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二十五

自室にある鏡の前で、圭二は何度も服の着せ替えをしていた。

選んで着ては脱ぎ、着ては脱ぎ、そして悩む。そんな事を繰り返していると、華子が部屋に入ってきた。


「何してるの?」

「んー?服選び」

「なに?今日どっか行くの?」

「うん、壱様とデート」

「へぇ〜ほぉ〜ふぅ〜ん」


聞いた華子はニヤニヤして圭二を見てきた。


「何さ」

「いや別に〜、よかったじゃん」

「うん。あ、ねぇ服どれがいいかな?壱様どんな服装が好きかな?」

「あんたなら何だっていいんじゃないの?」

「そんな適当な...」

「自分で選んでこそよ。バイバーイ」


そう言って華子は戻ってしまった。

圭二は結局自分のお気に入りの服装で行くことにした。


結局圭二は、Tシャツの上にカーディガン、下はデニムのパンツという服装にした。万が一壱が飛んでいっても付いていけるような動きやすい服装だ。


「圭二」


鳥居の下で待っていると、壱が後ろから呼んできた。

マキシスカートにゆるめのトップスを着た壱が小走りでやってきて圭二の前に立つ。

圭二はいつも着物の壱が今時の女の子の様な服装をしている事とそれが似合っていてすごく可愛い事に驚き過ぎて、声が出ない。


「えっと...、壱様その格好は?」

「む?ああ!これはな、華子がたまには着物以外を着てみたらどうかと、買ってくれたらしい」

「そ、そう...ですか」

「うぅむ、あまりこういった服は着ないのだが、どうだ?似合っておるか?」


壱は圭二の前でクルッと一回転して見せた。圭二があまりにも何も言わない為、少し不安そうな顔をしている。

それに気づいた圭二は慌てて、


「似合ってますよ、とても可愛らしいです」

「ほんとか?ほんとか?んふふっ!」


壱は圭二に褒められて、照れながらもすごく嬉しそうにしている。


「じゃあ、行きましょうか」

「うむっ」


石段を降りた後、壱が飛ぶそぶりを見せたので、慌てて止める。


「なんだ?」

「今日は人のペースで出かけませんか?」

「?、わかった」


壱は不思議そうな顔をしたが、すぐ納得して歩きだしてくれた。

ここで圭二は一つ疑問に思った事を質問してみた。


「あの、壱様って今こうして僕に見えてますけど、他の人には見えてるんですか?」

「ああ、見えておるよ。ちゃんと認識できる様にしてある。というか学校に行った時もそなたの友人たちには見えていたろう?」

「あーそうでしたね...」


圭二の心配も杞憂に終わったところで電車に乗って観光スポットに行こうという事になった。


壱は電車にあまり乗らない為、使い方が分かるかと聞いたところ、


「任せろ。この前そなたたちが入っているのを見て覚えた」


と言って任せてみた。

壱は切符を買ったり、カードでタッチすることもなく自動改札機に突っ込んで止められた。

壱は行く手を阻まれ、真横にいた係員を睨みつけた。係員は自分のせいですか!?と言った様な顔をして困っていた。

見かねて圭二が係員に謝りながら壱を引き戻す。


「いいですか?壱様、まず切符を買わなければあの機械に止められてしまいます」

「なら潰す」

「ダメです!本来を切符を買わなければいけないんですけど、今回は僕のカードで通りましょう」

「何だそれは?」


壱は圭二の取り出したICカードを不思議そうに見る。


「このカードの中にお金が事前に貯めてありまして、あの機械の光っているところにタッチすると通れるんです。まぁ切符みたいなものですよ」

「ほほぉ、やらせてくれっ!」


壱は早速カードを改札にタッチしに行った。

難なく入れて壱は目をキラキラさせた。

圭二もカードを壱から返してもらい、やっと駅のホームに入った。

今回は観光地に行く為には特急の電車に乗る必要があった。

電車に乗り込み、二人で席に座る。


電車が動き出してあまりの速度に、


「ほぉーっ!速いなぁ!この前とは大違いだ!」

「壱様、声!声!しーっ!」


興奮した壱の声が大き過ぎて周りの人たちに少し笑われた。

そんな圭二の気持ちを知らずに壱は外の景色の流れの速さに感動していた。


「鉄の塊のくせに、こんな速いとは思わなかったぞ」

「人類の叡智ですね」


そんな会話をしていると、停車した駅で杖をついた老婆が乗車してきた。

席はみんな座っていて、立つしかない事を察して手すりに掴まった。

すると圭二が席を立ち、老婆に席を譲った。老婆はお礼を言いながら、壱の隣に座る。


「ごめんなさいね、せっかく二人で座っていたのに」

「良い良い、年端も行かぬ娘には優しくせねばな?」

「娘だなんて嬉しいこと言ってくれる子だねぇ」

「いやいや、妾からしたらそなたら全員、(わらべ)同然だ」

(笑うな、笑うな俺!)


圭二は笑いを堪えながらポーカーフェイスを崩さない様に踏ん張った。


目的の駅に着いて、ホームを出ると、和風な街並みが続いていた。

ビルなどは見えず、静かながらも観光客は多く賑わいを見せていた。


二人は手を繋ぎながら街を散策する。

歩いているだけで楽しくなってきてしまう様な街で、道端には用水路が流れていて、そこには鯉が泳いでいた。

壱がとても幸せそうに街行く人を見ているので、圭二は気になって聞いてみた。


「壱様、なんか嬉しそうですね?」

「ん?ああ、まぁな」

「なぜですか?」

「いや、人というのはとても美しいものだと思ってな」


壱が立ち止まって周りを見渡す。

圭二もそれにつられて周りを見る。


「見ろ圭二。ほんの数十年前まで、ここは焼け野原だったこともある。なのに今はこんなに美しい場所になった。人々が寄り添い、子供は笑いながら駆け回る。老人がいて当たり前、例え血が繋がってなくとも手を取り合い助け合う。人間とは美しく気高く、そして素晴らしい生き物だと思う」

「そうですね...。僕も、そう思います」


心地よい風が吹き、壱の長く綺麗な髪を揺らす。壱の幸せそうに微笑む横顔を愛おしく見つめる圭二。


「僕も好きです」

「ん?」

「どんなに傷付いても立ち上がり。どんなに汚くても手を差し伸べ。どんなに辛くても立派に胸を張って生きる彼らが、大好きです」

「そうか...。妾もだ」



二人はその後川床のあるお店に入って、お茶をした。

宇治金時のかき氷に三重の赤福を乗せた赤福氷なるものがあったので、それを頼んで食べると、


「うまいっ!こんなに美味いとは思わなかったぞ!」

「気に入ってくれてなによりです」


壱が予想以上に気に入ってくれて、圭二も嬉しそうだった。


二人は夕方頃に家に帰ってきた。

帰ってきた頃には、華子がご飯を作っていて、久しぶりに壱も一緒にご飯を食べるという事で、圭二の部屋でご飯が出来るのを待つ事にした。


外にいた雄二に圭二達にお客さんがいると聞いたので二人は部屋に行く前にリビングに寄る。

どうせ大国主だろうと思って行くと、


「あらっ!圭二に壱。お帰りなさいですわ。遅いですわよっ」




何故か天照がいた。




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