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三十五

武甕槌も来てしまい、戦うことを余儀無くされてしまう状況に置かれた圭二、大国主、紅の三人。


(どうする?どうする!?考えろ!考えろ!)


大国主は脳内をフル回転させてこの状況の打開策を考えるが、どの案も武甕槌に寄って壊されていく。


「もう戦うしか...でも...」

「大国主様、圭二を連れて逃げて」

「何言ってんだ紅」

「私が何重も重ねた結界を二人に張る。倒せはしなくても、足止めにはなる」

「駄目だ。逃げた方向が分かりゃあいつは雷と同じ速度で追ってくる。追いつかれてやられんのがオチだ」

「なら煙幕を...」

「あぁ!そりゃいいな!」

「じゃあ...!」

「って言うわけねぇだろがこのボケェ」

「え...」

「てめぇ置いて逃げるくらいなら、一緒に俺もここで死んでやらぁ。てめぇは俺の神使だ。能力使ってまで生き永らえさせたんだ、んな簡単に手放さねぇ」

「大国主様...」

「二度とんなこと言うんじゃねぇ、今度言ったらぶん殴る」

「うん...!」


紅は嬉しそうに頷く。今の大国主の言葉が何よりも嬉しかったのだ。


大国主と紅の戦う決心がついたところで、圭二が武甕槌に飛び掛かっていった。


「ふっ...!っ、壱様!?」

「........」


だが、それは壱によって阻まれる。


「どいてください!壱様!」

「気安く妾の名を呼ぶな」


壱に蹴り飛ばされて、圭二は床を滑りながら吹き飛ぶ。

その状況を武甕槌は笑いながら眺める。


「ふっ、どうだ人間?敬い愛している者に拒まれる気分はどうだ?」

「...待っててくださいよ、今あんたをぶん殴りに行きますんで」

「口の減らない...。む?」

「おらぁっ!」


隙だらけの武甕槌の顔面に蹴りを入れる大国主。だが、受けた武甕槌は何事もなかったかの様に立ったまま、


「大国主、お前はふざけた態度はしているがふざけた事をする奴じゃないと思っていたぞ?」

「事情が事情なんでね、お前さんは俺と俺の神使がお相手させてもらいますわ」

「愚か者めが」


蹴った足を捕まれ大国主はそのまま投げられる。

紅は投げられた大国主を受け止め、その後自分が飛びかかる。


「大国主の神使も人間だったな。どれ、どんなものか見せてみろ」


紅は結界を手に張って貫通性を強めた拳を武甕槌に放つ。

これ受けるとまずいと本能的に察し、武甕槌はその拳を避ける。カウンターに殴りつけようとするが、間に入って来た大国主に防がれる。


「むっ?いいチームワークだ!」

「日本の神が横文字使ってんじゃねぇよ。バーカっ!」


武甕槌を思いっきり蹴り飛ばす。がそれは避けられた。そして、


雷流(かみなが)れ」

「ぐぁああああ!」

「うっ...!」


武甕槌は自分の体から雷を発して二人を吹き飛ばす。


「なんだよ今の...」

「結界張り遅れた。いつもの以上に速く動かなきゃ...」

「大丈夫か?紅」

「次はいける」

「よっしゃあ、やろうぜ」

「そういえば、圭二の方は大丈夫かな?」

「あいつがやるっつったんだ、大丈夫だろ」




一方その頃、圭二と壱は未だ戦闘を始められていない。

理由は圭二が壱と戦う覚悟がまだ出来ていないからだ。当たり前だ、まさか操られて戦う羽目になるなんて考えてなかった。圭二はどうするか悩んでいた。


(どうしよう?このままってのも駄目だし、二人は武甕槌の方で手一杯。僕がやるしか無い...。でも戦いたくない、どうしようどうしようどうしよう!?)

「何を考えているか知らないが、来ないのならこっちから行くぞ!」

「くっ!」


壱は躊躇いなく飛び掛かってくる。

圭二は不本意に相手をする。そして戦いながら壱に呼びかける。


「壱様!壱様...目を覚まして、うおっ!ください!」

「やかましい人間だ、黙って戦え!」

「くそっ!」


壱は圭二の右腕を左手で掴み、空いてる右腕で何度も殴りつける。

怯んだところに圭二の側方に立ち回り、脇腹を回し蹴りして吹き飛ばす。


「ごふっ!」


第一殿の壁を破壊して外へ吹き飛ばされた圭二は、蹴られた脇腹を抑えながら立ち上がる。


「その程度で妾と対峙しようなどと...侮辱するのも大概にしろ、人間」

「本当に忘れてしまわれたのですね。壱様」

「そなたは先程から妾を知っている様に話しかけてくるが、誰なんだ?そなたは」

「僕は、一 圭二。あなたの神使です」

「おー!圭二か!」

「思い出して...ぐっ!?」

「知らん」


腹を蹴られてまた吹き飛ぶ。

吹き飛ばされたあと、若干壱にイラついている圭二がいた。

でも、一つだけ疑問が出来た。


(さっきから攻撃を受けていて分かったけど...)


圭二はよく壱と組手をしていて、コテンパンにされている。

それはまぁいいとして、圭二の気にかかった点は、その時と同じ痛みという事だった。

つまり、


(加減している?完全に僕を忘れているわけではない...のか?)


そう、圭二を完全に敵として扱っているのであれば、圭二は既に立っているのがやっとくらいの攻撃を受けている。

なのにそうなっていない。

その理由は、壱が自分にずっと喋りかけている圭二を敵ではないと本能的に勘付いているのか、武甕槌の暗示的な何かが完全にかかりきっていないのか、そう考えられる。


「ってことはさぁ...」

「?」

「希望がちょっと、見えて来たんじゃないんですかねぇ?」



圭二は、そう言ってニヤリと笑った。




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