エーベルによる短い講義ーその2
やぁ、ワキール。朝早くからどうしたの?神様の夢を見た?あぁ、君は預言者だったね。その夢が気になるのかい?何?「神様が俺の方に近づいてくる夢」を見たのか。で、その意味が分からない、と。なるほどねぇ、君はまだ自分の力を正確に理解できてないみたいだねー。まずは自分と自分の世界をわかることが大事だな。よし、じゃあヒントになるような話をしよう。っつうわけでちょっと難しいけど世界のお話だ。
世界ってのは3つの部分から出来ている。すなわちアニマ、マテル、ロゴス。アニマは精神世界、神やら精霊やらのいる部分だ。マテルは物質世界、まぁ俺らのいるとこ、この世だな。後な、ロゴスってのが面倒で、これは人間や動物の魂のことだな。
で、大事なのはこの3つの関係だ。まずアニマとマテルだけど、神と精霊でマテルとの関わり方が違うんだ。まず精霊だ。正確には「理の精霊」っつって、マテルのルールそのものだ。水は低い方に流れ、鉄は硬く、火は熱い、これは全部それぞれに精霊が宿ってるからそうなってんだ。逆に言うと、精霊はマテルに縛り付けられる存在でもあるわけ。精霊の理は絶対普遍、つまり変えるのは不可能。普通ならね。
そこで神様の登場だ。精霊はルールの数だけウジャウジャいやがる。が、しかし。この世に神は一人しかいない!これは絶対なわけ。「奇跡の小人」ミラ=ナヌスってのがそれだ。小人ってくらいで実は子どもらしい。で、コイツは何をするかっていうと奇跡を起こす!これだ!奇跡ってのはあり得ないことが起こるってことだろ?要するにコイツの仕事はマテルのルールをぶっ壊すことだ。
例えば船で事故って死にかけのやつがいたとする。99.9%助からん。でももし神様がこれを「見つけた」ら手を伸ばしてその0.1%の確率を拾い上げる。つまり事故ったやつは助かる!なぁ、奇跡だろ。でも、こいつは子どもだから気が向いたときにしか仕事をしない。まぁ、お遊びだな。子どもが干潟で貝殻を探すように奇跡を起こす。似たようなことが教典に書いてあって、この世界がラグーンって呼ばれてんはそういうことだ。
で、次が肝心のロゴスの話。ロゴスは性質から言うとちょうどアニマとマテルの中間にある。心は見えないけど確実に体の中にあるだろ。中間ってことはつまり、俺たちは普段マテルで暮らしてるけど、奇跡が起きりゃアニマを見ることが出来る!ってことだ。で、たまにお前みたいなやつが出てくる。神様に気に入られるとそうなるらしいけど、何を気に入ってるかはわかっとらん!
精霊の見えるやつは受言者、神の見えるやつは特別に預言者と呼ばれる。だからお前は預言者だ。コイツらはいろんな超能力が使えてだな、例えば結構特殊なんだがナヴィアス大聖堂の司教にオレグ・ガムザって人がいて、なんとこの人はロゴスが読める!ロゴスってのはあくまで根源的な感情やら自我やらで思考とは別、だから相手がなに考えてるかまではわからんだろうけど、それでもその人の感情やら本質は丸見えってわけだ。まぁ、この人はもっぱら生まれる前の赤ちゃんの性別がわかるってんで有名なんだけどね。ペイジンにも火と話せるルクレツィアっつう婆さんがいて、変な話がいっぱい聴けるから、暇な時にでも行ってやんな。一人暮らしだから喜ぶぜ、きっと。
んなわけで今日はここまで!詳しくは……って俺、宗教の本は書いてないわ。まぁ、不安かもしれんけど同類の話聴いたりして気楽にやんな。そのうち自分がなに者なのかもわかるって。