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ある皇后の一生  作者: 雪花菜
四章 左遷
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 ――黄復卿から関小玉への手紙

 新緑の香を味ふころと相成り候。お手紙拝見致し候。益益御健固なること奉賀し候。 

 なんていう前置きはともかく、ところでおまえ、手紙の書き方とかについて色々考えているんですか。何も一番最初の行みたいな形式の話じゃなくて、情報の交換について考えているのかってことだ。いきなり、「彼氏になって」とか言って、前後に説明ないのって頭おかしいんじゃねえの。一対一で話してるわけじゃねえんだぞコラ。後で説明のやりとりを手紙でするにしたって、よけいな時間かかる訳だから、いっぺんに済ませてくださいよホント。

 さて、事情はわかるにはわかった。虫除けがほしいってことだろ。でも、俺知ってるんだけど。おまえ、明慧経由で文林の絵姿取り寄せてるんだろ。それ見せて、「コレあたしの恋人」とかやればいいだろ。何でワザワザ俺なんだよ。


 ――関小玉から黄復卿への手紙

 御文有難く拝見いたし候。御前様、此時候にもお障りなくいらせられ候御事、喜び申上候。

 あんた馬鹿? あんな顔のやつが、あたしの彼氏だって主張して、誰が信じてくれるっての。ツラ割れてるから却って無理なんだってば。あんたもそこそこツラ良いけど、それは相手にはわかんないし。そんな訳で、女に宛てるような手紙、適当にちょちょいと書いてよ。得意でしょあんた。


 ――黄復卿から関小玉への手紙

 姉御、こんな風ですか。

 あなたが私の元から離れ、幾日が経ったのか。あなたとの夜を思い返し、胸が焦がれる思いです。別れる最後の日、あなたの肌の(自主規制)で私が(自主規制)し、(自主規制)だったのを、あなたはよもお忘れではないでしょう。(自主規制)が(自主規制)の(自主規制)をしたのを、(以下全部自主規制)


 ――関小玉から黄復卿への手紙

 お兄さん、違うわ。

 てか、性的いやがらせの部類にまで入ってるんですけど。なんか今あんたに死んで欲しい。

 誰が読むのかわかってるの、ねえ。田舎のおじちゃんおばちゃんたちだよ。最初の1行で卒倒しちまうわ。書き直してください。


 ――黄復卿から関小玉への手紙

 俺が女に手紙出すって、この前出したようなやつしかないんだけど。

 そんならこれでどうだ。


 急いでこの手紙を書いております。お察しください。

 日に日に暑くなってきましたが貴女にはお変わりなくお勤めに励んでいることと存じ、影ながら喜んでおります。

 私も日々変わりなく暮らしておりますので、気にしないでください。

 先頃、貴女からの手紙が届き大変嬉しかったです。

 その時、いつも親しくしている職場の同僚から聞いたのですが、本当に驚きました。

 誰がそのような話を貴女の耳に届けたのでしょうか。私はそのような話があったことは少しも知りませんでした。

 私が貴女への想いを忘れ他へ気をゆるせましょうか。天地神明に誓ってそのようなことはございません。そのような真意のない話で貴女の心を惑わすなど迷惑なことです。

 私には貴女しかおらず、他所の女性などは目にも入らず、貴女との日々が懐かしく、こうして日々を過ごしております。

 いよいよ本格的な暑さとなりますがお仕事にお励みください。

 くれぐれもお体は大切に、こちらに戻れられた折にお目に掛かることを、年月恋しとお待ちしております。

 心惜しいのですがここで筆を止めます。


 ――関小玉から黄復卿への手紙

 こっちが引くほど情感豊かだとか、この手紙の中であたしとあんたの関係ってどういう設定になってんのかとか色々気になるけど、一番突っ込ませてほしいことを書きます。

 これ文林が代筆してるでしょ、なんで。

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