アリーの独白
二年前。
私が十二の時、この家は空き家だった。
決別の後、私はひとりここへ来た。
湿気った埃の匂いが鼻に付く、だが広々として人目に付かず、隠れ家にはちょうどいい城だった。
私は決意と共にここに来たが、同時に不安や寂しさをぬぐえずにいた。
それは、私がいくら背伸びをしようとも未だ親を欲する幼年だという証だった。
そして私は、持ち出したありったけの財宝を金に換え、しかる後に仲間を集めはじめた。
すべては完璧な復讐のため。
ヤツらを滅ぼす、復讐のためだった。
計画は順調だった。
ひとり、またひとりと鎖に繋がれた魔女を買い上げ、わずかだが屈辱に喘ぐ同胞を解放し、戦力を蓄えていった。
だが新たな問題ができた。
私は、家族を得てしまった。
私に付き従い、そして寄り添う家族の存在に、私の中の復讐の炎はなりを潜めていったのだ。
このままでいいのかもしれない。
計画など捨てて、このままこの家族たちと畑を作り、木を伐り、スープを囲って暮らしたいと、本気でそう、迷った。
だが我々魔女はささやかな幸せさえも、いとも簡単に脅かされる。
とうとう街で噂が立ち、家を離れると決めた。
家族を連れて遠い山へ。その寒き道程において震えるカミラたちを見て、私は腹のランプに少し油を注がれた気分だった。
大丈夫だ。奴らにとって問題は私達自身ではない。不安が身近にあるということなのだ。
人気のない所にさえ構えを遷せば、多少不便にはなるが危険はない。
私は動揺の素振りを見せまいと、できるだけ力強く雪を踏みしめた。