三十八
壱が死に、圭二が行方不明になって四ヶ月が経った。
例の事件から初めて、紅は一家を訪ねた。
「........」
家の前に立ち、インターホンを鳴らす手に緊張が走る。
ピンポーンっ、、、
インターホンを鳴らすと、中からはーいという声と共に、華子が出てきた。
「あらっ、紅ちゃん」
「どうも」
華子に家に上げてもらい、リビングに招かれた。
雄二はリビングにいて、二人を椅子に座らせて、例の件の話をした。
「圭二は、現在行方不明になってしまってる。捜索はしているが、未だ足取りがつかめない」
紅は俯いて、申し訳なさそうに話す。
すると、華子が口を開いた。
「知ってるわ、壱様がもうどこにもいないのも、圭二がどこかへ行ってしまったのも」
「え?」
「多分あの日が壱様が亡くなってしまった日なのね...。圭二は行方を晦ます前に私たちの前に現れて事情を話して行ったわ」
壱が消えてしまい、圭二は家に戻って二人の前に現れたらしい。
「お母さん、お父さん」
「圭二っ!戻ってきたのね?大丈夫!?どこも怪我はない!?」
「うん、もう全部終わった」
「圭二...?っ!それ...壱様の着物じゃ...」
「ああ、...壱様は、もうっ...僕、守れ...なくて...!」
「圭二...」
圭二はまた泣きだしてしまい、二人はとりあえず圭二を落ち着かせた。
圭二は落ち着いたところで、あったこと全てを話した。二人は静かにそれを聞いていた。
「そんなことが...」
「そうか、壱様は死んでしまったのか...」
「ごめん...」
「何を謝ることがある?お前は俺たちの為に壱様を守っていたのか?」
「いや...」
「だろ?なら謝るな、もう泣くな」
「っ!...ああ、ありがとう」
「これからどうするの?壱様がもういないってことは、圭二のあの神がかった身体能力はもう無いの?」
「いや、まだある。二人にはその件でお願いがあるんだ」
「「??」」
圭二は立ち上がり、二人の目の前に立った。そして頭を下げて、
「これから僕はいなくなる。死ぬわけじゃ無い。だから、俺を信じて待っててくれるかな?」
「待つ?」
「いつか帰って来るその時を、待ってて欲しい。探さないで欲しい」
圭二のその頼みに、二人はしばらく頭を悩ませた。そして、二人はお互いの顔を見て、頷きあった。
「いいわよ」
「ああ、どこへなりと行ってこい」
「っ!いいの?」
「ああ、可愛い我が子の旅立ちだ。背中を押さない親がどこにいるってんだ?」
「........」
「胸を張りなさい。決して逃げてはいけないわよ」
「ああ」
圭二は持っていた壱の着物を腰に巻き付けて、大国主に渡されていた黒い布を身に纏って外へ出た。
華子と雄二も送る為家の外へ出た。
「じゃあね、二人とも」
「うん、気をつけてね、風邪ひかない様にね、体には気をつけるのよ?」
「ああ」
「やる事やったら、ちゃんと帰って来いよ?でないと母さんが心配する」
「分かった、じゃあ行ってくる」
圭二は強く地面を蹴って家の屋根に登り、そのまま闇へと消えてしまった。
「そんなことが...」
「うん、だからあの子が何処にいても、生きているなら心配ないわ」
紅は話を終わらせて、出雲大社に戻った。
(どうやら二人の心配はしなくて良さそうだ)
「ったく、何処に行ったんだよ、圭二...」




