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138 タイムマシン

 タイムマシン


 この研究所はもしかしたら、タイムマシンにでもなっているのかもしれない。外に出たときに、時間が百年とか経過していたら素敵だ。


 タイムトラベルという言葉がある。実際には存在しない技術であり空想の概念だ。それでもこの言葉の中に現在でも物語としての力が残っているのは、人生をやり直したい、納得のいかない結果を変えたい、という願望を持つ人間が多いからだろう。仮想現実ならなんどでも人生をやり直すことは可能だ。世界が閉じているからだ。世界が閉じていれば物語はその中で何度でもループを繰り返すことになる。ただそうなると今度は世界を観測している主体そのものが閉じた世界の中に閉じ込められてしまうことになる。なかなかうまくいかない。タイムトラベルとは結局のところ自分の内面に閉じこもることを言う。人間の頭の中では時間も空間も自由自在に動かせる。それは理想の世界だ。天国とはいつでも人の頭の中にあるのだ。

 幸せになりたい。その願いを叶えるには現実世界はあまりにも狭すぎる。人の数に比べて世界があまりにも小さいんだ。だから椅子取りゲームが始まってしまう。自分の居場所や空間を手に入れるためには競争相手に勝つ必要がある。他人よりも速く。一秒でもいいから速く、その目的地にたどり着かなくてはならないことになる。だから、生まれてからすぐに人は走り出す。速度を手に入れる。そのままずっと加速していく。もっと速く。もっと、もっと速く。人が生きることは加速すること。エネルギーを速度に変えることだ。

 人は速度の中で生きている。そして速度の中で死ぬ。ただ前だけを見て走り続ける。甘えは一切ない。とても残酷な世界だ。なぜ世界はこんなにも残酷なのだろう? もっと優しい世界に生まれたかった。穏やかな時間を過ごせる世界。競争しないですむ世界。たくさんの選択肢のある世界。ゆっくりと歩くことのできる世界。もし生まれ変わることができたなら今度はそんな世界で生きていきたい。誰かと手をつないで、ゆっくりと一緒に歩いていけるような、そんな夢のような世界で暮らしたい。

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