246/442
281
「はるか」
照子が遥の体を揺らす。でも遥は動かない。なにもしない。照子に笑いかけたり、照子に話しかけたりしない。ただ頭から血を流しているだけだ。遥の頭に穴があいている。その穴の中を照子は興味深そうな瞳をして見つめている。その穴から血がどんどん出てくる。止まらない。永遠に止まらないように思える。照子は遥の頭の穴に顔を密着させる。耳を当てて音を聞こうとしたり、小さな鼻を突っ込んで匂いを嗅いだり、目をくっつけて、そこからじっと穴の中を覗き込んだりする。照子の顔面は真っ赤になる。遥の流した血が照子の顔を赤く染める。やがて照子は目を穴にくっつけた姿勢のままで、ぴくりとも動かなくなる。
暗い夜の世界の中。そこには照子と動かなくなった遥だけが存在している。
照子も動かない
とても長い時間、照子はそのままの姿勢で動かなかった。(もしかしたら照子は遥のものまねをしているのかもしれない)




