3食目 世紀末バーゲンセール
20XX年、人類は物価高に悩まされていた!
あらゆる店が値上げする中、孤島にあるスーパーだけは大規模な値下げを行っていた。
そうバーゲンセールである!
最安値を求めてあらゆる勢力がこじんまりとしたスーパーへと押し寄せる。
私もその一人だった。レンタルでヘリコプターを借りて操縦すること数時間。上から見下ろすとあらゆる船が一直線で一つの島へと向かっていた。
あそこが噂に聞く最安値で買えるスーパー……ふと思ったけど、なんでわざわざこんな思いをして買いにいかなければならないのだろう。
たとえ高くてもいいから普通のスーパーに――と思ったけど、普通のが行けないからこんな特殊な所まで来たんだった。
さて、ヘリコプターで着地すると、豪華客船から続々と修賦が上陸してきた。修賦とは主婦や主夫とは違い、最安値の物を手に入れるためなら、あらゆる手段を使う卑劣な群衆のことである。
その証拠に非合法で入手したと思われるマシンガンやショットガンなどの銃器や火薬などを持っていた。
私の武器は脱ぎたてのストッキングしかない。草むらを迷彩代わりにして目的地を目指した。
すると、至る所から銃撃戦が始まった。
「一玉三十円のレタスは私のもんだーーー!!!」
「二つで百円の小麦粉は俺様のだ!!」
「詰め放題! 詰め放題!」
悲鳴、雄叫び、怒号、絶叫――三百六十度が戦場の如き戦慄が漂っていた。方位磁石でスーパーの方角を確認しながら匍匐前進で進んでいると、鶏の鶏冠の髪型をした大男がエコバッグを持ってウロウロしていた。
「しにさらせぇええええ!!!」
「ぐへぁっ!」
殺られる前にやってやろうとストッキングを奴の極太の首に巻きつけて気絶させた。
しかし、そこへバギーに乗った夫婦がやってきた。
「おらら〜〜!! 道を開けろ〜〜〜!!」
「半額パンを寄越せぇ〜〜!!!」
手当り次第にマシンガンを乱射させた。危うく被弾しそうになったが運が良かった。全部防弾チョッキに当たった。
ストッキングで敵を蹴散らしながら進んでいくと、悪夢のような鐘が鳴った。
「ただいまよりーーー!! 全品半額セーーール!!!」
恐怖のアナウンスが流れた。半額という魔力は大勢の修賦を引き付け、目と鼻の先にある長方形の建物にわんさかと集まってきた。
夥しい銃声と怒声と悲鳴が響き渡る。もしこのまま突っ込んだら人生が終ってしまうだろう。だが、ここで引き下がる訳にはいかない。
「いくぞっ!! うぉおおおお!!!」
私はストッキングを振り回しながら修賦達に立ち向かった。
※
そんな世紀末バーゲンセールを経て手に入れた食材は食パンとマヨネーズのみだった。
だが、これは私にとって大収穫に等しかった。値段はどうでもいいとして、スーパーで買い物できたということが喜びが大きかった。最後にレジのパートのおばさんを見かけたのはいつなのか忘れるくらい行っていなかった。
さぁ、この食パンとマヨネーズをどう料理しよう。私が今考えているのは食パンの上にマーガリン代わりにマヨネーズをウニョニョニョニョと出してトースターに入れて香ばしく焼き上げる方法だ。
マヨネーズ部分がカリカリになったトーストを食べて出勤するのはさぞかし気分が良いんだろうな。
私はそう期待しながらトースターに入れようと思ったが、そもそも持っていなかったことを思い出した。
よし、次はトースターを買いに行こう。
だがしかし、その旅はバーゲンセールよりも熾烈な戦いの幕開けだった――続かない。
次回、闇取引で警察に追われる