美鈴は宝箱を開ける。
風の上位精霊から許可を得たので、宝箱を開ける事にする。
僕は何度も開けているから、美鈴さんに開けて欲しいとお願いした。
美鈴さんは、嬉しそうだ。
美鈴さんの笑顔を見ると、僕も嬉しい。
美鈴さんが宝箱を開ける。
すると、中から薄い黄緑色の装備一式が出てきた。
白いラインが入った、お洒落なデザインだ。
美鈴さんが、中に入っていた装備一式を取り出すと、宝箱は光の粒子になって消えた。
僕が美鈴さんに贈った、水の装備と色違いのお揃いみたいだ。
ブーツ・長ズボン・長袖のシャツ・胸当て・パーカー・手袋と、黄緑色の短剣の7点セットだった。
美鈴さんが「色違いのお揃いだよ!」と言って笑った。
そして、美鈴さんは「私は、拓哉さんの事が心配だったの。だから、これからは、この装備を身に付けてね!」と言った。
僕は、精霊に守られているから、危険だと感じた事は一度もなかったけど、美鈴さんは心配してくれていたみたいだ。
僕は「分かったよ!これからは、ダンジョンに入る時は、この装備を身に付ける。だから、心配しないで!」と言って笑った。
取り敢えず、魔石を換金する時に、鑑定をしてもらい、装備の性能を確認する事にする。
それから、風の上位精霊から、お城の中を自由に歩く許可をもらい、美鈴さんと城内を探検する事にした。
食堂には、長いテーブルがあり、左右に椅子が設置してあった。
調理場には、皿や食器類も揃っていたが、使った形跡は見当たらなかった。
魔物も精霊も食事を取らないから、設備があるけど、使う必要がなかったのかも知れない。
武器庫があったが、中には何も入っていなかった。
今度は、塔に登ってみる。
この天空の城で、一番高い場所だ。
螺旋階段を上がって行く。
上には見張りの為の部屋があり、とても見晴らしが良い。
僕の隣で美鈴さんが「綺麗だね!」と言った。
僕は、美鈴さんの事を見つめながら「うん、綺麗だ。」と言う。
すると、美鈴さんの顔が、僕の方にゆっくりと動き、僕達は見つめ合う。
美鈴さんが、瞳を閉じた。
僕は、美鈴さんにキスをした。
心臓がドキドキするのがわかる。
それから僕は、美鈴さんを抱き締めた。
僕達が暫く抱きあっていると、スノーが「ワン!」と鳴く。
僕達は、慌てて離れる。
僕は、恥ずかしくなり、窓から外を見た。
遠くに、地下2階に続く一本道が見える。
一本道を人が歩いている。
あのシルエットは…さっき1階ロビーで見かけた、ロボットさんじゃないか?
隣にもう一人が歩いている。
と言う事は、隣の人は、木こりさんだな。
でも、不思議だ。
地上から雲を見ると、ただの雲にしか見えない。
いま、僕達が居る高い塔も見えない。
でも、雲の上からは、地上が良く見える。
人の目を欺く魔法がかかっているのだろうか?
幻影魔法?それとも、隠蔽魔法かな?
僕は、考えても分からないから、支店長に丸投げする事にする。
僕達は、来た道を引き返して、謁見の間に戻ってきた。
風の上位精霊は、邪魔な宝箱が無くなり、ご機嫌だった。
僕達は、今後、城への出入りは自由だと言われた。
そして、僕達に、何処でも好きな部屋を使って良いと言う。
美鈴さんに話すと「やった!凄く嬉しい!精霊さん、ありがとう」と、お礼を言った。
僕も精霊にお礼を言う。
美鈴さんは、お城に住むお姫様気分なのかな?
ご機嫌で、鼻歌が聞こえてくる。
僕達は、自分の部屋を決めるため、城の居住エリアの中に入った。
居住エリアの一番高い場所に、大きな部屋を見つける。
キングサイズの巨大なベッドがある部屋だ。
布団もふかふかだ。
王様の部屋かな?
僕は、この部屋に決めた。
精霊は眠らないし、部屋は必要ないから、問題ないよね?
僕は、天空の城の王様気分だ!
うふふ。
美鈴さんは、隣の部屋を見に行った。
隣の部屋も、広さは同じらしい。
違うのは、ベッドサイズ。
クイーンサイズのベッドが設置されているそうだ。
それと、クローゼットが、この部屋より広いらしい。
美鈴さんは、隣の部屋に決めたそうだ。
僕とお隣さんだ。
このフロアーには、この2部屋しか無い。
部屋の奥には、シャワー室と、トイレもある。
魔道具が設置されていた。
僕は試しに、さっき謁見の間の隅に置いてあった魔石をセットしてみる。
スイッチらしいボタンを押すと、シャワーから水が出てくる。
レバーを横に回すとお湯になった。
食堂の厨房にも、魔道具が設置されていたから、食材さえあれば、ここで生活が出来そうだ。
それに、風精霊が城を守っているから、セキュリティもバッチリだ!
僕が一人暮らしを始めた時に、スーパーやドラッグストアで、レトルトカレーやカップ麺を買い、家に備蓄してあった。
でも、最近は中森家で食事をご馳走になっているから、全然減ってない。
家から少しづつ、ここに運び込もう!
探索者協会には、支店に併設されたホテルがある。
探索を終えて、夜中に戻って来た探索者や、朝一番で探索する人が、宿泊する為の施設だ。
探索者は、安く泊まれるけど、ただじゃない。
でも、ここならただで泊まれる。
うん。
良い考えだ。
美鈴さんに提案しよう!
家賃も無く、宿泊費も無料で、精霊のガードマン付きの優良物件。
見晴らしも良く、おまけに王様が使うみたいな広い部屋。
大きなベッドに、ふかふかの布団。
僕が祖父から相続した家より良いかも知れない。
人生、何が起こるか分からない。
将来、もしも僕が路頭に迷ったら、美鈴さんと、ここで暮らそうかな?




