十六
圭二は、制服に着替え学校へ向かう。
今日は、紅を連れて。
「いってきまーす」
「行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
華子に見送られて、二人で学校へ向かう。
紅は何度か登校日ではない日に学校へ訪れ、編入試験、制服採寸、入学手続きなどを全て終わらせて、圭二の学校の生徒として今日初めて登校する。
すると、圭二は紅がネクタイを締めていないのに気付いた。
「紅、ネクタイは完全に締めなくてもいいから、付けておかなきゃ」
「結んだ事ない」
「え?そうなの?じゃあ貸して、やったげる」
「ん」
圭二は器用に紅にネクタイを付けてもらった。
「ありがとう圭二。器用」
「ん?ああまぁね」
「そなたら早よ行かんか」
いつのまにか壱が背後にいた。
急かされて学校へ向かう。
学校が近くなっていく度にこちらを見てくる生徒が多くなっていく。
(まぁ白髪だし、めっちゃ肌白いし、そのくせ目は紅いし、しかも...ちょっと可愛いんだよな〜)
「何見てる?圭二」
「いや、そういえば何組とか聞いた?」
「圭二と同じ」
「あーそう」
学校に着き、紅は先生に呼ばれていたみたいで職員室に向かう。
不安だったのか圭二も付いてきてと頼まれて、圭二も付いていく。
呼んでいたのは圭二のクラスの担任だった。
「お、来たか。一もよく来た」
「どうも」
「........」
相変わらず適当に喋る担任だと思う圭二。
「とりあえず、そろそろチャイム鳴るから、俺が紹介してから教室に入ってくれや、んで...一も一緒に入るか?」
「何で?嫌ですよ僕入学式からいましたもん」
「だよなぁ。あ、お前の隣だから席、お前助けてやれよ〜」
「あーい。じゃあ紅、僕先に行ってるから、ちゃんと自己紹介出来る?」
「うん」
先に教室に行くと、すでに紅を目撃した生徒たちが一緒に登校してきた圭二に質問攻めして来たが、このクラスで後で来るからと言ったら、みんな納得して散って行った。
ガラッと担任が入って来て、HRを済ませて、遂にクラスみんながお待ちかねの転校生の紹介に入った。
「はいじゃあ入ってくださ〜い」
扉をあけて紅は入って来たが、入った瞬間みんながざわめいた。
紅は相変わらず無表情で教壇に上がり、黒板に名前を書いて自己紹介を始めた。
「紅」
「........、おぃ嘘だろ!?」
まさか一文字自分の名前だけで自己紹介を終えた紅に、思わず圭二は席を立って叫んでしまった。
「はい、えー皆さん紅さんと仲良くするように」
「それであんたはスルーでいいのか!」
「しょうがないだろ〜一と苗字が同じなんだから」
「え、あ、そう...。いや、にしてもじゃないか?」
「はいじゃあ、あのうるさいやつの隣の席座って、次の授業に遅れないように〜」
逃げるように教室から出て行った担任。
取り残されたクラスのみんなは一気に紅の元へ群がった。
「紅ちゃんって言うの?」
「どっから来たの?」
「一と苗字同じってことは親戚?」
「結婚してくれ」
「肌白〜い」
「髪も〜」
「俺と同じ墓場に入ろう」
「目ぇ赤いね?何で〜?」
「可愛い〜」
質問攻めにされて戸惑う紅。
「どさくさに紛れてプロポーズしてるやつ誰?」
ずっと聞いてて圭二は気になる質問をピックアップしていた。
ついでに犯人は柴崎だった。
「出雲から来た。目が赤いのは、分からない。あと結婚はしない」
「くっそぉ!!」
(当たり前だよ柴崎。だってその子神様が好きなんだもん)
隣の席で頬杖を付いて外の景色を見ながら騒がしい時間が過ぎ去るのを待つ。
やがてチャイムが鳴り、みんなは自分の席へ戻って行った。
授業が始まり、圭二はチラチラと紅を気にかけていた。
(紅の昔話から考察すると、紅は中学二年生あたりから学校へ通っていなかった筈だけど、授業について行けてるように見える。どうなんだろ)
視線に気付いた紅が圭二の方を見た。
「何?」
「あ、いや、授業ついて行けてるの?」
「うん」
「どして?高校行くの初めてじゃないの?」
「大国主様が教えてくれた」
「あー...そう」
大国主が紅を引き取ってから、一応教養を身につけさせていた様だ。
高校の問題には付いていける様にはしてくれていたらしく、ノートを見るとちゃんと問題は解けていた。
学校が終わり帰り道、今日初めて高校に通った感想を紅に聞いてみた。
「楽しかった」
「本当?」
「うん、あんなに人がいたの久しぶり」
「へぇ...ん?久しぶり?」
「いつも出雲大社いたから」
「あー...人気だもんねぇ」
大社に住んでいる者同士、共通の悩みがあるのだ。大晦日、元旦は人でごった返すので圭二の父親は忙しそうにしているので、圭二もそれを手伝っている。
「うまくやって行けそう?」
「うん頑張る」
家に帰ると壱や華子が迎えてくれた。
とりあえず初めての高校生活のスタートは、良いスタートを切ったと思われる。




