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神に頼まれ異世界転移  作者: 遊惰悠
一ヶ月目
5/31

とりあえず困惑した。



「なんで、あんなに酷いことしたのよ……」


 怒り過ぎてちょっと手が震えている。そこまで怒るようなことしてねぇんだがなぁ。


「はぁ?なんのことだよ。ガイン村長と俺が模擬戦して、村長倒したからってあいつらが襲って来て、それをぶっ倒しただけじゃねぇか。ちゃんと加減だってしてやったし」


「あなた、お父さんの肋の骨を砕いて、他の人達にも脱臼させたり、筋肉が切れかけてる人だっていたのよ!?助けてくれたことは感謝してるけど、こんなことされたら……」


「ま、待て、あれでか……?」


「そうよ、あれでってあんな速度で殴ったら普通……」


 目のはしにうっすら涙まで浮かべているエル。罪悪感ぱねぇ。ハルにちょっと似てんだよなぁ。余計に罪悪感がキツいのかね。


「んでもお前のあの治癒魔法でなんとかなるだろ」


「あの治癒魔法は私が使える魔法で一番なのよ……三回でもう終わり……もう、できないわ。あれをするにはまた三ヶ月くらい魔力を溜めないと……」


 そんな大変な魔法だったのかよ。


「邪神の封印更新もまだなのに……」


「封印の更新とかしないといけねぇのかよ」


「あと、一ヶ月以内に、ね」


「そうなのか……。まぁとりあえずだ。怪我の状態が悪いやつから治してくから、治癒魔法教えてくれよ」


「え?」


「え?じゃねぇよ。早く教えろ」


「で、できるわけないじゃない!これができるようになるまで二年もかかったのよ!?」


「できる」


 この俺のチート能力ならな!!俺は相当良い性能持ってこっち来たみたいだし、できないことはないだろう。うん。


「できるわけないよ……」


「まだ言ってやがるのか。俺はできる。いや、やる」


「……わかったよ。じゃあまず詠唱から始めるわ」


「いや詠唱いらんから魔法名だけよろしく」


「何を言ってるのあなた……詠唱無しにあのラ・キュアを使うなんて」


「ラ・キュアな?わかった」


 俺は再び道場内に入り倒れたまま動かない奴を見る。


「ジン……」


 ガイン村長が男を抱きかかえてやや怒りの篭った視線を俺に向けてくる。他は恐怖ばかりで、怒りすらないようだが。


「あーちと治すからどいてくんね?」


「ジン!だから詠唱無しじゃできないから!」


 エルが後ろからなんか言ってくるが無視。


「……」


 俺は男に両手をかざして唱えた。


「ラ・キュア!」


 両の手に淡い光が収束し、その光が男を包んでいく。エルが「嘘……」と驚愕している。今日俺は何度驚愕されるんだ?

 少しして男が立ち上がった。


「なっ……!?」


「あ、ありえない」


 よし、完璧だ。流石俺。何がどうなって治ってるのか全然わからねぇから、正直気持ち悪いさえあるけど、完璧だ!!


「ジンもう一度話をしよう」


 男が完治したのを見て、ガイン村長が真面目な顔をして言った。



「今からクーリッヒ緊急会議を始める」


 話をするだけの筈が、村の重鎮達によ

る緊急会議が村長宅で始まっていた。いつ俺はこの血濡れのカッコを綺麗に出来るのか。ほら、爺さん達ギョッとしてるぞ。


「議題は訪問者ジン・カナヤについてだ」


 そして俺は何故かガイン村長の右横に突っ立っていた。

つか俺の名前……異世界翻訳されてるからこう呼ばれてるのかね?


「彼は若き人間でありながら、俺よりも強く、エルが二年も掛けて覚えた治癒魔法を一瞬で。かつ無詠唱で使い、平然としている。これは一体どういうことだろうか?」


「勇者の復活ではないか?」


 ガイン村長よりちと年下くらいの男が言った。


「あぁガバル。俺もその線で考えている」


「じゃなきゃあの治癒魔法を無詠唱でなんて早々できねぇよ」


「だが何故今なのじゃ……」


 いかにも長老といった感じの爺さんが顎の髭を伸ばしながら首を傾げる。


「それはわからないが、とにかくジンが凄まじい力を持っているのは一目瞭然だ」


 そんなにすげぇのか俺……。まぁ凄そうだが。


「な、なぁエル……俺、どうなるんだ?」


 左横に座っているエルに話しかけてみた。


「……多分王都に行くことになるわ」


「やべぇな」


「何が?」


 ちょっとエルの態度が刺々しくて悲しい。結果的には当然なんだが。


「だって邪神の腕破壊できねぇじゃん」


「「「はぁ?」」」


 俺の呟きに場の全員が驚く。


「ジン、いくらジンでも邪神なんて倒せないよ、勇者の技が使えるならまだしも……」


「勇者の技?」


 勇者の技、だと?そんなもんあるなら


「うん……ってまさかジン」


「覚えるに決まってんだろ!」


「で、でも危険だし……」


「大丈夫。俺神みたいなもんだし」


 神の使いも神も変わらんよ。


『大分変わるわ!!』


 勝手にツッコミが入ったが気にしない。気にしてなるものか!


『ぬしの我の扱いが段々酷くなっていないか?』


「んだから安心しろ。勇者の技教えてくれ。名称だけでも、多分いける」


栄光之剣(グローリーソード)。勇者の奥義の一つだ。外にでて試してみなさい。だが絶対に人に向けるな」


 何故かガイン村長が答えた。まぁ良いけどさ。


「わあったよ。行くぞエル」


「え?私も?」


「そうだよ。行くぞ」


可愛い子が近くにいるとモチベ上がるからな。とは言わん。



 村長の家から出て思った。


「まぁじで風呂入りてぇ」


「血だらけだもんね」


 犬っころをぶちのめした時に浴びた血がベタベタしてクセぇから大分辛い。


「じゃあちょっと用意するから戻ろうか」


「あぁ」


 ということで家を出て二分で戻った俺たちであった。



 あ、やっぱこうなるよな。

 意気揚々に出掛けた俺たちが二分で戻ってきたのだ。このアウェー感。


「どうした?まだ何かあるのか?」


 ガイン村長の態度がやや刺々しいが、あんだけ村の仲間がぶちのめされたのだから仕方が無い。


「お父さん、ジンにお風呂を貸しても良いかな?」


「すんません。さっきエル助けた時の返り血落としたいんで、良いっすかね?」


「良かろう。エル。案内しなさい」


「はい」


 俺はエルに手を引かれ、風呂場まで連れていかれた。



「つか風呂ってどうやって、沸かすんだ?」


 ここに水道管とかガスとかあるとは思えないんだが。


「な、なんでジンってそんな強いのに、こんな常識しらないの?」


「でも浴場自体は結構しっかりしてんだな」


「どんなお風呂だと思ってたのよ」


「いや別になんとも」


魔法で洗っちゃうのかと思ってたわ。


「一応説明はしといてあげる。この石を使います」


エルが赤みかかった拳台の石ころを取り出し、俺に見せた。


「エルせんせー。その石はなんですかー?」


 ちょっと不良っぽく言ってみる。いや、そもそも不良は聞かない。そういう面では俺は不良ではないのか……?準不登校?若干登校はしてんだよな。つかどうでもいいわ!!


「やっぱり知らないのね。この石は発火石。魔力を注ぐと発火するの。これを数個使ってお湯を沸かすの」


 なんか画期的というか何というか。


「エルせんせー。水ってどっから用意するんすかー?」


 魔法でなんて言わないよな?


「魔法で。アクアリウムと言う水属性魔法を使います」


 へーい。お風呂、ほとんど魔法頼みだ。へーい。しかもアクアリウムて。どうなん?


「水を司る清き精霊よ、我が魔力を用いて聖なる水をお分け下さいませ。……アクアリウム!」


「い!?」


 いきなり宙に丸っこい水が浮かんだ。


「ふぅ。これを、浴槽にいれ、さっきの石を浴槽の下のこの穴に入れます」


エルが浴槽の下の、小さな穴に魔力を込めた石をいれた。


「で、この水を浴槽に入れます。これで。準備完了。後は……発火!」


「うをっ?な、何?」


 いきなり発火!とか言うからびっくりしたわ。


「まぁこれで見えないけど、火はついたわ。十五ミニルくらい待てば入れるようになるわ」


「おぉおおお」


パチパチパチ。ミニル?


「ジン、こんなことも知らないで、今までどうやってお風呂入ってたの?見た感じ、見たことない質の良い服着てるし、どこかのお坊っちゃんだったりするの?」


「さぁな」


「なんかジンって隠してない?」


「え?いや別に」


「そんなだからお父さんも妙に警戒してるんだよ?」


 そうなのか。


「まぁ……話せたら近いうちに話すよ。んなことよりよ。エル。俺がほんとに勇者の技使えたらよ、邪神の腕ぶっ殺して、一緒に外に出ないか?」


「ふぇ?そ、それって逃避こ」


「外行きてぇって言ってたろ?んで俺も、知らないことが多いからな。いてくれると助かる」


「む……むぅ」


「ちょっと顔赤いな。大丈夫か?」


「だ、大丈夫。そ、そろそろお風呂入っても良いんじゃないかな?」


「まだ全然時間経ってねぇよ!?」


「やっぱ今はまだ駄目!あ、と十ミニルくらいね」


 ミニルってのはやっぱ分と一緒か。体感だとそんな感じだし。


「じゃ、ジンは時間経ったら入って良いよ。私、ちょっと用意するものあるから」


「ん?わかった」


 そう言ってエルが風呂場から出て行く。


「暇になっちまったな。……今日は色々あったな……」


 水面に映る自分を見ると、犬の血がべっとり付いた服を着た、金髪をほぼオールバックにして、後ろ髪だけやや伸ばした凶悪な目付きの男がいる。


「……ひでぇ顔してんな」


 今まで沢山の人間を殴り続けてきた。親にも迷惑掛けまくった。まぁ途中で捨てられたから、そこまで掛けた覚えはないがな。

 でも、養子で入った家の人達に、すげぇ迷惑掛けたからな。ハルは元気……だろうか。

俺がいなくなって清々しているのだろうか。

悲しんでいてくれているだろうか。

ハル……。


読んでくれた方ありがとうございー

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