私の運命の人①
私が小学生の時に父が亡くなった。
その時、2歳上の兄は中学生だった。
兄は「美鈴の事は俺が守るから心配するな」と言ってくれた。
母は「私が働くから心配しないでね」そう言って笑った。
私は中学生になり、身体も女性らしくなってきた。
クラスの女子達の話題は、もっぱら恋話だ。
○○君は、格好いいとか、○○ちゃんが○○君に告白されたとか。
私も、誰かに告白とかされるのかな?
そんな事を考えたりもしたが、結局、私は誰からも告白される事も無く、中学校を卒業した。
幼馴染みで親友の山田美里ちゃんは、中学校の卒業式の日に、同級生の青山君から告白され、付き合う事になったと、美里ちゃんから報告があった。
良いなぁ…私に魅力が無いのかな?
私が母に愚痴ると母は言った。
「運命の人は、そのうち現れるから心配いらない。焦る必要はない」と。
母の時もそうだったらしい。
何時の間にか父が現れ、自然に付き合う様になり、そして結婚したと。
私にも、そんな人が現れるかな?
現れると良いな。
高校の入学式の日に、私と美里ちゃん、青山君の3人で電車に乗って高校に向かう。
私と美里ちゃんは、同じクラスだった!
でも、青山君は別のクラスで、美里ちゃんは残念そうだ。
私の席は真ん中の列の一番後ろ。
隣の席には男子が座っていた。
私は声を掛ける「おはよう」
すると、その男子も「おはよう」と挨拶してくれた。
白石拓哉さんと言うそうだ。
それから少しずつ仲良くなり、休み時間には、美里ちゃんと白石君の3人で、お喋りする様になった。
私達が楽しくお喋りしていると、何時も高杉君が話に割り込んでくる。
たしか…中1の時に同じクラスだった気がする。
高杉君の家はお金持ちらしく、自慢話をしてくる。
でも、それは高杉君のお父さんや、お爺ちゃんが偉いのであって、高杉君は、たまたまそんな家の子に生まれただけ。
人の手柄を自分の手柄みたいに言うのは違うと思う。
それに比べて、白石君は凄い。
同じ歳なのに、もう一人暮らしをしている。
大変な事も多いと思う。
でも「自分で決めた事だから」と言って笑った。
笑顔がとても素敵だった。
彼の笑顔を見ていると、胸がキュンとなる。
その時の私は、まだ、隣の席に座る白石拓哉さんが、私の運命の人だとは思っていなかった。




