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四十三

雷切丸をそのままの状態で持ち歩くわけにもいかないので、刀袋に入れて持ち歩く。

圭二たちは山奥へと入って行き、人気(ひとけ)のないところへ来た。


「こんなところに来て、なにするの?」

「雷切丸の試し切りかな...慣れておかなきゃ」

「なるほど...」


圭二は刀袋から雷切丸を取り出して、じっくり眺めてみたり、振ってみたりと色々し始めた。


「どう?」

「んー意外と軽いね。刀って重いって聞いたけど」

「いや、単純に圭二が力持ちなだけだと思う」

「あ、そうなの?」


圭二は雷切丸でそこらへんに生えている木を切ってみた。


「よっ!」

「おぉ...あ」


切られた木はゆっくりと倒れ始めた。

が、紅のいる方に倒れてしまった。紅は倒れてくる木を結界で受け止めた。


「危ない」

「ごめん」


結界の形状を変えて、静かに木を切ると紅を避けて木は倒れた。

気が済んだ圭二は刀袋に刀をしまった。


「もう武甕槌の所に行くの?」

「まさか、この刀を手に入れたからって殺せるほど、奴は弱くないさ」

「じゃあどこに向かおうとしてる?」

「東京」


そう言って圭二は走り出す。紅も慌てて圭二について行く。


(東京?圭二の求めるものなんて何もないはず...)


福岡から東京までだいぶ遠いので、もちろん何日か掛かってしまう。

時間を割いてでも、手に入れたいものが東京にあるという事なのか、圭二は黙ってひたすら東京を目指し走った。


その途中、木々の上を伝いながら走っていると圭二が急に立ち止まり、後ろを走る紅のことも止めた。


「?」

「客だ」


そう言った圭二の目の前に、上から何かが勢いよく降ってきた。

砂煙を上げて、それは見えない。そして風によって砂煙が晴れていき、それは姿を表した。


「よぉ、大国主の神使、紅。それと、今は亡き壱神の神使、圭二」


降ってきたのは三貴子の一人、素盞嗚尊だった。



素戔嗚とは、壱と武甕槌の一件以来会っていなかった。

二人を止めて、素戔嗚は話をし始めた。


「まず、圭二」

「........」

「壱の件、本当に悪かった。あいつが死んじまったのは、俺のせいでもある...」


素戔嗚は頭を下げて、圭二に謝った。

紅は圭二の方を横目で見て、反応を伺う。

当の圭二は冷たい目で素戔嗚を見ていた。その目はおよそ神様を見る目ではない。


「あんたのせいじゃ無い」

「だけど...」

「そんな事より俺たちに何の用だ?」

「あ、ああ...大国主頼まれてんだわ、圭二に修行をつけてやってほしいってな」

「修行?」

「武神・武甕槌を殺すって話じゃないの?今のままで武甕槌に勝てるとでも?」

「........」

「ついて来なよ。短期間で強くしてやんよ」


圭二たちは素盞嗚に連れられて、島根県の出雲市にある須佐(すさ)神社に着いた。

着いた時には夜になっていた。


「今日はもう夜んなっちまったから、修行は明日から始めっぜ」

「俺には時間が...」

「急がば回れってな!...え?合ってるよね?人間の(ことわざ)だろ?」

「...圭二、今日は寝よう。どっちにしろ殺すんでしょ?」

「ちっ、分かった」


圭二は少し不機嫌そうに須佐神社の敷地内にあった木の上に登って眠った。


「悪気は無い」

「わぁってるよ、お前も修行すっか?」


紅は無言で首を縦に振って修行に参加する意思を表明した。

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