表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徒花  作者: 似櫂 羽鳥
第一章
5/27

幕間 角材とボク

 文から逃走した茜と蘭は、背中に視線を感じていた。文のあの瞳は殺人犯のそれと酷似しているように思えた。じりじりと湧き上がる恐怖に押しつぶされないように、二人は手を繋ぎながら廊下を歩いていた。

 不意に二人は見慣れた姿の少年を目の前にした。

「あ、茜さん、蘭さん。無事だったんですね?」

 少年の名は「葦名柊(あしな ひいらぎ)」。自分がイジメられているともわからずに、愚鈍なまでに二人を友人だと思っている頭の悪い奴だ。

「柊、あんた生きてたんだ」

「ほんとぉ。お前なんかすぐ死ぬって思ってたんですけどぉ」

「あはは、なんか怖いから逃げ回ってたんです」

「チョーウケるんですけどぉ。てゆーか、それ何持ってんの?」

「あぁ、これですか?」

 柊の手には自分の背丈と同じぐらいある太い角材が握られていた。半ば引きずるようにして持ち歩く姿は、文化祭の材料を運ばされているようにしかみえなかった。

「起きたら目の前にあったんです。たぶん、お父さんが削った木だと思うんですけど」

「ああ、柊の家って大工だったっけ?」

「はい。宮大工です。嬉しいな。蘭さん覚えててくれたんですね」

「武器が木の棒とかチョーウケる。ねえ蘭、こいつちょろいからサクッと殺っちゃおうよ」

「そうだね。むしゃくしゃしてたし、ちょうどいいね」

「え、なんですか? 何するんですか?」

 困った表情を浮かべながら、柊は二人の会話に加わろうとしたが、自分に向けられた矢の先を見て凍りついた。

「チクッとしますよぉ」

 まるでお医者さんごっこと言わんばかりに凶器を向ける茜は、いつものニヤケ顔を取り戻していた。

「すぐに終わりますからねー」

 蘭も茜と同じように悪ノリし、柊の胸元にボウガンを向けた。

「わ、や、やめて、怖い!」

「チョーウケる。蘭、いっせーのせで殺るよ」

「楽しい」

 満足げに笑う二人はいじめっ子のそれだった。

「いっせーのせ!」

「わーーー!」

 柊は恐怖のあまり闇雲に角材を振り、二人の放った矢を叩き落とした。そして、その勢いのまま角材を振り回した。あちこちの壁にガツンガツンと角材をぶつけながらも、その決定的な一撃が茜のこめかみに直撃した。

「茜!」

 弾き飛ばされる茜を目で追った先には、振り下ろされた角材があった。声を出す余裕さえなく、茜と蘭は絶命した。

「怖いよ。怖いよ。お父さんお母さんお姉ちゃんお兄ちゃん!!」

 柊は二人を殺したことも気がつかないまま、その場から逃げ去った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ