誠ノ愛
新撰組浪士組なんて嫌い」
これが私の口癖だった。
壬生浪士組は幕府側の組だ。
私が嫌いな理由は江戸幕府側だからとか人斬り集団だからというわけじゃなくて違うある理由からだ。
それなのに、ある日私にこんな命令が下った。
「壬生浪士組に偵察に行ってほしい」
それは壬生浪士組に間者として、裏切りものとして壬生浪士組に入隊してほしいということだろう。
「なんで私なんですか?他にも人はいたでしょう?」
「壬生浪士組のことは知っているね?」
「はい。江戸幕府側の集団で罪もない平民を斬ることもある人斬り集団だと噂くらいなら…」
「そうだ。私達は長州であり、壬生浪士組は敵だ。その壬生浪士組が最近力をつけてきているらしい。こちらとしても敵の行動を知っておきたい。しかも、この長州の中でも腕の立つ君なら任せられるし信用できるからね。」
「……私が壬生浪士組が嫌いなのを知っているでしょう?」
「ん?やらないの?これは命令だよ。君のやるべき職務だ。それとも断る?」
私は顔をしかめた。こう言われるのはわかっていた。私が断れないと知っていながらこんなことを言う。
「わかっています。これは私が果たすべき義務です。命令された限り必ずやり遂げます。」
「そうか。それは良かった。さっそく明日、壬生浪士組の屯所に行き正式に入隊試験を受けに行くからね。」
また顔をしかめる。
「明日…」
「何か?」
「い、いえ。じゃあ私はこれで失礼します。」
「明日を楽しみにしているよ」
「…………」
軽く睨みつけた。
そしてそのまま部屋を出る。
私は彼に頂いた自室に向かった。
「はぁ。なんでよりにもよって壬生浪士組?」
私は長州藩とは何ら関係のない一般人だ。
さっき話していた人は桂小五郎さん。
私の命の恩人だ。だから、その恩返しとして私は桂さんの頼み事(命令)を聞いている。
「しかも明日…」