【コメディー版】一本線のセンタロウ
途中で狂気があります。
少しでも笑っていただけたら嬉しいです。
一本線のセンタロウ。
センタロウは、いつもひとりぼっち。
数字の「1」も、漢数字の「一」も、一本線。
だからセンタロウは、ひとりぼっちなのでした。
センタロウの前を、たくさんの子どもたちが走っていきます。楽しそうに、笑いながら。
(いいなあ。ぼくも、あんなふうに友だちがほしいな……)
センタロウは、しょんぼり。
一本線の体が、くにゃりと曲がって、「く」の字になってしまいます。
(ぼくは一本線だから、友だちができないんだ……)
なんでもマイナスに考えてしまうセンタロウ。
「-」も、やっぱり一本線だからです。
しょんぼりしたまま立っていると──
ビュウウウウ──。
つよい風が吹いてきました。
「わあっ!」
ヒュウウウウ──。
センタロウは風に飛ばされ、どんどん遠くへ。
やがて、ぽとりと地面に落ちました。
「ここ、どこだろう……?」
きょろきょろしていると、ひとりのおばあさんがやってきました。
にこにこと、やさしそうなおばあさんです。
「ほうほう。君は、一本線のセンタロウだね」
「えっ、ぼくのこと知ってるの!?」
「もちろんだとも。君がいるから、みんな幸せになれるんだよ」
「え……?」
センタロウは、きょとん。
おばあさんは、地面に字を書きました。
「ほら、見てごらん」
『辛』
そこへ、センタロウをそっと乗せると──
『幸』
「“辛”いときも、君がいれば“幸”せになる」
「わあ……!」
センタロウの顔がぱっと明るくなります。
(ぼく、すごいかも……!)
おばあさんは、さらに字を書きました。
『汁』
「これは“しる”」
「うん」
センタロウを乗せると──
『汗』
「君のおかげで、“汁”が“汗”になる」
(ん……?)
「みそ汁が、みそ汗になるんだ」
(いや、ならなくていいよ!? ていうか絶対イヤだよ、それ!?)
センタロウの顔が、ひきつります。
おばあさんは気にせず、次を書きます。
『貝』
センタロウを乗せて──
『具』
「君がいれば、“貝”が“具”になる。クラムチャウダーかなあ……じゅる……」
(なんで急に料理!?)
センタロウは、だんだん不安になってきました。
おばあさんは、また書きます。
『止』
センタロウを乗せると──
『正』
「“止”も、“正”になる」
(おっ、これはいい感じのやつ!)
「道路の“止まれ”を“正まれ”にしてやろうかねえ」
(いやいやダメでしょ!!)
センタロウは、完全に後ずさりしました。
(この人……なんかおかしい……)
すると、おばあさんは──
「ヒヒヒ……」
と、不気味に笑いながら、地面に書きました。
『死刑囚』
(やばい!!! 完全にアウトなやつ!!!)
センタロウは逃げようとしました。
しかし、おばあさんが素早く、センタロウをつかみます。
「ほれ」
ひょい、と横にして、『囚』の上に。
『死刑因』
(え……?)
おばあさんは、真ん中の字をすっと消しました。
『死 因』
「ヒヒヒ……センタロウの“死因”は、なんじゃろうなあ……」
「うぎゃあああああああ!!」
◇
ガバッ!!
センタロウは飛び起きました。
「はあ……はあ……夢……?」
あたりを見回すと、もとの場所。
子どもたちの笑い声も聞こえます。
「よ、よかった……」
センタロウは、ほっとしました。
この数か月後、センタロウは優しいおじいさんと出会うのです。
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