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紅の闇  作者: 水無神
第二章 神聖都市エレアザル
31/90

幕間/兵士の嘆息

※前話「11.お年頃~」に入れきれなかったネタ。

 入らなかったのが悔しいので蛇足的に。短いです。


「……ん? ルド、ちょっと身分証を出せ」


 ルドの年齢が明らかになった日の夜。

 夕食後に再びセインの部屋に集合して翌日の出発について確認中、唐突にアレイクがルドに声をかけた。


「なんですか、アレイクさん? えと、荷物……はい、どうぞ?」

「…………大陸歴二七四二年黒月コクゲツ十四日生まれ…………」


 首を傾げつつルドが荷を漁って自分の身分証を引っ張り出してくる。

 受け取ったアレイクが読み上げたのは、ルドの戸籍上の生年月日だ。


 ルドの身分証は、セインの申告を元にイライアスが用意した、シルグルア王国の正規身分証。当然「身許」が明示されなければ身分証は作れない。ということで、シルグルアに戸籍が作られた上で発行されている。


 戸籍登録するということは便宜上の生年月日も、税の徴収などの関係で必要となり、生まれがはっきりしないものは法術士に大体の年齢を視てもらい、逆算した適当な大陸年と適当な日付――例えば申請日――を生年月日とする。

 ちなみに、法術士が計れる年齢の精度は、五歳前後までは月単位で見込めるが、年齢が上がるにつれて曖昧になる。


 現在、大陸歴二七四八年赤月セキゲツ二十四日。

 赤月は初夏の月、黒月は冬の盛りの月。よって、ルドは現在(書類上は)五歳半の扱い、ということである。


「聖寵の者〈ディ・エンファ〉として外見年齢を出すとそのくらいだろ」

「あー……、まぁ、そうなんだけどな?」

「月日はほんとの誕生日ですよ、ちゃんと」

「うん、うん……。そうだな、ちゃんと、な」


 さらりと返してきたセインとルドに、アレイクはがっくりと項垂れるしかない。


 セインの申告を丸呑みして手配したイライアスを責めることはできまい。虚偽申告の必要性が感じられないし、そもそもルドの外見は確かにその程度の年齢なのだから。

 法術士であっても一見したところで種族の違いは判らないようだから、一文官に過ぎないイライアスには不可能事である。……自分たちとて今の今まで、ただのちびっこだと思っていたのだし。


 すでに幾度目か知れない旅の連れたちの天衣無縫っぷりというか、法は破るためにあると言わんばかりのやり放題っぷりの暴露に、もはや諭す言葉も出てこない。


 ――ここでもしれっと違法行為かよ……。


「アレイク、こんなモンよくあることだから気にすんな」

「兄さん、小さいこと気にしてると早く老けるよ」

「……黙ってろ前科持ちども」


 けらけら笑う元盗賊ふたりを一括りにやっつけて、アレイクは深い深い溜息を吐いた。



 セイン一行における『保父さん』アレイク・ダシルバ、彼の心労は今後も癒される目途はない。


副題:身分証 あってもなくても 身許詐称


イマドキ、正式には「保父さん」「保母さん」って使っちゃいけないらしいです。

「保育士」って一括りにされると夢がないと思うのは腐れだからでしょうか。


末文になりましたが、明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

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