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コメディー短編(ファンタジー)

【コメディー版】一本線のセンタロウ

作者: 多田 笑
掲載日:2026/05/02

途中で狂気があります。


少しでも笑っていただけたら嬉しいです。

 一本線のセンタロウ。


 センタロウは、いつもひとりぼっち。

 数字の「1」も、漢数字の「一」も、一本線。

 だからセンタロウは、ひとりぼっちなのでした。


 センタロウの前を、たくさんの子どもたちが走っていきます。楽しそうに、笑いながら。


(いいなあ。ぼくも、あんなふうに友だちがほしいな……)


 センタロウは、しょんぼり。

 一本線の体が、くにゃりと曲がって、「く」の字になってしまいます。


(ぼくは一本線だから、友だちができないんだ……)


 なんでもマイナスに考えてしまうセンタロウ。

 「(マイナス)」も、やっぱり一本線だからです。


 しょんぼりしたまま立っていると──


 ビュウウウウ──。


 つよい風が吹いてきました。


「わあっ!」


 ヒュウウウウ──。


 センタロウは風に飛ばされ、どんどん遠くへ。


 やがて、ぽとりと地面に落ちました。


「ここ、どこだろう……?」


 きょろきょろしていると、ひとりのおばあさんがやってきました。


 にこにこと、やさしそうなおばあさんです。


「ほうほう。君は、一本線のセンタロウだね」


「えっ、ぼくのこと知ってるの!?」


「もちろんだとも。君がいるから、みんな幸せになれるんだよ」


「え……?」


 センタロウは、きょとん。


 おばあさんは、地面に字を書きました。


「ほら、見てごらん」


 『辛』


 そこへ、センタロウをそっと乗せると──


 『幸』


「“辛”いときも、君がいれば“幸”せになる」


「わあ……!」


 センタロウの顔がぱっと明るくなります。


(ぼく、すごいかも……!)


 おばあさんは、さらに字を書きました。


 『汁』


「これは“しる”」


「うん」


 センタロウを乗せると──


 『汗』


「君のおかげで、“汁”が“汗”になる」


(ん……?)


「みそ汁が、みそ汗になるんだ」


(いや、ならなくていいよ!? ていうか絶対イヤだよ、それ!?)


 センタロウの顔が、ひきつります。


 おばあさんは気にせず、次を書きます。


 『貝』


 センタロウを乗せて──


 『具』


「君がいれば、“貝”が“具”になる。クラムチャウダーかなあ……じゅる……」


(なんで急に料理!?)


 センタロウは、だんだん不安になってきました。


 おばあさんは、また書きます。


 『止』


 センタロウを乗せると──


 『正』


「“止”も、“正”になる」


(おっ、これはいい感じのやつ!)


「道路の“止まれ”を“正まれ”にしてやろうかねえ」


(いやいやダメでしょ!!)


 センタロウは、完全に後ずさりしました。


(この人……なんかおかしい……)


 すると、おばあさんは──


「ヒヒヒ……」


 と、不気味に笑いながら、地面に書きました。


 『死刑囚』


(やばい!!! 完全にアウトなやつ!!!)


 センタロウは逃げようとしました。


 しかし、おばあさんが素早く、センタロウをつかみます。


「ほれ」


 ひょい、と横にして、『囚』の上に。


 『死刑因』


(え……?)


 おばあさんは、真ん中の字をすっと消しました。


 『死 因』


「ヒヒヒ……センタロウの“死因”は、なんじゃろうなあ……」


「うぎゃあああああああ!!」



 ガバッ!!


 センタロウは飛び起きました。


「はあ……はあ……夢……?」


 あたりを見回すと、もとの場所。

 子どもたちの笑い声も聞こえます。


「よ、よかった……」


 センタロウは、ほっとしました。


 この数か月後、センタロウは優しいおじいさんと出会うのです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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童話版は、こちら 「一本線のセンタロウ」
― 新着の感想 ―
おもしろい文字遊びでした。 こういうの考えるのって楽しいですね。
あのセンタロウにこんな過去があったとは……Σ(*´▽`*;) おばあさん、具でクラムチャウダーって、みそ汁じゃないのー!? 実は童話版の時から、タイトルを見るたび、道路の白いセンターラインが主役のお…
センタロウとばあさん ことば遊びのあとは、最後にばあさんの杖役になる展開かとおもた それにしても『死刑因』てなんやねん(苦笑)
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