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ある皇后の一生  作者: 雪花菜
四章 左遷
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 ……といいたいところだが、実は半端に関わっている。不本意ながら。


 実は私服で街を歩いている最中、関小玉は彼らと何度かすれちがっていた。そしてやけに声をかけられていた。

 別に、いちゃもんをつけられているという訳ではない。そもそも彼らは関小玉の素性を知らない。というか、言っても聞いていない。

 きっと彼らには、駐留軍の新しい指揮官が女であるということなど、思いもよらないのであろう。

 ではなぜ、声をかけられているのかというと……。


 いわゆる、コナかけられているのである。


 自分自身をそう指すのもむなしいが、関小玉は美人ではない。だが、先日まで帝都で暮らしているということもあり、そこそこ洗練されている。そのような状態に行き着くまでには、本人ではなく、主に周文林の苦労があるのだが、それはさておき、どうやら自警団連中にはそこが魅力的に見えるらしい。田舎では、あるまじきこととされている断髪も、権威や因習に反発している彼らには好ましいものに見えているのか、何の問題もないようだった。

 現在ここでもてはやされている自警団が、おそらく帝都にいけば歯牙にもかからない存在になるであろうという状態と、逆の現象が起こっているのだ。


 めんどくさ!


 関小玉の率直な感想である。いや、本当、絶対に面倒くさい事態になるだろう、この展開。後で軍装の関小玉と会った時、「なんで素性を言わなかった!」とか「俺たちのことを騙したのか!」とか言い出すことになるはずだ。

 うるせえ、何回も言ったわボケ! と今から声を大にして言ってやりたい。


 一番最初に軍人として連中に顔合わせをしておけば良かったか、と頭を抱える日々である。といっても、今からそれをやるには、他の都合との兼ね合いでちょっとまずい。連中のことは一番最後に回すことになった。関小玉だって、下手を打つ場合はある。




 かくして、私的な用で出かけるのを自粛する日々である。従卒の楊清喜がそれなりに色々と世話をしてくれるので、それほど不便を感じないが、困ったことが一つ発生した。

 関小玉が口説かれているのを知った部下達が、ちょっと浮き足立ち始めたのである。関小玉が適齢期を超えているものの、若い女性であることに気づいたのか、なんだか若いのから微妙な主張を受けている。


 白菜30個くれるとか。


 関小玉はそういうもので喜ぶ人間だが、さすがに彼女と楊清喜とで消費するには多すぎる。仕方がないので、忙しいのに二人で一生懸命漬け物をこしらえるはめになった。

 さらに、ご年配の男性からは、見合いのような話をほのめかされている。どいつもこいつも頭に花咲いているのか。

 この点については、関小玉に対する好感が最近増したことが裏目に出たといえる。

 ここまでくると、自警団の妨害工作ではないかとすら思えてしまう。もちろん、そんなことないのはわかっているが。連中、馬鹿だから。馬鹿の無意識、恐るべし。

 かなり図太い関小玉も、最近実害を感じ始めてきた。早急に手を打たなくてはならない。具体的には、自分に良い関係の男がいるとほのめかさなければならない。


 問題は、誰を候補いけにえに選ぶかということだった。

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