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Juego de la muerte(準長編)  作者: かいり
9/10

「どこかしら〜?ヘタレ〜?」



ザアザアと雨が降りしきっている。ミラの陽気な声は、俺を探している。

俺は息をひそめながら、チラリと見た。ミラは、ビルの隙間を覗き込みながら歩いていた。

かれこれしばらく、こうしてかくれんぼを続けている。もちろん、見つかったら殺されるデスゲームだ。



「ここかっ?!……うーん、違う」



ミラは、殺すのが好きだと言っていた。つまりそれは報酬などどうでも良くて、ただただ殺したいから殺してるだけ………ということなのだろうか。



『さっきの奴も、ゲームに乗じて私を殺そうとして……』



何が狙われてるだ。ゲームに乗じて殺してるのはこいつじゃないか。俺は殺人鬼と行動していたっていうのか。

双剣を握る力が強くなる。小刻みに拳が震える。


俺はミラを殺すべきなのか。殺さなければ殺される。

だが、戦闘経験の無い俺があいつに勝てるのか?

一番の隙は、あの馬鹿でかい銃を撃った後だろう。あいつ自身も分かっているはずだ。

その裏をかいて、他のタイミングを探るべきなのだろうか……。



「みーつっけたっ!!」






―――――――ドォオオン






間一髪で直撃は免れた。しかし爆風で吹っ飛ぶ。壁に激突した。

最悪だ。こんな路地裏で見つかるなんて。深く考え込みすぎて、全く気付かなかった。

砂煙が辺り一面を覆い込む。両側のビルは半壊し、今にも崩壊しそうだ。

何とかしてここから出なければ……だが、他に抜け出せそうな道はない。


こうなったら…………!


俺は正面に向かって走り出した。

煙を抜ければミラがいるだろう。だがそんなこと言ってる場合じゃない。姿が確認出来ない今がチャンス。


こんなヘタレが真正面から来るなんて、思わねぇだろ!!



「――――ッあッ!!!」



煙が無くなったその直後、ミラが現れた。驚いているミラの顔に、俺は剣を突き立てる。ミラはギリギリでかわした。

後ろに跳躍したミラを追う。雨のせいで目を細めた。それでも逃したりしない。



「フッ……やる気になったみたいね?」



ミラは不敵に笑った。水しぶきをあげて着地し、こちらに駆けてくる。

俺は剣を水平に振った。ミラは身をかがめて避ける。拳が俺の顎を殴り上げた。頭に衝撃が走る。上を向きながらも、俺は腕を縦に振った。直後にその振った右手から、スルリと剣が奪われた。

やばいッ………!



「ホラッ!!!」



下から上に刃が右半身を走った。斬られた皮膚から血が飛び出す。

俺は左に飛んだ。ミラは虚空を裂く。

そのまま走り出す。雨粒が傷にしみるが、耐えるしかない。


武器を奪われた。丸腰であいつに勝てるわけがない。

こうなったらもう、ゴールするしかない。

幸い、ミラから逃げつつも学校に近付いていたので、あと少し走ればすぐ着く。

だから間に合えッ……!俺……!



「―――――馬鹿ねぇ」



そんなはずは無いのに、耳元で囁かれた気がした。もう辺りを確認する暇もない。道の先に学校の門が見えた。

あそこにたどり着ければ……俺は………!





「じゃあね〜」






あと百メートル。

それで学校にたどり着くという距離で俺は。











足を滑らせてコケた。












――――――――ドォオオン










爆発音。顔をすぐさま上げると、学校の門は煙を上げて半壊していた。

とにかく俺は考えるより先に、駆け出していた。

濛々と上がる煙の中に飛び込む。びちゃびちゃになった土に顔からダイブする。



「おめでとう。あなたが一番よ」



声をかけられた。見上げると、黒髪の女子が立っていた。目が合うなりニコリと笑う。



こいつ、どこかで―――――。



「さて。じゃああなたがゴールしたし」



女子はパチンと指を鳴らした。直後に女子の後ろに、少年が降ってくる。

武器を渡してきた、あの少年が。

少年は一礼した。



「残ってる子を殺してきてね」

「了解でーす!」



元気良く返事をすると、少年は学校から飛び出していった。

とっくのとうに煙は晴れていて、少年が向かう先にはミラがいた。ミラは向かってくる少年に銃を構えた。







―――――――パーンッ







「………え…………?」



一瞬のことすぎて分からなかった。

気付いたら、少年は拳銃を構えていて、ミラは心臓を撃たれていた。ミラの体がゆっくりと倒れる。



「あなたも本当に運が良いわね。転んで銃弾を避けるなんて」



肩にポンと手を置かれる。恐怖で体が凍りつく。

とても振り向けなかった。

今、思い出したんだ。

黒髪の長髪、死んだように白い肌、生気を感じさせない雰囲気。




こいつ、俺が目覚めた時にいた"首吊り"だ。




「どうしたの?そんなに青ざめた顔して」



女子が俺の顔を覗き込む。黒い瞳は、完全に固まった男を映し出した。

………俺は殺されるのか……?



「大丈夫よ。あなた一人を死なせはしないわ」



女子が俺を抱きしめた。生まれてこの方母さん以外に抱きしめられたことなんてない。

普段なら喜ぶところだろうが、全く喜べなかった。むしろ嫌だ。

誰か………助けてくれ。



「教えてあげるわ。何故こんなゲームを企画したのか」



女子は耳元で静かに囁いた。



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