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徒花  作者: 似櫂 羽鳥
序章
1/27

追憶の花

 人の人生は、まるで花のようだ。


 土の中で寒い冬を越え、幾多の苦難を乗り越えて、短い時を必死に咲き誇る。

 そして鮮やかな一夏を終え、他の花と結ばれて、実をつける。

 その実は新たな命となり、未来を繋げる。

 幾千の季節を繰り返し、一面にその生を広げていく。

 途絶えることなく続く生の連鎖。それは人も花も変わらない。


 花の命は短いからこそ、美しい。例えば花が永遠に咲き続けるものだとしたら、誰も花が咲くことに心を動かされないだろう。当たり前のように存在するものには、何一つ美しさなど感じないのだ。

 人も同じだ。

 それぞれに与えられた生を全力で駆け抜ける、それが命の美しさになる。


 人は誰もが、明日を見る。未来は約束されていて、平等に与えられるものだと信じて疑わない。存在することが普通で、だから人は生きているという喜びを知らない。

 生きるということがどんなに喜ばしくて、悩ましくて、苦しくて、美しいことなのか。命を与えられたという奇跡を、人は知らないままで生き続けている。


 もしも、望んだ明日が来ないと知ったら。

 自らの手で、生を選ぶことを課せられたら。


 私は彼等を忘れない。

 短い命を懸命に生き抜いた、美しき花のことを。

 生の悲しみを背負ってそれでも生きると決めた、美しき花のことを。

 私は、この胸に刻む。

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