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012 孤高の魔王、シグルの野望

我欲の魔王の娘、孤高の魔王登場

「妹の分際で、兄に逆らうか!」

 そう叫ぶのは、魔力だけは、そこそこある腹違いの兄であった。

 名前、そんな物は、覚える気も無い。

 何故ならばこの愚兄は、父親である我欲の魔王の脛をかじりまくり、現在の地位に居る能無しだからだ。

「魔王印も持たぬ、屑が我欲の魔王の血を引いていると思うと悲しくなりますわね」

 溜息を漏らすウチにそれは、激昂し魔力で強化した爪を振り下ろしてくる。

 そんな物が通用すると思われている事実が腹立たしい。

 ウチは、額の帝紅眼に力を注ぐ。

 それだけでそれは、動きを止めた。

 帝紅眼の能力の一つ、威圧であるが、圧倒的な魔力差が無ければ通じない。

 詰まる所、これが通じている時点でこれに勝ち目など無いのだ。

 ウチは、万が一の確認の為にその左手を見る。

 そこには、魔王印は、無かった。

「やっぱり違いましたか。まあ当然でしょうね。ウチを選ばなかった魔王印がこんな屑を選ぶとは、思えませんから」

 憎悪の視線を向けてくるそれを無視してウチは、その場、元我欲の魔王の領地を離れる。

 実際の所、現在進行形でも我欲の魔王の領地と言っても他言では、ないだろう。

 なにせここを実質支配しているのは、先ほどの愚兄だったのだから。



 ウチは、自分の城に戻った。

 ウチの領地は、我欲の魔王の領地がある、リュウズ大陸では、なく、リュウドウ大陸にある。

 理由は、簡単だ、我欲の魔王、父親の力に頼りたくなかったからだ。

 自らの力で魔王印を奪い、そしてその魔王の領地を元に幾多の魔王の領地を奪っていった。

 それなりの大きさになっていたが、我欲の魔王の領地に比べればまだまだ小さい。

 領土を広げ、強くなり少なくとも相対するに値する力を得てから再会し、何れは、追い越そうと思っていた我欲の魔王である父親。

 それが滅ぼされたと聞いた時は、とても信じられなかった。

 しかし、それが真実であり、父親の名に頼る愚兄どもが幅を利かせて居た。

 魔王印を持たぬ愚兄達に我欲の魔王の配下が従っているのには、訳がある。

 魔王印は、死ぬとその血族に継承されるのだ。

 我欲の魔王が死んだ以上、それは、その血を引く誰かに継承された筈。

 その可能性がある限り、我欲の魔王の配下達は、愚兄どもに逆らえないのだ。

 しかし、我欲の魔王が滅び、十三年の時が経た今もまだ我欲の魔王の後継者の名乗りを上げる者は、居ない。

 魔王印を継承しただけでは、知識と支配権のみで膨大な魔力が継承されない。

 魔王印に刻まれた知識を用い、魔力を増幅させ、他の魔王に負けぬ力を得る為の雌伏の時間のつもりなのかもしれない。

 そう考えたウチは、愚兄どもを襲撃しては、魔王印の有無を確認していたが、未だ発見には、至らない。

「誰が、誰が父上の魔王印を継承したのよ!」

 苛立ち、玉座を砕いてしまう。

「随分と荒れて居られますね」

 その声には、聞き覚えがあった。

「ディスゥ、我欲の魔王の側近であったお前が何故ここに居る?」

 ウチの問い掛けに、我欲の魔王の側近の中でも指折り、下手な魔王より強大な力を宿したディスゥが答える。

「聞き心地がよい言葉と真実の言葉どちらで御答えすべきでしょうか?」

 ウチは、威圧を行う。

「ウチは、弄るつもりなら容赦は、せぬぞ」

 苦笑するディスゥ。

「ならば、正直に申し上げます、シグル様を利用する為にここに参りました」

 その言葉にウチは、興味を覚えた。

「我欲の魔王への忠誠心の塊であるお前が何を求めてその様な事をするのだ?」

 ディスゥは苦笑する。

「残念な事に、私は、既に我欲の魔王様への忠誠心を捨てて居ります」

 意外な言葉だったが想像がつく。

「お前は、もしかして我欲の魔王の後継者を見つけたのか?」

 もしそうなのであれば、その者をディスゥは、見切ったのかもしれない。

 そして、その者が持つ支配権を失わせる為にウチを利用する事を思いついてここに来たと言うなら納得できる。

「きっと勘違いされて居られるでしょうから先に訂正しましょう。我欲の魔王の魔王印の後継者には、会いました。ですが、その者は、魔王である事を認めていません。その為、私は、我欲の魔王への忠誠心を捨てざるしかありません。今は、その者の遊戯を観察して逆鱗を探っている最中です。何れ新たな魔王になった時に仕える為に」

 ディスゥの言葉に眉を顰めた。

「魔王印を継承しているのに魔王である事を認めないだと? ふざけた事を言うものだ。そんな者が我欲の魔王の子供に居たとは、思えないが」

 全部とは、言えないがウチも大半の兄弟を知っている。

 詳しく知らなくてもそんな下らない事を言わない程度には、理解している筈だ。

「それは、当然です。なにせ我欲の魔王が討たれたその時に犯した聖女から産まれた御方ですから」

 聖女を犯す、我欲の魔王ならやりそうな事だが気になるのは、そんな事では、無い。

「お前は、何故その事を知っている?」

「記憶を継承したその御方からその時の状況をお教え頂いたからです。その時の状況とは……」

 ディスゥが語った我欲の魔王の討伐の経緯には、開いた口が塞がらない思いだった。

「人族が愚か愚かと思っていたが、我欲の魔王が死んでもまともに相対したくない程だったとは、思いもしなかった」

「本当にそうです。人族等、滅ぼしてしまえば良いのに、あの御方は、そんな簡単な真似は、趣味で無い為、自分の趣味を優先されました」

 ディスゥは、それからその者が何を目的で動いているのかを語った。

「流石は、我欲の魔王の魔王印を継承する御方、世界の支配や統治等、眼中にも無い様です。その何処までも絶対者としての風格に私は、仕える事を決めました」

 ディスゥならそうするだろう。

 しかし、ウチは、納得いかない。

「我欲の魔王の魔王印を継承しながら魔王に成らない等認められるわけが無い。ウチがその間違った考えを打ち砕いてみせる」

「言っておきますが、強いですよ」

 ディスゥの忠告にウチが答える。

「我欲の魔王の魔王印を継承した者が弱い訳がないだろう。元より覚悟の上。それでその者は、何処に?」

 ウチは、ディスゥから聞き出した場所に急ぎ向かったのであった。



 そこは、人族の国であった。

「いちいち探すのも面倒だな。戦い易いように更地に変えてしまおう」

 見下ろす位置に居るウチは、帝紅眼に力を発動させ、巨大な燃え盛る岩石を生み出す。

『デスメテオ』

 ウチが持つ最大威力の魔法、例え魔王であろうとこれを完全に防ぐ事は、出来る訳が無い。

 阿鼻叫喚の光景が広がる筈であった。

 しかし、燃え盛る岩石は、全て空中で昇華していった。

「打ち砕くでもなく、弾き飛ばすでもなく、昇華させただと!」

 ウチが驚愕していると、それは、目の前に現れた。

「あの行き成りそんな強力な攻撃魔法を使うのは、駄目だと思いますよ」

 そういったのは、十歳に見える少女の姿をした者、その額には、ウチと同じ帝紅眼があった。

「貴女が我欲の魔王印を継承した者ね?」

「そうですが、どちら様ですか? ああ、あちきの名前は、コプンと言います」

 挨拶してくるそれに対してウチは、名乗りを上げる。

「ウチの名前は、孤高の魔王、シグル。貴女の持つ魔王印を貰い受けるわ」

 宣戦布告と同時に放った魔力弾。

 無論、そんな物が通じるとは、思っていない。

 しかしそれは、全く予想外の事をした。

『神の御力で全ての魔を封じたまえ』

 背中から翼を生やし、展開した羽根で魔力を封じてしまったのだ。

「なんで! 魔王の筈の貴女が奇跡術を使える訳がないわ!」

「あちきは、魔王じゃないですし、母親は、聖女でしたから可能ですよ。まあとにかく、落ち着いて話し合いをしませんか?」

 気楽にそういうそれにウチは、油断無く構える。

 お互いの魔力が使えないとしても、あっちには、奇跡術がある以上、不利は、否めない。

 だからこそ、奥の手を取り出す。

『サタンサイズ』

 ウチの魔力を結晶化させて生み出した鎌の武具。

 魔力封じに対するウチの奥の手。

『育牙』

 相手も短剣を抜くと刀に変化させて受け止めた。

「育牙ってまさか? 遺物なの?」

 ウチの言葉にそれは、あっさり頷く。

「はい、一応これって母親の家で受け継がれている遺物なので適正あるんですよ」

 距離をとってウチは、舌打ちする。

「魔王印に奇跡術、遺物まで本気で貴女は、何者なの!」

「あちきは、あちき。我欲の魔王でも聖女でも遺物のマスターでもない。コプンですよ」

 それの答えにウチは、我欲の魔王、父親の言葉を思い出す。

『俺は、魔王の前に俺であり、我欲の魔王なのだ』

 今だったら何を言いたかったのか解る。

「そう、ならばウチは、ウチ、孤高の魔王!」

 ウチは、この状況を冷静に判断する。

 魔力は、純粋な魔族であるウチの方が上かもしれないが、奇跡術がある限り、有利にならない。

 武器に関しては、サタンサイズと育牙は、そう威力が違わない。

 そうなれば、身体能力で勝負するのが一番妥当だろう。

 相手は、半魔でも身体能力は、高いだろうが、まだ子供も子供、成熟したウチに勝てる訳が無い。

 リーチとスピードを利用して一気に攻勢に移る。

 しかし、コプンは、それを最小限の動きで受け流し、告げる。

「我欲の魔王と近距離戦闘して勝てると思いますか?」

 舌打ちしたくなった。

 そうだった、コプンには、我欲の魔王の記憶の継承がある。

 それは、詰まり我欲の魔王の戦闘技術の再現も可能だって事なのだ。

 我欲の魔王は、その莫大な魔力があるというのに数多の戦闘技術を習得していた。

 我欲の魔王の記憶の継承、それがこれ程厄介な物なのか。

「えーと話し合いをしませんか?」

 攻撃を止んだのを良いことにそんな事を言うコプンを睨む。

「随分と余裕よね。でも、魔法勝負で勝てるかしら?」

 安い挑発、こんなのに乗る訳が無いのは、解っている。

 単なる時間稼ぎ、我欲の魔王の記憶を持つ相手に勝つ方法を考えるまでの。

『コプン、周りに迷惑掛からない場所に移動するって条件で奇跡術を解除して勝負してやればどうだ』

 コプンの頭の上に居たチビ竜の言葉にコプンがこっちを見る。

「あちきは、それでも良いですが。どうでしょうか?」

 周りの被害を気にして奇跡術を使っていたというなら大甘だ。

 だが、魔法勝負に移れるのは、こっちとしてもありがたい。

「約束するは、人族の国など歯牙にかける価値すら無いのだから」

 そして場所を移した。

「魔法勝負にした事を後悔させてあげる」

 ウチは、暗黒魔法を発動する。

 それは、超重力で全てを吸い込む上、殆どの対抗魔法が意味を成さない。

 それに対してコプンは、指を突き出す。

『ホワイトホールシュート』

 指先から放たれた魔法は、暗黒魔法の中心に吸い込まれると同時に白い光を撒き散らし、無効化してしまう。

「まだよ!」

 ウチは、我欲の魔王と戦う為に開発した何十という超々高度魔法を放つがどれもこれも無効化されていく。

『相手が必死に攻めているんだ一回くらい攻めるのが礼儀だと思うぞ』

 チビ竜の言葉に少し考えた後コプンは、空中に複雑な印を描くとウチですら僅かにしか理解できない圧縮言語で詠唱した。

『ノヴァポイント』

 それは、眼前に在る一点で行われた。

 範囲としては、それほど大きくないが、それが発生した球体の中で何が起こっているのかを理解したら、ウチでなくても絶句するだろう。

 あの球体の中では、この世界すら打ち砕くだけの力が爆発しているのだ。

 それが終わった後、コプンが不満そうな顔をする。

「まだ球体が大きいか。我欲の魔王が目指した掌サイズって言うのは、本気で出来るのかな?」

 今のもとんでもないがその理想は、累乗的に至難度を増す事だろう。

『我欲の魔王が暴走しないで本当に助かっていたな』

 チビ竜がしみじみと告げる。

 ここに至り、もう否定するつもりは、無い。

「ウチの負けよ。勝者の権利よ好きにしなさい」

 命をとられるのも覚悟にそう口にしたがコプンが笑顔でいって来る。

「それでは、話し合いしましょう」

「話し合いって、今更なんで?」

 ウチの疑問にコプンが真剣な顔で続ける。

「力尽くで相手を納得させるなんてそんな結果が決まりきった事って意味が無いからです」

 ディスゥが魅力される訳だ、正に我欲の魔王を彷彿させる絶対上位者の風格だった。

「解ったわ。ウチにもウチの考えがあるからね」

「解っています。それでは、あちきの考えから」

 こうしてウチは、長々と話し合いをした結果、基本、お互い不干渉と言う事になった。

 但し、姉として妹に会うのは、問題なしとした。

 我欲の魔王、父親に似た雰囲気を持った妹、他の愚兄達と違って姉妹愛を深め様と思っている。



○あちき


 あちきは、リュウドウ大陸にあるバーファって国に居た。

「ありがとうございました」

 ペコリと頭を下げてアミュレットの代金を受け取る。

『ようやく一つか、先は、長そう』

 シーストップが溜息を吐く。

「そだね、でも猛牛ラーメンを食べる為に頑張ろう!」

 あちきは、この国の名物、猛牛ラーメンを食べる為のお金を稼ぐ為に露天でアミュレットを売っていた。

『それにしてもラーメン一杯で円金貨三枚(日本円にして三万円)って言うのは、暴利じゃない?』

「名物って人を呼ぶものだから、裾の広げるか、逆に業と高価してプレミア度上げる必要があるんだから仕方ないよ」

 あちきは、そう納得して露天を続けていると、数人の男の人がやってくる。

「誰に断って店を出しているんだ!」

 所謂地回りって奴だろう。

「えーと、ここの露天を取り仕切っている商人の人でしたけど、他に許可が必要とは、しりませんでした。すいません」

 頭を下げるあちきに地回りの人は、うなづく。

「素直で良いじゃないか。だったら場所代を払いな」

「えーと出したくてもお金は、今さっき売れた代金の穴銀貨(二千円)しかありません」

 あちきがそう答えると地回りの人は、呆れた顔をする。

「馬鹿な事を言うな、そんなんで商売が出来る訳がないだろう。大体、宿や食事代は、どうしてやがる」

「野宿に自給自足です」

 あちきが即答すると地回りが顔を見合す。

「本気か?」

 あちきは、手荷物を広げてお金がない事を証明してみせる。

「えーとなんていうか、変だろう?」

「別に普段は、困りませんから。ただ、今日は、猛牛ラーメンを食べたいので一生懸命稼いでいる所です」

 即答するあちきに地回りが頭をかく。

「おいどうする?」

「いっその事、人買いに売るか?」

「無理無理、半魔なんて売れないだろう」

 困りきった顔をする地回りにあちきは、提案をする。

「こういう場合は、店の品物を没収するって言うのが妥当かと思いますけど」

「商売物だぞ、良いのか?」

 意外と親切な地回りの人にあちきが頷く。

「当然です。他の人達も払っているのにあちきだけがお金が無いからって払わないなんて不合理があったら駄目ですから。それに材料は、貰い物で自分で作っているものですから、元手は、掛かっていません。新しく作ればいいだけですから」

「そうか、なら貰っていくぜ」

 そういって地回りの人たちは、幾つかのアミュレットをもってさっていった。

『あいつ等、後で絶対に慌てるだろうな』

 シーストップの呟きにあちきが首を傾げる。

「そうかな? それより新しいお客さんが来たよ」

 あちきは、頑張ってアミュレットを販売したが、目的の金額まで貯まるのに五日もかかってしまった。



「はい、猛牛ラーメンお待ちどうさま!」

 あちきの目の前に置かれる大きなどんぶり。

 そこにこれでもかと乗せられた牛肉。

 名物ってだけあってとっても美味しそうだった。

「いただきます!」

 そういって食べようとした時、強大な魔力の集中を感知した。

 あちきは、一瞬だけ躊躇した。

 でも、大きく溜息を吐いて席を立つ。

「用事が出来たからごちそうさまでした」

 そういって食堂を出る。

『放置しておけばこの町は、消えるな』

 シーストップの言葉にあちきが頷き、魔法の種類を分析する。

「デスメテオ、魔王でもかなり上位じゃないと使えない魔法だね。下手な防御は、通じない。力押しします」

 あちきは、相手を上回る魔力で超高温を生み出して燃えていた岩石を昇華する。

 そして、それを成した相手の前に出た。

 相手の名乗りを聞いてシーストップが言う。

『お前の異母姉妹だな。何時か来るかと思っていたが、微妙なタイミング』

 あちきは、風の精霊さんにお願いして探索して貰うと案の定、ディスゥさんが居た。

「ディスゥさんの細工です」

『また? あいつの考えもわかるけど、正直、メンドイ』

 シーストップが愚痴を言っている間に奇跡術を展開して、魔力を妨害する。

 これで大魔法で周囲に被害が出ることは、無くなった。

 すると、魔力を結晶化した武器で攻撃して来たので育牙が対応すると驚かれた。

 その後、少し武器を交えたがトラッセさんの基礎訓練と我欲の魔王の戦闘記憶があるあちきの方が技量が上だったので問題は、無い。

 どうしようかと考えていると挑発して来たのでシーストップの提案を採用した。

 場所を移動した後、色々と魔法を使ってくるけど、全部我欲の魔王が一度は、研究している魔法なので、対処は、簡単だった。

 きっと父親似の思考回路をしているのだろうと考えているとシーストップに突っ込まれた。

 確かに、相手に一方的に攻撃させるのは、馬鹿にしているともとられるから、こっちから攻撃っぽい事をしてみよう。

 丁度良いから、我欲の魔王が完成させられなかったノヴァポイントを使ってみよう。

 物理世界の創造の起点となる爆発を極小一点内で発動させるって魔法だ。

 しかし、実際使ってみると色々と足らず、球体がかなり大きくなってしまった。

 それを見たシグルさんは、負けたって言って来たので、話し合いをする事になった。

「だから、貴女がその気が無くても魔王って事実は、変わらないわ。実際、貴女が支配権を持つ魔族が大勢いるのよ」

「そこ等へんは、あちきが指示を出さなければ関係ないかと」

シグルさんの主張にあちきが反論するとシグルさんが即座に否定してくる。

「魔族は、魔王の支配下の元でその命に従う。それは、権利でもあるのよ。貴女は、それを奪っているのよ」

 そういわれると何か悪い気がしてくる。

「とにかく、魔王には、それ相応の責任があるんだから貴女もそれを責務を果たすべきよ」

「そんなの嫌!」

 お互いの主張は、中々折り合わなかった。

 後でシーストップに聞くと。

『どちらかというとシグルの方が真っ当な事を言っていて、コプンは、我侭を言ってただけだな気もする。まあ、魔族以外からしてみれば、コプンが我侭言ってまともに魔族の為に動かない方が助かるけどね』

 結果、お互い不干渉となった。

 無理に相手の考えを変えるのもいけないのでそれで妥協しあった。

 そして、あちきは、また食堂に来ていた。

「奢ってもらって良いのかな?」

 あちきが自分ルールに疑問を感じていると魔力を隠蔽したシグル姉さんが気楽に言う。

「良いのよ、ウチの所為で食べ損ねたのでしょ? その埋め合わせって事なんだから」

『僕も問題ないと思う』

 シーストップも賛同してくれたので猛牛ラーメンを食べる。

「美味しい!」

「コプンも変わっているわねー。その気になればもっと美味しいもの好きなだけ食べられるでしょ?」

 シグル姉さんが呆れた顔をする中、あちきは、食べながら答える。

「名物を食べるって事に意味があるんだよ」

 食事を続けていると何時かの地回りの人たちがやってくる。

「ようやく見つけたぞ! あのアミュレット、すげえ高価な材料で出来てるじゃねえか! もっとよこせ!」

「妹の食事の邪魔をするんじゃない!」

 シグル姉さんに睨まれて魂を抜かれた様な顔になる地回りの人たち。

 食事が終わったら治してあげよう。

『アレを原材料費だけで売ったの? 馬鹿だな?』

 シーストップが呆れた顔をするとシグル姉さんが確認してくる。

「コプンが作ったなら凄いもんなんだろ?」

『材料費よりそれに掛かっている魔法の方がもっと大金が必要だ。捨て値で捌いたって、板金貨(五万相当)数枚にだろう』

 シーストップの答えにシグルが蔑んだ顔をする。

「本当に人族って馬鹿ばっか」

 周囲の視線が痛いが今は、目の前の猛牛ラーメンの完食を目指す事にするのであった。

お姉さん登場です。

ガールズラブタグ要員です。

この後は、基本デレキャラですが、魔王としての領地経営には、真面目な人です。

因みに今回少し出てきた通貨ですが、以下の通りになっています。


粒銅 =   10円(細かい銅の粒)

円銅貨=   50円(円形の銅貨)

穴銅貨=  100円(中心に穴があり、紐で纏められる銅貨)

板銅貨=  500円(板状で重ねられる銅貨)

円銀貨= 1000円

穴銀貨= 2000円

板銀貨= 5000円

円金貨=10000円

板金貨=50000円

これ以上の高額は、宝石等でやり取りする。


次回は、13歳、世界樹絡みです

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