拓哉と美鈴は、リッチを討伐する。
土曜日になり、約束通りに拓哉がやって来た。
美鈴も一緒だ。
俺は危険を伴うから、美鈴に残れと言う。
しかし美鈴は、拓哉のパーティーメンバーだから、一緒に行くと言う。
探索者協会では、パーティーを推奨している。
何かあった時、仲間でカバーし合い、生存率が上がるからだ。
美鈴は、拓哉のパーティーメンバーで、パーティーで行動すると言われると断れない。
俺は承諾した。
拓哉が俺をジロジロ見る。
俺は、ブーツを履き、皮の鎧と、頭にヘルメットを被っている。
何時もダンジョンに入る時の格好だ。
「拓哉、どうした?」俺が聞く。
すると拓哉は「普段と違う格好だから、気になって」と言う。
「これが普通なんだからな!お前達がおかしいんだ!」
拓哉も美鈴も、スニーカーを履き、長ズボンに長袖のシャツ。
防具も何も無い。
美鈴は帽子を被り、手にバッグを持っている。
あの中には、カーバンクルがいるはずだ。
そして、足元には真っ白な子犬。
強力な攻撃力と防御力を持っている。
心配いらないのか?
シーフの男が俺のところに来て「何ですか?あれ?」と言って、拓哉達を指差す。
俺は「気にするな、疲れるだけだ」そう言うと、シーフの男は、それ以上何も言って来なかった。
地下2階に到着し、シーフの男を先頭に足場を登る。
トンネル入口に到着し、装備の最終確認をする。
俺が出発の合図をすると、先頭を拓哉と美鈴が手を繋いで歩き出す。
シーフの男が慌てて、先頭に行こうとするのを俺が止める。
「大丈夫なんですか?」シーフの男が聞いてくる。
俺は「心配いらない、まあ、見てろ」そう言うと、シーフの男は、俺の横に並んで歩き始める。
拓哉の前に光の玉が現れる。
全部で3つ。
横一列に並ぶ。
拓哉が歩くと、光の玉も前に進む。
拓哉と一定の距離を保ちながら。
途中でレイスが現れたが、光の玉の近くに来ると、光の粒子になって消滅する。
そして、魔石が残る。
先日、神官達が倒したから、レイスの数も少ない。
問題もなく、スムーズに進み、一番奥にある大きいな扉の前にたどり着く。
俺が休憩を指示しようとした時、無神経な拓哉が扉を勝手に開けてしまう。
そして2人で手を繋いだまま、中に入って行く。
勝手に開けるなよ!
こっちにも、心の準備があるんだ!
しかし、2人はどんどん中に進んで行く。
俺とシーフの男が慌てて後を追う。
他のメンバーも俺の後に続く。
拓哉達が歩いて行くと、大きな魔法陣が現れた。
魔法陣からローブを被り、骸骨の顔をした魔物がゆっくりと出てくる。
誰かか叫んだ。
「リッチだ!」
すると、何か白くて小さい物が、凄いスピードで走り出し、魔法陣に突進する。
頭の角が魔法陣に触れた。
すると、魔法陣がバラバラに砕け散った。
しかし、魔法陣が砕けた時には、既にリッチは完全に召喚されてしまった。
リッチが手に持った杖を振るい魔法を放つ。
しかし、見えない壁に魔法が当たり、魔法は拡散して消滅した。
多分、カーバンクルが結界を張ったんだ。
俺が、拓哉達を見る。
美鈴の足元でフェンリルが、寝転び毛繕いをしていた。
美鈴が危険だと判断したら、相手が誰であろうとフェンリルは立ち向かって行くはずだ。
危険は無いのか?
フェンリルは、まったく危険を感じていない様だった。
リッチに視線を戻すと、リッチが右に行ったり、後ろに下がったり、変な動きをしている。
何だ?あれは?
「拓哉!何が起きている?」俺が聞くと、「鬼ごっこ…みたいな?」と拓哉が答える。
「遊んでる場合じゃない!早く始末させろ!」俺が叫ぶ。
すると、拓哉が「タッチ!」と言うと、リッチは光の粒子になって消滅した。
床には、赤く大きいな魔石と、宝箱が現れた。
拓哉達が宝箱に近づく。
シーフの男が「罠があるかも知れない、勝手に触るな!」と叫ぶ。
すると、拓哉は、「罠は無いから大丈夫です!」と言うと、隣にいる美鈴に「宝箱を開けてみる?」と聞いている。
すると美鈴は「良いの?」と言い。
拓哉は「僕は何個も開けてるから、今度は美鈴さんの番だよ!」
「わかった!」と言い、宝箱を開ける。
美鈴が宝箱の中に手を入れて、中身をゆっくりと取り出す。
中身は魔法の杖だった。
そして宝箱は光の粒子になって消滅した。




