四
壱が現れてから、一週間ほど経った。
今圭二は、自室でパソコンで曲を聴いていた。するとキィっとドアを開ける音がした。
気付いて見てみると、そこには壱がいた。
「壱様...!」
「ふふふ、来てしまった。ダメだったか?」
「いえ、全然大丈夫ですよ?あ、えっと...」
どこに座らせようかとキョロキョロして場所を探していると、
「む?何をしていた?」
「え?ああ、パソコンで音楽を聴いていたんです」
「パソコン?おお、このよくわからん板か?」
「はい」
「ほぅほぅ、何を聴いていたのだ?」
「〇〇という歌手です。綺麗な声なんですよ?」
「聞かせてみせよ」
「どうぞ」
ヘッドホン設定から、スピーカー設定にして壱にも聴こえるように設定する。
『〜〜♫』
「ほぅほぅ、良い歌だ」
「でしょう?好きなんですよ。この歌手」
「ふぅむ...」
後ろで見ていた壱が、するりと圭二の首に手を回してきた。
壱は頰同士をスリスリと擦り合わせてくる。
「んぅ、うぁ、ど、どうしたんです?」
擦り合わされてうまく喋れないが、行動の謎を聞いてみる。
「........」
「........」
なぜか喋ってくれない壱。
圭二はもう好きにさせることにしたのか、黙ったまま追求しなかった。
(顔が近くなって気付いたけど、壱様、すごく肌が綺麗でスベスベする)
肌もきめ細かく、白い。
髪は絹糸のように艶やかで、まつ毛も長く顔もとても整っていて、ほのかに良い香りもする。
ずっと見ていたせいで気付かれたのか、壱も圭二を見つめていた。
「ん?」
少し微笑んだ壱の目を圭二はじっと見つめてみた。
(どうしてだろう...?こんなに綺麗なのに、目を見るととても、なんというか...嫌な感情を持ってしまう。それは、恐怖なのか、不安なのか)
「まぁ、神様の目ってそういうものなのかな...」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、あと離れてください」
「ん?なぜだ?...はっ!やはり嫌だったか!?」
「いえ、パソコンを閉じて、本殿の掃除でもしようかと...。そろそろ壱様の生活に支障を来すかと...」
「お、おぉ...何だ、そうか?では行こう」
「はい」
先に部屋から出ようとする壱の背中に向かって圭二が、
「あと、嫌じゃないですよ?」
「??」
扉付近で立ち止まって、圭二の言葉の意味を探っている壱の横を、圭二はすり抜けて行く。
「おお、そういうことか」
やっと意味を理解して、壱は圭二についていった。




