プロローグ
「鏡よ、鏡!!
この世で一番美しいのは誰だ?!」
人が決して立ち入ることがないような森の奥。
そんな場所にぽつんとそびえ立つ、
この森には不似合いなほど、
とても美しい城。
その城の一角、真昼にも関わらず
太陽の光が漏れて入らないよう、厚いカーテンで
覆われた、薄暗い部屋の中で
ある1枚の“鏡”に向かって、
高らかに声を上げる女がいた。
女は美しく、妖艶な風貌を身にまとっていたが、
やはり年なのだろうか、よく見ると、
皺や白髪などがチラリと視界に映った。
一向に何も反応がない“鏡”に対し、
女は、忌々しげに顔を歪めて、
再度言い放った。
「“鏡の中に閉じ込められし男”よ!
其方の主の命に従うのだ!
この世で一番美しいのは、誰なのだ!?」
女が言い終わると、“鏡”の中が
突然、不気味な深緑色の炎に包まれ
燃え始めた。と、思ったら、
パッと“鏡”の中が真っ暗になり、
1人の“男”の姿が浮かび上がった。
よくよく見ると、鎖で何かに結びつけられ
ており、顔は下に俯いていた。
その姿を女が確認すると、
女は口角を上げ、満足げに笑みを浮かべた。
“鏡の中の男”は、ゆっくりと顔を上げた。
そして、女に一言、
ギラリと眼光を光らせて言った。
「お呼びでしょうか、王妃様」
――――――In The Mirror.