五
今日は圭二は学校に行ったようで、本殿に一人でちょこんと座っている壱。
「ふぅ...暇だのぅ」
つまらなそうな顔で、本殿から見える木々を見つめている。
木々に止まった小鳥を呼び寄せ、手に止まらせる。
チュンチュンと鳴く小鳥の首元を指でくすぐる。
嫌だったのか、小鳥は飛び立ってしまった。
「昔ほど、人は家に籠らないのだな...。華子は働きに行き、圭二も学校とやらに行っておる...。おるのは雄二だけだが、妾の為に何かしておるようだし、邪魔できぬ...」
壱はまた大きなため息をついた。
「圭二は何をしておるのだろう...?」
一方圭二の方は、
「えー、ルイ13世は〜」
歴史の授業を受けていた。
(この時代だったら、壱様は生きているから、もしこの時代にこの国にいたら、実際に会ってるかも...)
なんて歴史と壱の人生を照らし合わせてみる。
そんな妄想をしていると、横から友達の瀬川という女子が話しかけて来た。
「ねぇ、何で最近学校休んでたの?風邪?」
「ん?いや違うよ」
この瀬川とは、高校からの友達で教科書やらを貸してくれたりする親切な生徒だ。
「何だよかった」
授業は終わり、昼休み。
別クラスの男友達の柴崎がやってきた。
「圭二〜、昼飯一緒に食おうぜ〜」
「ん」
圭二の席の周りの生徒は誰もおらず席が空いていたので、適当に座って弁当を食べる。すると瀬川も一緒に食べたいと言いだし、三人で食べることになった。
「圭二心配したぜ?一週間くらい学校来なかったからよぉ」
「まぁ色々身辺がごたついてな」
「家の方で何かあったの?」
『実は、神様が出てきて、命の契約結んだりしてたら一週間も休んでたんだよね〜』
(なんて、誰が信じてくれるんだ...)
「まぁ色々とだよ」
「変に隠すねぇ、怪しい...」
「やましいことは何もないよ、ちょっと飲み物買ってくる」
圭二はこれ以上追求されないために席を外す。
帰ってくると二人は特に話をぶり返すこともなく談笑していた。
学校も終わり、家に帰る。
圭二の家は知っての通り一大社でもある為、少し長い階段を登ることになる。
圭二は小さい頃からずっと降ったり登ったりしてきたので、まぁそれなりの体力はついている。
階段を上がりきってすぐ大きい鳥居が見えてくる。その先に本殿がある。
敷地内には、紅葉の木や桜の木、梅の木などがあり、四季を愛でるにはうってつけのスペースがあったり、池、竹が生い茂る所に一本道が通っていたりしている。
そのためか、参拝客や、写真を撮りたいというカメラ好きの人がよく来る。
その鳥居の下に壱が待っていた。
「壱様、何かしてたんですか?」
「いや、そなたの帰りを待っていたのだ」
「え?ここで、ですか?ずっと?」
「ああ、暇であった...そなたがおらぬとつまらぬのぅ...」
「はぁ...、それはそれはお待たせしました」
ぺこりと頭を下げて謝る。
「よいよい、して学校とやらはどうであった?楽しかったか?」
「いえ、毎日行ってるものなので、大して変化はないんですよ?」
「む?そうなのか...」
荷物を置いて、制服から部屋着に着替えて本殿に行き、壱と喋る。
「あ、そういえば、ここ一週間。壱様の為に休んだじゃないですか?」
「うむ」
「今日友達から、その一週間何をしていたのかって話をされまして、さすがに壱様の事について喋るのってダメ...ですよね?」
「そなたが話したいというのであれば、話すが良い、妾は一向に構わぬ」
「分かりました。では言わないでおきます」
「ん?話さんで良いのか?苦労するのではないか?ずっと隠し続けるのは」
「僕がそうしたいのです。壱様」
圭二は優しく微笑んでみせる。
「圭二っ!」
「ぅわっ!?」
急に抱きつかれ驚く圭二。と同時に壱をちゃんと支える紳士な対応。
「何だ何だ〜?妾を誰にも知られたくないと申すか〜?愛い奴よのぅ?」
なでなでと頭を撫でる壱。
嬉しいような恥ずかしいような顔をして好きにさせる圭二。
そんなことをしていると、
「あらあら仲良しでいいわねぇ」
華子が帰ってきた。
手にはスーパーの袋と買った商品がいっぱいだった。
荷物を持つため華子の方へ歩いて行く。
「帰ったか、華子」
「壱様、ただいま帰りました。今日はご飯は食べて行かれますか?」
「うむ、いただこう」
「じゃあ壱様、うちに行きましょう」
「うむ」
今日も壱は一家のご飯を食べて行った。
お風呂から上がった圭二が一大社の敷地を歩いていると、桜の木のある場所に行き着いて、桜の木の下にある木製の椅子に座って涼む事にした。
「ふぅ...」
「蒸気した頰が色っぽいのぅ、圭二や」
「っ!壱様」
上から声がしたと思ったら、壱が桜の木に登って木の幹に座っていた。
「よっ」
ふわっと木から飛び降り、圭二の隣に座る。
「いつもここに?」
「たまに登っているのだ。もう花は散ってしまったが、満開の時に登ると、それはそれは綺麗なのだ」
「ほぉ、それは是非僕も見たいですね...」
「まあこれから先いつでも見れる」
「そうですね、何てったって僕は壱様のもの、ですからね」
圭二がニコッと笑いかけると、壱もまた笑いかえす。
少しだけ、圭二は壱を可愛らしいと感じてしまった。
そろそろ戻ろうという事になり、壱は本殿へ、圭二は家に帰る事にした。
「ではまた明日、圭二」
「はい、おやすみなさい、壱様」
「おやすみ」
そう言って二人は分かれた。




