十五
「へぇ、そんな事が...」
「私には、大国主様しかいない。あの人の為なら、私は何だってする」
「そっかぁ...何だか似てるね。僕達」
「?」
「僕も君と同じくらい大きな病気にかかって、壱様に助けてもらった。そして今こうしてあのお方の神使をさせて貰ってる。僕も壱様の為なら何だってするよ」
お互いに微笑む合う。
すると、話を終えた壱と大国主が帰ってきた。
「へぇ〜、何だぃ何だぃちゃんと仲良くやってんじゃねぇか」
「大国主様!」
大国主に走って近づいていく紅。
お尻に尻尾が見える。しかもそれは凄い勢いで振られている。
でも顔だけは無表情。
「仲良くやれているようで何よりだ」
「ええ、良い話も聞けましたし」
「ん?ああ二人の話か」
「知ってましたか」
「ああ、大国主は優しい男だからな」
「ですね、分かります」
近付いて来た紅の頭をワシャワシャ撫でる大国主。嬉しそうにそれを受け入れる紅の顔は、もう少しで笑顔が見れそうだった。
「んじゃ、よろしく頼むぜぃ、壱」
「ん?ああ、分かった」
「何の話です?」
「紅をしばらくの間こっちに引き取るのだ」
「えぇ!?紅をですか!?」
先ほど大国主との話を聞く限り、紅が大国主との別行動を承諾する筈がない。
チラッと紅を見る圭二。すると、
「大丈夫。私も納得している」
「えぇ...そうなの?」
「まずいの?」
「いや、紅が大丈夫ならいいけど...」
「んじゃ、紅を頼んだ。俺ぁどっか適当に遊んでるわぁ。紅、良い子にしてんだぞ〜」
「うん」
そう言って大国主は本当にどこかに飛んで行ってしまった。
取り残された壱、紅、圭二はとりあえず桜の木の下で作戦会議を始める。
壱は興味無さげに木の上へ登ってしまった。
「えっと...とりあえず、どうしようか、紅は何かしたいとかある?他にもどこで寝泊まりするかとか、日常生活はどうするかとか...」
「寝泊まりはそこらへんでする。日常生活は適当にどこかフラフラしてる」
「え!ダメだよそんなの!危ないし...」
「いつもそうだった」
「それは大国主様が側にいたからでしょ?今はいないんだから」
「........」
大国主がいないと言った瞬間、紅は少し寂しそうな顔をして、シュン...と落ち込んでしまった。
それを木の上から見ていた壱が、
「あーあ〜凹ましおった〜、圭二は残酷だのぅ」
「え?え?え!?いやっ!違うよ!?もう二度と会えないわけじゃないんだからさ!」
「大国主様...」
圭二が一つ言葉を言う度どんどん紅は落ち込んでいってしまった。
圭二は一旦気を取り直して、話し合いを再開した。
「ごほんっ!気を取り直して...。寝泊まりは、うちの家でしてもらう。これはうちの両親に言っておくから安心して」
「華子は許すのか?」
「娘を欲しがっていたので、多分快く了解してくれますよ」
「なら良いが」
寝泊まりする場所は決まり、あとは日常生活だが、誰の付き添いも無くフラフラされるのは、神使と言えど不安だ。
(どうしようかな...)
壱と行動を共にさせても良いが、壱の神使は自分だという嫉妬心が勝り、それは憚られた。
すると、上から壱がある提案をして来た。
「学校に連れて行けば良かろう」
「え?」
「だから、圭二と行動を共にすれば圭二の不安は解消されるであろう?」
「良いのでしょうか...」
「構わぬだろう。何を不安視する?」
「いえ...」
少し間を空けて、壱に質問する。
「壱様は、他の娘と行動を共にしている僕に、嫉妬してはくれないのですか?」
紅はずっと話を聞いていたが、今この時だけは目を見開いて喫驚の表情を浮かべて圭二を見ている。
そんな問いに壱は木の枝に上手くうつ伏せで寝そべり圭二に向かって手を伸ばす。
圭二はその手に愛おしそうに顔を擦り付ける。
「そなたは妾のもの」
「はい...」
「そなたと妾の間には、誰も介入出来ぬ」
「はい...」
壱は優しい笑顔を向けながら、圭二の頭を優しく撫でると、木の上で昼寝をしてしまった。
「圭二って...策士?」
「何のことでしょう?」
圭二は悪戯っぽく笑ってみせた。
圭二は、両親に訳を話して紅をしばらく泊める話をしたところ、
「いいじゃなぁ〜い!紅ちゃんって言うの?私娘が欲しかったのよ〜!」
と言って紅をえらく気に入ったらしい。
最初は白い髪に紅い目をした紅を不思議そうに見ていた両親だが、すぐになれた。
紅を学校に通わせたいという話をしたところ、
「まぁなんとかなるんじゃないかしら?頑張るわ」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
紅もお辞儀をして御願いをした。
それを見て、任せて!と張り切った華子だった。本当に娘が欲しかったのだろう。
こうして、しばらくの間紅が圭二の家で厄介になる事になったとさ。
しばらくは、紅の学校生活やらを書いていこうかと思います。
よろしくお願いします。




