スノーは、お殿様?
僕と美鈴さんは、手を繋いで歩く。
スノーは、僕達の後ろを歩く。
暫く歩いていると、何かの大群が走ってくる足音が聞こえる。
僕達が進む道の左右から、たくさんの黒い集団が走ってくる。
黒い集団は、ウルフ達だった。
いくつもの群れが合流して、大集団で僕達の方に走ってくる。
そして、道の左右に到着すると、ウルフ達は、伏せをした。
道の左右にウルフ達が伏せている。
時代劇に出てくる、大名行列みたいだ。
スノーは、犬?狼?のお殿様なのかな?
僕達の目的は、魔物の討伐じゃ無いから、余計な労力も無く、通過出来てラッキーだ。
僕達は、一度も戦闘する事なく、地下4階と5階を通過する事が出来そうだ。
地下5階の突き当たりに到着すると、石造りの扉があった。
僕達が扉の前に立つと、ゆっくり扉が開く。
僕達が中に入ると、扉が閉まった。
中は広い空間で、奥の方には、1段高くなっている場所があった。
その1段高くなった場所に、光の粒子が集まりだす。
光が収まると、そこには1頭のウルフがいた。
さっきの草原にいたウルフより、2回りほど大きなウルフだった。
ダンジョンマップに、1~5階のフロアボスと書いてあった。
このボスを倒すと、一番奥にある、石の扉が開き、地下6階に繋がるトンネルの中に入れるそうだ。
僕は、腰に下げている風の短剣を思い出す。
風をイメージして振ると、風の刃が飛び出す。
試してみるか?そう思っていると、スノーが巨大な姿のまま、僕達の前に出て「ワオ~ン!」と鳴いた。
すると…フロアボスのウルフは、床に寝転びお腹を見せる。
…何が起きたんだ?僕が考えていると、機械的な女性の声が頭の中に響く。
《フロアボスが戦意を喪失しました。討伐したものと見なします》
床に寝転び、お腹を見せているウルフの前に、宝箱が現れる。
罠は無いみたいだ。
宝箱の目の前には、ウルフがいるから、美鈴さんに何かあったら困る。
だから、僕が宝箱を開けた。
中には、瓶に入った栄養ドリンク剤みたいな物が、2本出てきた。
僕が中身を取り出すと宝箱は、光の粒子になって消えた。
僕は、その2本の瓶をリュックサックにしまった。
ボス部屋の一番奥にある、石造りの扉が開いた。
僕達は、その扉の中に入る。
下に向かう階を進んで行くと、支店長が言っていた、石造りの部屋があった。
僕達は、中に入り、部屋の中心部分にある移転石に手を触れる。
すると、頭の中に機械的な女性の声が響く。
《移転先を選んで下さい》
僕達は、地下1階の移転石しか触れていないので、行き先は地下1階しか選べない。
僕は目の前に現れた、透明なボードに記載されている地下1階を押す。
すると、目の前が歪んだと思った次の瞬間には、地下1階に移動していた。
精霊達は、僕の肩や頭の上に乗っかっていたから、僕と一緒に移転したみたいだ。
手荷物みたいな扱いなのかな?
そんな事を考えていると、美鈴さんが移転してきた。
手に持っているカバンと、その中に居る白玉は、美鈴さんと一緒に移転が出来ていた。
しかし…今回、大活躍したスノーの姿が無い!
美鈴さんが慌ててスノーを召喚する。
美鈴さんが「スノー。ごめんね!」と言ってスノーをもふる。
僕も一緒にスノーをもふる。
2人で、もふもふして、スノーの機嫌を取った。




