表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/6

4食目 闇取引でカップ麺を買う

 闇夜の中の路地裏が取り引きの場所だった。ネオンの灯りが船の向こうから見える町並みみたいにこの夜の海からよく見えた。近くでは飲食店の排気口から美味しそうな家系ラーメンの香りがした。それを(さかな)にシガレットを咥えていた。


 すると、一台のタクシーが入ってきた。激セマの路地なので車両が入るか入らないか瀬戸際だったが、どうにかドアを開けることが出来た。現れたのは見るからに怪しげな黒ずくめの男。腰が少し曲がっていて、小さいサングラスをかけていた。


 小男はアタッシュケースを抱えていた。タクシーが去るのを確認すると、彼は「どうもどうも、こんばんはぁ」と帽子を外して挨拶してきた。頭頂部が禿げていた。


「例のものは……持ってきたんでしょうね」


 私はシガレットをチュパチュパ舐めながら尋ねた。小男は「もちろんでございます。お嬢様、ひひひひひ」と不快な笑い声を上げるとアタッシュケースの鍵を開けて重々しく開いた。


 現れたのは楕円形のカップ麺だった。誰もが知る大手のメーカーで王道の醤油味のラーメンだ。私は黒い革の手袋をはめると触ってもいいかと尋ねた。小男は「もちろんでございます」とニタッと笑った。


 慎重に手を取るとキチンと薄いビニールに包まれていた。賞味期限も問題ない。まさに完璧な物だ。


「盗んできたんじゃないでしょうね」

「とんでもございません。キチンとスーパーで買ってきました。ほら、証拠です」


 小男は私に細長い紙を見せてきた。うん、ちゃんとしたレシートだ。


「いくら?」

「ひひひ、本来であれば百万円と行きたい所ですが……今回は特別に三十万円で如何でしょう」


 小男はサングラスでも貫通するくらい瞳を光らせた。コンビニやスーパーでは三百円以内で買えるが、私の場合は入手困難に等しい。なので、この金額は妥当だ。


「いいわ。はい」


 私はトレンチコートのポケットから袋に包んだお金を渡した。慎重な小男は受け取ってから万札を数えていた。


「五十万預かりまして……二十万のお返しです」


 小男は親切にもお釣りを渡してくれると、アタッシュケースからカップ麺を渡した。


 これで四年ぶりのインスタントラーメンを食べれる――そう思った時だった。


「動くなっ!」

「警察だっ!! 食品過剰金額売買違反で逮捕するっ!!」


 突然眩しいくらいに光が襲い掛かってきたかと思えば、狭い路地に大勢の警官が銃を突きつけてきた。私は突然のことにビックリしてしまい、カップ麺を手からこぼれ落としてしまった。


「あっ……」


 手を伸ばそうとしたが、カップ麺はコロコロと転がっていき、大勢の警官達に踏まれてしまった。


「私の……カップ麺……」


 絶望に打ちひしがれていたが、今は逃げることが先決だ。売人を盾にして私は走った。当然追いかけてきた。


 複雑な路地をうまく使ってジグザクと進んでいるうちに距離が出来た。巻いたかなと思ったが上空からヘリが飛んできた。


「大人しくしなさーーい!!」


 拡声器で私に止まるように言われた。当然刑務所には行きたくないので走った。


 が、空腹のせいで体力が底を尽き、一歩も動けなくなってしまった。その結果、大勢の警官に取り押さえられ、私は捕まってしまった。


 一週間程度の拘束と書類送検で釈放された。



次回、メルヘンなお店……もしかして当たり?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ