右側の壁の調査が終わる。
魔法の杖は、上の部分に赤色の大きな魔石が付いた、とても綺麗な杖だった。
鑑定スキルを持っていない俺が見ても、上質な杖だと分かる。
しかし、拓哉も美鈴も杖は必要ないと言う。
たしかに2人は魔法職では無い。
魔法の杖と、リッチの魔石は、俺が預かる事になった。
俺の指示で、部屋の中の探索が始まった。
スタッフがピリピリした雰囲気で、調査をしている。
そんな中、白い仔犬をもふもふして、暇を潰している者がいる。
拓哉と美鈴だ。
取り敢えず、この2人にしてもらう仕事はない。
「僕達、帰っても良いですか?」と拓哉が聞いてくる。
「まだ、駄目だ。勝手に帰るなよ!」俺が言う。
「暇なんで、トンネルの外で待ってます!」
拓哉と美鈴がトンネル出口に向かって歩き出す。
調査したが、何も発見出来なかった。
魔力探知機で魔力測定をしたが、魔力を感知出来ない。
念のため魔法職の者にも聞くが、魔力は感じないと言う。
カーバンクルが魔法陣を破壊したから、もう危険は無いかも知れない。
しかし、ここはダンジョンだ、油断は出来ない。
最低でも半年は、定期的に魔力量の測定が必要になる。
今日の調査終了をスタッフに告げて、トンネル出口に向かって歩く。
トンネルを出ると、拓哉と美鈴がレジャーシートを広げ、そこに座ってお茶を飲んでいる。
拓哉が「支店長も食べますか?このクッキーは美鈴さんの手作りなんです。美味しいですよ!」と言って、俺にクッキーを手渡す。
俺は貰ったクッキーを食べる。
「うん。確かに旨いな。素朴な感じが良い」
すると、シーフの男が「何やってんですか?支店長?」と聞いてくる。
探索が無事終了し、気が抜けていたのかも知れない。
拓哉のペースにのせられてしまった。
シーフの男は、溜め息をついて、足場を降りて行った。
ここはダンジョン。
何が起こるかわからない。
俺は気を引き締める。
「拓哉、美鈴。帰るぞ!」
俺が言うと、2人は荷物を片付け、俺の後ろをついてくる。
支店に戻った俺は「やっと終わった!」と、一人言を言い、大きな溜め息をついた。




