表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Juego de la muerte(準長編)  作者: かいり
8/10

テレビではよく、刑事もののドラマなどで死ぬシーンを見る。しかしどれも、どこかリアリティが無かった。

これは違う。



人が二人、本当に死んでしまった。



火薬と鉄とほこりっぽいにおいが入り混じる。風が吹く度に目をこする。

夢ならば醒めろ。



「ふー危なかった………」



煙の中からミラが銃を肩に乗せ、こちらに歩いて来た。灰色に浮かぶ赤毛は、とても目立つ。

ミラは俺を見ると、嫌そうな顔をした。



「何………アンタのその顔」

「二人共……大丈夫ですか?」



龍明が俺の後ろからひょっこり顔を出した。ミラも龍明も体中ボロボロで、出血もしている。

一目で激戦だったと分かる。もし俺があの時アリアを殺していなければ、きっと俺達が死んでいただろう。

だから、だから。




仕方ないよな………?




「生きてたのね。アンタも」

「ええ………貴方のお陰です。有難うございます」



龍明が軽くおじぎをする。俺はぼんやりと思った。

人を殺してお礼を言われるなんて、夢にも思わなかったなぁ。



「でも………胸を貫かれたのにどうして……?」

「えっアンタやられたわけ?弱いわね〜」

「いえ、僕じゃなくて彼です。確実に刺されていたはずなのに……」

「傷すら無いわよ?」



ミラがじろじろと俺の胸を見る。時折さすったりしてみる。しかしどこにも穴はない。

俺にも分からない。だが今はそんなことどうでもよかった。

俺が回復しなければ………アリア達は死ななかった。



「……アンタさっきから暗いんだけど」

「どうかしましたか?」



ミラはまた嫌そうな顔をし、龍明が心配そうに見る。まるで今まで何事もなかったかのように。二人共、遠くの存在のように思える。



だからきっと。





「…………このゲームって、"人殺しゲーム"なのか?」





こんな疑問を持っているのは俺だけだろう。




沈黙。龍明は目を見開き、ミラは薄く笑みを浮かべていた。

しかしやがて吹き出す。



「アッ………ハハハハハハ!!!」



ミラはお腹を押さえて笑い出した。体を折り、大爆笑している。

龍明はそんな様子を、凝視していた。俺は今更、驚きもしなかった。



「いつっ……気付くのかと思ってたけど……アンタ気付くの遅すぎっ!!アッハハハハハハ!!」



ミラは笑い疲れると、涙を指で拭った。満面の笑みで俺を見る。瞳は黄色い光を放った。



「鈍感なのね〜、アンタ」

「ミラ……さん?」

「ああ、アンタも違和感あったかもしれないけど、コイツ、ゲームの本質分かってなかったのよ」



龍明は再び目を見開いた。

やっぱりか。最初に出会った少年は、最後に何かを言おうとしてた。

あの時追いかけてでも聞くべきだった。ミラにもしつこく追及すべきだった。

でも、あまりにも状況に追いつけなくて、どうにかなると思っていて、結局聞かなかった。


……もしかしたら、心のどこかでは分かっていたのかもしれない。でも認めたくなくて、避けていたのかもしれない。



「このゲームはね、学校にたどり着けばいいの。一番最初に着いた奴に報酬は与えられるわ」



そしてその為に、殺し合いをしてもいいゲームなのよ。



ゴロゴロと空が鳴った。日差しが無くなり、辺りが薄暗くなってきた。雨のにおいがする。

予想通りの返答なのに、衝撃を受けたような感覚が生まれた。

この双剣は、誰かを殺すために渡されたもの。ミラの銃も、龍明の大剣も。



「でも………ならなんで俺達と行動してるんだ?」

「たしかに一番に着いた奴が報酬を貰える。けれど誰も、"一人に"だなんて言ってないでしょ?」

「そういうことです。仲間が多い方が、襲われた時に安全ですし」



龍明も頷く。なるほどたしかに。一緒にゴールすれば問題無いのか。

それでも人間は欲深い。だからこうして争いが起きてしまった。









「………っていう設定にしたの」










――――――――グチャッ







赤い液体が飛び散った。頬に血がこびりつく。

目の前で起きた状況に追いつけなくて、頭が混乱した。




龍明の胸に、ナイフが突き刺さっている。




そしてそれを持っているのは、ミラ・L・クラウレス。





「――――――………え?」



龍明が後ろに倒れる。

何が起きたか分からない、というような表情で、口をパクパクと動かしてる。しかし声は途切れ途切れで、全く伝わってこない。

ミラが龍明に、もう一本ナイフを突き立てた。鋭い刃は、彼の喉を貫いた。龍明が動かなくなる。



「こうすれば、警戒心が解けるでしょ?」



返り血を浴びたミラは、俺に銃口を向けた。俺はすぐさま横に跳んだ。前転をして起き上がる。双剣を構えた。



「ハハッ!撃つと思った?こんな近くで撃つわけないじゃん!」



ミラが銃口を地に着ける。

ポツリと額に何かが当たった。直後に大量の雨粒が降ってくる。

ミラは舌打ちをした。



「雨か………まあいいわ」

「俺を……殺すのか?」

「ええ。もちろん」




私、殺すの大好きだから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ