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Juego de la muerte(準長編)  作者: かいり
6/10

気が付くと、太陽に照らされていた。瞼を開けた途端、強い日差しに目を細める。

今は夏なのか……?でも風は冷たい。なんだか心地良くなってきた……。



「二度寝するんじゃないわよ」



声に腹パンされた。咳込みながらまた目を開けると、太陽をバックに女の顔が映り込んだ。

後光が差してるみたいだ………こいつは女神か……?赤毛の女神………。



「――――ってミラさん?!!」

「えっ今気付くわけ?」



ガバリと起き上がった。ミラもそれに合わせて顔を引っ込める。

赤いポニーテールに黄色い目………たしかにミラだった。

あんなに起こしても起きなかったミラ。大量の睡眠薬飲まされて生死が不明だったミラ。

俺はミラの肩を掴んだ。



「ミラさん大丈夫なのか?!薬は?!」

「へっ?大丈夫よ?ていうかアンタこそ大丈夫なわけ?」

「俺?」

「すぐに解毒薬を飲ませたので大丈夫です」



ミラでもなく俺でもない第三者の声。振り向くと、茶髪の青年が立っていた。背中にはデカい剣をぶら下げている。

………誰だ?



「コイツがアンタを助けてくれたのよ」

「えっ」

「初めまして。僕は李龍明と申します」



ペコリと丁寧にお辞儀した青年『李龍明』。つられて俺もお辞儀する。

助けてくれた……?たしか俺、弓士の女子と戦ってて……で………。

あ、思い出した。殺されそうになったんだ。毒矢で。

その時に助けてくれたのか……。でもじゃあ………もうあの女子は………。



「悪い、助けてもらった時のこと全然思い出せなくて……」

「いえ。貴方も意識を失っていらしたので」

「実は私もさっき起きたのよねー」



パクリとサンドイッチをかじりながら横を通り抜けるミラ。

ミラって見る度になんか食ってる気がする。実は大食いなのかもしれない。



「ミラさん、あんた睡眠薬飲まされてたんだぞ」

「そーなの?」

「そーなのって……」

「まあまあ……。食べますか?サンドイッチ」

「あー………じゃあもらう」



龍明に勧められ、市販品のサンドイッチを受け取る。これもやっぱり、どっかの店から取ってきたのだろうか。そう思うと、少し食べ辛い。食べるけど。



「じゃあ食べ終わったら行くわよ」

「なるべく昼間のうちに稼いでおきたいですね」

「そうね。夜はちゃんと寝たいし」



サンドイッチをくわえながら辺りを見回す。あのパン屋の近くではないことだけは分かった。ここはどこなんだろうか。


どんな建物よりも高くそびえ立つ、学校。そこが俺達の目指す場所。

例え道に迷っても途方に暮れることはないが、その目的は不明だ。

そこには何があるんだろう。ベタに金銀財宝?それともかわいい彼女?

………どちらの可能性もほぼ無いだろうな。



「ほらっ!早く食べる!」

「ゴフッ!!!」



突然頭を叩かれ、サンドイッチが変なところに飲み込まれる。咳き込んだ。

やばい鼻にいった。鼻から出る。タマゴサンドが鼻から出る。



「ミラさん!ダメですよ食べてる時に!」

「アンタがもたもた食べてるからよ!」



何とか鼻からは出ずに済んだ。

よくやった俺。すげぇ鼻痛いけど。

ミラは悪びれる様子も無く、腕を組んで顔を背けた。

あいつ……少しは反省しろ……!

龍明が俺の背中をさすり始めた。気持ちは嬉しいが、全く意味が無い。



「水をくれ……」

「えっあっはいっ!どうぞ!」



俺は龍明からペットボトルを受け取ると、勢いよく水を口に流し込んだ。





「そういえば二人はアレ、見たか?」



俺の問いかけに、ミラと龍明は振り向いた。だが歩みは止めない。

俺達は道路のど真ん中を堂々と歩いている。無人のこの街にそもそも、道路を整備する意味はあったのだろうか。それとも俺達ゲームの参加者の為に、つくったのだろうか。

ミラは大袈裟に首を傾げた。



「アレって何よ?」

「公園の木にぶら下がってた………首吊りだよ」

「首吊り……?」



ミラは目を見開き、龍明は顔をしかめた。その反応からすると、二人は見ていないらしい。


今になって何故そんなことを聞くのかというと、ただ思い出したから、と言うしかなかった。

だってあんなもの普通無いだろ?

………まぁ、今の状況も大分普通じゃないんだがな。



「私は見てないわね」

「僕もです」

「そうか………てっきりみんなあそこで目を覚ましたのかと思ってたが……」

「僕も公園で目を覚ましましたよ?」

「えっ?」

「私もよ」

「えっ??」



二人共同じく公園で目を覚ましたのに見ていない……。

ということは、あいつは二人がここに来たよりも後に首を吊ったということか。

よりにもよって何であそこで………。



「ていうかアンタ、そんなんでビビっててどうするのよ」

「だだって人が死んでたんだぞ?!目覚めたら目の前に……」

「ッ?!!」



突然、龍明に頭を掴まれ地面に押された。俺は思いっきりコンクリートに頭をぶつける。

直後に俺と共に倒れ込んだ龍明の背後を、何かが勢い良く風を切って通り過ぎた。

一瞬遅れて、飛んでいった先を見てみる。デカい槍が、ビルの壁に突き刺さっていた。

……刃ってコンクリートに刺さるっけ。



「外れてしまいましたね」

「相当な強者と見た」



男女の声。突き刺さった槍の隣に、一人の女子が降り立った。緑色の髪がなびく。優しそうな黒い瞳は、俺達を見据えた。



「ですが、まあ想定内ですね」

「ああ」



目線の先には女子しかいない。しかし声は二つ存在する。

振り向くと、青い髪の男が立っていた。男はくわえていたタバコを指で挟み、煙を吐き出した。男は吸い殻を地へ落とし、足で踏みつける。



「挟まれたわね……」

「ええ……まずいですね」



ミラと龍明が背中を合わせあって、戦闘態勢に入る。

俺だけ場違いだ。どうすればいいのか分からず、とりあえず双剣を取り出す。

また戦うのか……。もしかしてこの武器は、こうなることを予測して支給されたのだろうか。

だけど、戦って何の利益があるのかが分からない。報酬をがっぽり貰うためか?

そういえば、最初に会ったあの少年は、最後に何か言いかけて去っていったな……。



「では――――始めましょうか」



雲一つない空の下、静かに戦いは幕を開けた。



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