2食目 ミッション・イン・弁当
「で、できた……」
全身ボロボロになったが、念願の弁当が完成した。表ルートでは入手困難な大手の冷凍食品を闇取引で手に入れたおかげで、約束された味の弁当を作る事ができた。
鶏のつくね、ほうれん草とコーンのバター炒め、鮭の切り身とご飯――うん、申し分ない。
調理過程も長い道のりだった。電子レンジが謎の故障を起こしたり、切り身の鮭が意識を吹き返して往復ビンタされたりと散々な目に合ってしまった。
断言しよう。今、この弁当は金や宝石よりも高い。
あとはこれを会社まで運ぶだけだが、これが一番難しい。家の中も十分危険だったが、外は今の百倍ぐらい危険だ。
だが、弁当を食べるために有給は取れない。出勤しないとクビにされてしまう。
「よし」
私は万全の状態でお弁当を運ぶため、スーツでも動きやすい生地で作られたものにした。お弁当はミサイルでも壊せない頑丈なアタッシュケースに入れて慎重に運んだ。
まず、ドアを開けて左右を確認した。何もない事を確認すると一歩踏み出した。
が、マンションの廊下のはずなのにヌーの群れが迫ってきていた。私はすぐさま縁に手を掛けて飛び降りた。
二階建てのマンションだから、最悪捻挫で済む。しかし、一階では大口を開けたモンスターが待っていた。
私はすぐに靴の機能を使った。こんな事もあろうかと両足の靴に飛行能力を備えておいた。踵を叩くと両足から火花が出て、モンスターに捕食されずに済んだ。
もちろん激しい動きにあってもアタッシュケースは無事だった。このまま飛んでいけば無事に会社に着ける――そう思っていた。
何の脈絡もなく竜巻と台風と豪雨が襲い掛かってきた。範囲は私だけ。雨と風と雷が三つ巴にもみくちゃになり、当然靴は故障してしまった。
「いやああああああ!!!」
みるみるうちに落ちていく。この展開だったらヒーローが助けてくれるはず――と思ったが現実はそうは行かず、コンクリートの床に叩きつけられてしまった。
「うっぷ」
思わず吐きそうになったが、グっと堪えた。万が一の時のことを想定してスーツをダイヤモンド並に頑丈にして正解だった。ゆっくりと立ち上がり、アタッシュケースに何のへこみがない事を確認すると、タクシーを呼んだ。
運転手はごく普通の人だったので、大金を支払って会社の前まで行くように頼んだ。運転手は「はい」と無愛想な返事でハンドルを握った。うんうん、理想的な運転手だ。
腕時計を見るとまだ遅刻ではなかった。このまま渋滞に巻き込まれる事もなく着いてほしいなと思った時、誰かが乗り込んできた。
「頼む! あの赤い車を追ってくれ!」
若い男が運転席をのり出す勢いでフロントガラスの向こうで爆速で走っている赤い車を指差した。
「分かりました……あんちゃん」
すると、さっきまで大人しかった運転手がサングラスとタバコを吸い始めて豪快にアクセルを踏んでいった。どうやら映画みたいな展開だと人格が変わるタイプらしい。
その後は怒涛のカーアクションが始まった。日本なのに銃撃戦が始まったり、何台ものパトカーに追われたり、クルクル回転したり宙返りしたりなど夢なら覚めてほしいことばかりだった。
結局大破して徒歩で会社を向かうことになってしまった。当然遅刻になってしまい、上司にカンカンに怒られてしまった。
だが、私には弁当がある――そう思って自分の机を見た時、アタッシュケースが開かれている事に気づいた。
上司の説教を振り切って席に戻ると、お弁当箱が空っぽだった。
「私の……弁当……」
一気に疲れが出てしまい、気絶するように倒れてしまった。
次回、世紀末バーゲンセール開幕ぅ!!




