二十二
壱は全速力で島根から三重まで飛ぶ。
三重の伊勢神宮についたのは、夜の9時だった。
伊勢神宮の鳥居の前に荒々しく着地して、歩いて天照がいる内宮へ向かった。
ところ変わって、天照大神を祀る皇大神宮。
「ん...っ!ここは...!?」
「気付きましたわね。調子はどう?」
動こうとしても手が鎖で繋がれ動けない。圭二は壁に貼り付けられていた。
「何が目的だ?」
「あら?さっきまでの敬語はどうしたの?」
「こんな事が神様のやる事とは思えないな」
「あら手厳しい。でもその反抗的な態度が後から従順になると思うと、ワクワクするわ」
「あぁ?」
圭二は意味が分からないといったような顔をする。
天照はニヤリと笑い、
「上書きですわ。他の神に仕える神使の記憶を消して、自分の神使にするのよ」
「...そんなこと」
「出来るのよ。私たちにはね...」
そう言って、天照は圭二の顔を手で抑えた。
「やり方は簡単。ただ口付けをするだけ...」
「や...やめろ!」
「動かないでちょうだい」
あともう少しでキスをされるその時、皇大神宮の御扉が吹っ飛んだ。
「っ!?」
「ちっ」
圭二は驚きそちらを向き、天照は残念そうに舌打ちをした。
吹っ飛ばしたのは、
「壱様ぁ!」
「圭二、無事か?」
「意外に早かったですわね、四苦八苦してくれるかと思いましたのに」
「...天照、そなた、無事で済むと思うなよ」
「どうなるのかしらね?」
天照がそう言った途端、壱が突進して天照の腹を思いっきり殴る。
「ぐっ...ああっ...!」
殴られて内宮をめちゃめちゃにしながら外まで吹っ飛んだ天照は、地面に這い蹲り痛みに耐える。
「相変わらずの馬鹿力ですわね!」
「天照、そなた昔妾にあんな目に合わされておきながら、まだこんな事をするのか?」
「あら、あれで最高神である私に勝ったつもり?」
「懲りない奴だ...」
壱の猛攻に、天照はうまく避ける。それにより、伊勢神宮は壊されていく。
「ちょっと、私の神宮壊していくのやめてちょうだいよ」
「そなたが避けるからだ。大人しく殴られたらどうだ?」
「やぁよ、痛いもの」
二人はいつの間にか圭二のいるところまで戻って来ていた。
「壱様!」
「圭二、もう少し待っておれ。今こいつを...」
「圭二、私も心配してちょうだいよ」
「あんたは別に」
天照は、少し寂しそうな顔をする。
でもすぐに立ち直り、壱の方を向く。
「まぁそれは置いておいて。随分とめちゃくちゃにしてくれたわね〜」
「........」
「しょうがない。使いましょうかねアレを」
そう言って天照は社に入っていった。
そして何かを持って出て来た。それは布が被さっていて見ても分からない。
「はーいお待たせしましたわ。再開しましょう」
「何を持って来た?なんだそれは」
「私の武器よ。さぁかかって来なさいな」
(あからさまな挑発...。それにその武器で攻めて来ようともしない。なら...)
壱は天照の方に走るのではなく、圭二の方へ走った。
圭二を解放して逃げるつもりだ。
その思惑に気付いた天照は焦った。
「ちょっと!このまま逃すわけないでしょ!」
天照は壱の前に立ちはだかった。
壱はそれを殴って通ろうとして拳を固め、天照を殴ろうとした。
その時、
「なに!?」
天照を殴ったはずの壱が逆に後ろへ弾かれた様に飛んだ。壱の口からツーっと血が流れた。
何が起きたのか分からず、天照以外は突然の事に驚いている。
「何をした...?」
「さぁね?もう一回来たら?」
天照は壱にまたかかってくる様に言う。
明らかにまた同じことが起こる。それが分かっていても、後ろの圭二を救うには謎を解かなきゃいけなかった。
壱はもう一度椿に攻撃をした。
「くっ」
「はいざんね〜ん」
また弾き返される壱。
だが、壱の手には被さっていた布が握られていた。
中身を知って壱は驚愕した。
「それは...」
「あーあ、埃被ったりするの嫌だから被せていましたのに...」
天照が手に持っていたのは、
三種の神器のうちの一つ、八咫鏡だった。




