表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

気づいてしまった人たち

テレビをつけたその日、真由は違和感に気づいた。


いつも通り、ニュース番組が始まる。

だが、キャスターの言葉が妙に歯切れ悪い。


「……あなたのための時間が、まもなく始まります。」


え? 聞き間違い?

真由は眉をひそめた。


その直後、SNSの通知が鳴った。

クラスメイトの綾乃が、ストーリーでつぶやいていた。


「最近テレビがこっち見てくる気がするの、私だけ?」


心臓が一瞬、強く跳ねた。

真由は思わずメッセージを送る。


「それ、私も思ってた。昨日の夜、テレビの中で名前呼ばれた気がした。」


するとすぐに既読がついて、綾乃から返信がきた。


「え、それ本当に?

私もこの前、『大丈夫、あなたは見守られてます』って言われた気がして……

でも怖くて誰にも言えなかった。」


しばらくふたりでやりとりをしていたが、

その後も不思議な投稿がいくつも目についた。


「テレビがまるで今の私の気持ちを読んでるみたい」

「この番組、私のために作られたのかな」

「“あなたの孤独は、孤独じゃない”って、聞こえた。」


思っていたよりも、多くの人が「気づいて」いた。

ただ、声に出さなかっただけ。

疑われるのが怖くて、笑われるのが嫌で、

誰も言わなかっただけだった。


真由は画面の中の誰かに向けて、そっとつぶやいた。


「ありがとう。

わたし、ひとりじゃなかった。」


すると、その夜の番組のエンディングで、また流れた。


「あなたが気づいたことは、誰かの希望になります。

目をそらさないで。世界は、あなたとともに変わっていきます。」


画面が静かにフェードアウトし、深夜の静けさが戻ってきた。


でも、真由には確信があった。


もう、わたしだけの秘密じゃない。

“誰か”の声は、少しずつ、世界中に届き始めている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ