助が来なくても別に構わない。そんなことはどっちでもいい。私にとって世界とは遥のいる場所のことを意味する言葉なのだから。……でも、遥はいない。
(彼女はまた、夏の元からいなくなってしまった)




