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「せっかくだしドームの外周を全部歩いてみようかな?」夏は提案する。
「それは無理だね。とてもじゃないけど人の足で歩ける距離じゃないよ」
「そうなの? じゃあ空間を確保しただけで、利用はしない予定なのかな? だとしたらさ、せっかくこんなに広い土地なのにもったいないね」
「列車を通す予定なんだ。それで移動するんだよ」澪が夏の疑問に答えてくれる。
「列車って、地下に行くあの列車?」
「そうだよ。さっきの駅から線路を延ばす予定なんだ」
なんだか本物の自然を利用したジオラマみたいだ。相変わらず遥の考えることはよくわからない。
そのことを澪に伝えると澪も、僕もそう思うと言って夏の意見に同意した。
通信機型カセットテープレコーダーの画面の中では澪がやれやれ、といった感じのジャスチャーをしている。そういうシーンを澪はなにかの映画の中で見たのかもしれない。
「もっとあったかくすることはできないの? 真夏にするとかさ?」
「できないよ。それにエネルギーを結構使っちゃうから勝手に温度調整はしちゃだめだって遥にきつく言われているんだよ」
地下でもエネルギーの節約はしていたようだけど、地底湖で泳いだときはまるで春のように思いっきり暖かくしてくれたし、……どうなんだろう? その辺、遥は意外といい加減なのかもしれない。(……私のため、なのかな? うーん)
しばらくして、二人の目の前に湖が見えてきた。かかった時間は澪の言った通りちょうど十分。さすが人工知能。時間には正確だ。
「奇麗。水ってこんなに奇麗だったっけ?」湖の畔に立って夏が言う。
「自然の水じゃないよ。きちんと浄化してる水だよ」澪は言う。
「地下の水も?」
「そうだよ。ここにある水は全部そうだよ」




