ここ掘れワンワン?
僕と美鈴さんは、いま、ダンジョンに来ている。
支店長から、ダンジョン地下5階を通過して、地下6階に向かう途中にある、移転石まで行く様に言われたからだ。
夏休みが終わる迄には、まだ、時間があるし、義務では無いから気楽だ。
2人で手を繋いで、のんびり歩く。
地下3階を通り過ぎて、地下4階に繋がるトンネルの中にある階段を降りてゆく。
地下4階に到着!入口付近は開けているけど、その先は、獣道みたいな細い道が何本か見える。
「どの道を行こうか?」僕は、隣にいる美鈴さんに尋ねる。
すると、美鈴さんは「拓哉さんが決めて。私は拓哉さんの後をついて行くから」と言う。
う~ん…精霊達に偵察に行ってもらおうか?僕が考えていると、美鈴さんの隣で座っていた、スノーが大きくなる。
大型犬くらいまで体が大きくなり「ワン!」と鳴いた。
スノーが鳴くなんて、珍しいなぁ~と思っていると、スノーは僕の前を少しだけ歩き、そして僕の方を振り返る。
美鈴さんが「スノーが付いて来てって言ってるみたい」と言った。
そこで、スノーの後を付いて行く事にする。
精霊達には、警戒を頼む。
ゴブリンの待ち伏せ攻撃を避けるためだ。
しかし、精霊達は、近くで魔物の気配を感じないみたいだった。
スノーが鳴いたからかな?僕は、そんな事を考えてながら、スノーの後を付いて行くと、開けた場所に出た。
真ん中に、凄く大きな木が1本だけ生えていた。
するとスノーは、大きな木の根本に行き、匂いを嗅ぎながら少しづつ場所を移動する。
暫くすると、スノーが木の根本を掘り始めた。
僕達は、黙ってスノーを見守る。
スノーが、僕達の方を振り返り「ワン!」と吠えた。
僕達がスノーが掘った場所に行くと、小さな宝箱が地面に埋もれていた!
美鈴さんが「凄い!宝箱だ!スノーは偉いね!」と言って、スノーをもふる。
その間に僕は、精霊に罠が無いから?確認してもらった。
どうやら、罠は無いみたいだ。
そこで僕は、美鈴さんに「宝箱を開けてみて!」と言うと、美鈴さんは「分かった!」と言って、宝箱を開けた。
中には、巾着袋が入っていた。
巾着袋の口を閉める紐の部分が、赤色のが2個。
青色のが1個。
合計3個だった。
宝箱は、巾着袋を取り出すと、光の粒子になって消えた。
巾着袋は、探索者協会で鑑定をしてもらう事にして、僕が背負っているリュックサックにしまった。
僕達は、再びスノーの後を付いて歩く。
暫く歩くと、地下5階に向かうトンネルが見えた。
僕達は、トンネルの中に入り、階段を降りて行く。
ダンジョン地下5階は、草原地帯だった。
でも、地下1階より、背の高い植物が多い。
この階層には、ウルフと言う黒い毛並みの狼型の魔物が生息しているそうだ。
ウルフは、集団で狩りをする習性があり、しかも、獰猛でしつこい。
僕は精霊達に、前後左右に1体づつ展開する様に指示をする。
僕が歩き始めようとした時、スノーが巨大な姿になり「ワオ~ン!ワオ~ン!」と鳴いた。
そして大きな姿のまま、僕達の後ろに回り込み、鼻で僕達の背中を押す。
どうやら、自分の前を歩けと言っているみたいだった。
そこで、僕と美鈴さんは、手を繋いでスノーの前を歩き出した。




